グランドメゾン presents 「ハレの日レストラン」【第35回】

究極の薄衣が生む口福。博多駅南の隠れ家でとびきりの天ぷらを!

公開日

最終更新日

ライター葉山巧

カメラマン平川雄一朗

HITOTSUKI魚

博多駅南

油HITOTSUKI

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天ぷら専門店「油HITOTSUKI」は、2019年、博多駅南の静かな一画で看板を上げました。人目を偲ぶその佇まいに、店主の決意を汲んだ人も多いでしょう──「わざわざ来られたお客様を、決して失望させません」と。
事実、その予感はすぐに口福へと変わります。そう感じるほど、ここの天ぷらには初めて体験する輝きが満ちていたのです。博多駅からタクシーで約10分。感銘に満ちた時間は、13坪の小さな店で幕を開けます。

HITOTSUKI店内

L字のカウンターを据えた店内は、ナチュラルで清楚な雰囲気。席につくと、ネクタイ姿の店主・仲谷浩明さんと奥様がにこやかに迎えてくれました。東京の有名天ぷら店で22年間腕を磨いた職人は、2011年に転勤で訪れた福岡で人生が変わったと言います。
「この地で出会った食材がどれも素晴らしく、“これなら自分の表現したかった天ぷらができる”と嬉しくなりました」。その思いが高じ、独立開業した店が「油HITOTSUKI」。天ぷら店には珍しいアルファベットの店名は、夫妻の名前を組み合わせて付けたそうです。

HITOTSUKI吸い物
HITOTSUKI刺身

メニューは14,300円のおまかせコース一本で、最初は軽めの料理が2品出されました。この日はアサリとハマグリで取った出汁に芽キャベツを浮かべた吸い物と、ハガツオ+スナップエンドウの生姜酢味噌和え。これから始まる計14品の天ぷらを前に、しっかり胃を温める気の利いた小品です。

HITOTSUKI海老
HITOTSUKIアジ

「今を揚げる」をテーマにした仲谷さんの天ぷらは、旨味濃厚な車海老から始まりました。頭と身を別々に出すので、熱々のまま食感の違いが楽しめます。毎朝柳橋連合市場で仕入れるという鮮魚は、これを含めて5種類を提供。続く大分産のアジは青魚の臭みがなく、丁寧な下ごしらえがうかがえました。

そして、驚かされたのがパリッと薄く揚がった衣の存在感。口にした瞬間シュワッと消えるほど軽いのに、豊かな美味がフワリと広がるのです。それはまるで、みずみずしい素材を包む優雅なオーラのよう。そう、これが仲谷さんが究め続ける天ぷらの理想形なのです。

HITOTSUKI店主

「天ぷらは“重い料理”と思われがちですが、そのイメージを払拭していきたいですね」と仲谷さんが微笑みます。どこまでも軽やかさを求め、過去に試した手法は数知れず。その成果の一つが、粒の細かい無農薬・無漂白の八女産小麦粉に、卵と水を絶妙な比率で合わせたこだわりの衣です。もちろん、空気をたっぷり含ませる攪拌や、衣の内側に素材の旨味を余さず吸着させる技術も欠かせません。「これでもまだまだ未完成。粉の配合次第でもっと上を目指せるはずです」と、45歳の匠は飽くなき情熱を語ります。「それに、これほど毎日ワクワクできる奥深い料理はありませんしね」

HITOTSUKI口直し
HITOTSUKI大根

「お口直しにどうぞ」と出された一品も印象的です。ご飯の上に半熟で揚げた黄身とウニを乗せ、全部かき混ぜていただきました。これは酒のツマミとしても秀逸!
またユニークさなら、紅芯大根も負けていません。低温でじっくり揚げて→蒸らしてを3回繰り返し、天ぷらのタネとしては珍しい大根から無類のうまさを引き出していました。ねっとりとした食感や、甘さとほろ苦さが絡み合う風味も「最高」の一語に尽きます。

HITOTSUKIハタ
HITOTSUKIハタ

鹿児島産のハタも馴染みのない素材ですが、これまたふっくらと上質な仕上がり。こうして挟まれる意外なタネに、天ぷらの可能性や自由さを感じ取る人も多いでしょう。
いろは島の牡蠣は、なんと寿司屋のように手渡しで。これも天ぷら屋では初体験です。「いつも3品ほどを手渡しします」と仲谷さん。「箸じゃなく、手で食べることで微妙に変化する味覚をお楽しみ下さい」

HITOTSUKIにんじん
HITOTSUKI天丼

そして、素材の中でもとくに野菜を愛する仲谷さんの、自慢の一品がこのニンジンです。これは五島の農家が作る、限りなく原種に近い希少品。口に運ぶと、ニンジンの概念を覆す香りと甘みに圧倒されました。「天ぷらでは脇役に見られがちな野菜ですが、僕が揚げることで高級食材に近い驚きや感動を提供できたらと思います。それが生産者さんの努力に報いる、僕なりの恩返しになれば良いな」
そんな真摯な言葉に頷きながら、シメの天丼を気持ちよく完食(天茶も選べます)。切れの良い技術で揚げた、胃もたれとは無縁の薄衣。それゆえ直球で伝わる素材のヴィヴィッドな旨味。天ぷらの真髄を突き詰めて、たどり着く正解の一つが「油HITOTSUKI」かもしれない──快い浮遊感の中で、そんな余韻にひたるのでした。

この記事は積水ハウス グランドメゾンの提供でお届けしました。

店舗名

油HITOTSUKI(店舗写真

ジャンル

  • 天ぷら

住所

福岡市博多区博多駅南4-12-30-1F

電話番号

092-409-5001予約制

営業時間

17:00〜入店20:00

定休日

不定

席数

  • カウンター8席

個室

なし

メニュー

おまかせコース14,300円

喫煙について

禁煙
  • ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
  • ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
  • ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
  • ※OSはオーダーストップの略です。
  • ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

記事に関する諸注意

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