福岡でおいしいスペイン料理が楽しめる【3】
日本人好みのスペイン料理がズラリ! 渡辺通の人気タベルナ
イタリアンやフレンチに比べ、数は決して多くないスペイン料理店。それでも日本人の味覚と相性の良い美味しさで、多くのファンを生み出しています。そんな魅惑のジャンルを支える次世代の主力が、スペイン修業経験を持つオーナーシェフ・伊藤貴光さんが2017年に構えた「Aire」です。
Bivi福岡のある「渡辺通3丁目」の信号から春吉方面に折れ、小路を歩くこと約70m。風に揺れるスペイン国旗が見えた途端、胃袋も臨戦体制に入りました。カテゴリーで言えば、バルとレストランの中間にあたるタベルナ。30〜40代の会社員を中心に人気を集める店です。
店内は情熱の国をイメージした赤と、炭の黒で統一。器も赤と黒の2種類が揃っていました。スペインの小物やピカソの絵も飾られ、どこか現地を彷彿とさせる空気を感じさせます。「店名も“空気”という意味なんです」と笑顔を向けるのは伊藤さん。「今は現地に行きづらい状況ですが、少しでもスペイン旅行気分を楽しんでもらえたらなって」。
山口県出身の伊藤さんは調理師学校を卒後後、隈研吾氏設計のスペインレストラン「Sol Poniente」(山口県山陽小野田市)に職を得ます。24歳でスーシェフを拝命したものの、さらなる成長を求めスペインの一つ星店「Alameda」へ。現地の食文化を吸収して帰国すると、縁あって移住した福岡でキャリアを重ね、2017年に独立を果たしました。
目指すのは「古典の技法を踏まえつつ、日本人に美味しいと思ってもらえる料理」。先人への敬意と柔軟な革新を込めた品々は、時折訪れるスペイン語圏の客たちにも大好評だそうです。
席に着くと旬のお通しが運ばれました。5種類から好みのものを1つ選ぶシステムで、この日は「ホタテと白菜のレモンマリネ」「エビと卵のタルタル」「ムルシア風サラダ」など。これだけでも十分気の利いた前菜ですが、わざわざお通しのために仕込むところに店の気概を感じます。
メニューに書かれた「オーナーイチ推し」が気になって、まず頼んだのは「エビのピンチョス」(572円)。予想よりも小ポーションでしたが、口に入れると色とりどりの旨味が爆散! とても豊かで複雑で、「推し」も納得の力強い風味に感激させられました。
「僕が住んでいたスペインの町の名物ですよ」と伊藤さん。何種類もの野菜やベーコンで調えた3種のソースに、ソテーした海老を合わせるという実はかなり情報量の多い料理です。「素材に手を加えすぎない“引き算”がスパニッシュの良さですが、それは入念な準備や技術の裏付けあってこそ。そういう部分もお客様に伝えしていきたいですね」。
バスク地方の郷土料理「ピルピル」(1,078円)も鮮烈な印象の一皿でした。一見するとチーズフォンデュですが、食べると淡い旨味が広がって、またもや味のギャップに驚愕! タラの骨やアラを煮詰めて取ったジュに、タラの身とオリーブオイルを加えて炊いた濃厚シチューです。オイルの乳化具合とタラの身の水分量をコントロールすることで、乳製品を使わず上質な舌触りを生んでいます。
「ぜひパンと一緒に」の勧めに従い、竹炭と香草を練り込んだ自家製パンを浸すと、香草の快い刺激が華やかなアクセントに。「パンありきの料理なので、パンもこだわって日替わりで焼いています」。なんだか無限に食べていられそうな滋味。隠れファンが多いというのも納得です。
パエリアの原点が味わえると聞いて、6種類あるメニューから「パエジャ バレンシアーナ」(1人前1,870円、写真は2人前)を選びました。周囲にオレンジを並べた様はヒマワリのようで、SNSにもこの鮮やかな画像が幾度となく上がったことでしょう。
具材はじっくりソテーしたウサギと鶏肉、そして香味野菜。パエリアというと魚介系を連想しますが、発祥はバレンシア州で生まれたこのスタイルだそうです。「本当はカタツムリも入るのですが、お客様の反応を見て外しました(笑)」。肉類の旨味が染みた米に加え、生ハムや豚足などで取った出汁も濃厚で、食べれば不思議と活力が湧く一品でした。
その活力は、もしかすると料理に賭ける「Aire」の情熱が僕らに伝播するからかもしれません。現地の食文化の素晴らしさを伝えたいと、日々スタッフとともに味を模索する伊藤さん。そんな職人仕事を支える「いつか日本×スペイン交流の架け橋になれたら」というポジティブな想いが、このタベルナを今日も一歩ずつ前進させるのです。
《炭焼きスペイン料理 Aire/アイレ》
福岡市中央区渡辺通3-6-24WING天神南1F
092-519-3193
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店舗名
炭焼きスペイン料理 Aire(アイレ)(店舗写真)
ジャンル
- 各国料理
住所
福岡市中央区渡辺通3-6-24WING天神南1F
電話番号
営業時間
17:00~OS23:00
定休日
第1火曜
席数
- カウンター4席
- テーブル16席
個室
なし
メニュー
エビのピンチョス572円、ピルピル1,078円、パエジャ バレンシアーナ1,870円(1人前)、スペイン産イベリコ豚生ハム1,078円、スペイン産ガリシア豚(炭焼き)935円、アヒージョ各種968円、タパス盛り合わせ748円~(1人前)
喫煙について
- ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
- ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
- ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
- ※OSはオーダーストップの略です。
- ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
- ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
- ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。
記事に関する諸注意
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