福岡うつわ屋さん巡り【2】

ちょっと背伸びすれば手に入れられる、とっておきの器

公開日

最終更新日

ライター森脇美奈

カメラマン森脇美奈

南庄

うつわ屋 フランジパニ

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料理と切っても切れない関係の器。お気に入りの器があるだけで、料理をすることや誰かをもてなすことがより一層楽しくなるものです。作家ものや民芸、アンティーク、世界各国の器まで、収納場所に困るほど器を集めてしまうライターの森脇美奈さんが、こだわりのセレクトが光るお店を紹介していきます。

今回は「うつわ屋フランジパニ」におじゃましてきました。福岡に住む器好きの方なら知らない人はいないほどの人気店。私も姪浜駅の近くにあった頃から何度も足を運んでいます。15年以上前になりますが、手しごとの器に興味を持ち始めていた私が、その魅力にどっぷりとはまったのは「フランジパニ」がきっかけ。温かみのある店内にかわいい器が並ぶ様子を今でも覚えています。現在は室見団地近く、福岡市南庄の住宅街の一画にお店を構えています。

場所は変わっても「フランジパニ」がもつ暖かな空気は変わりません。ご自宅兼店舗ということもあり、暮らしの息遣いが聞こえてきそうな雰囲気の店内に、数々の器が並んでいます。

お店を営むのは地蔵(ちくら)俊一郎さん・朋子さん夫妻。今回は俊一郎さんにお話をうかがいました。佐賀県唐津市出身に生まれ、幼いころから唐津焼の作家作品が日常だったといいう朋子さん。20代半ばの頃から1つ5,000円ほどのマグカップを使う朋子さんを見て、俊一郎さんは驚いたそうです。「妻と暮らすうちに手しごとの器が心にもたらす癒しを感じるようになって。いい器を使うと料理やコーヒーがよりおいしく感じられるんですよね」と器に魅せられていきます。結婚したお2人は、引き出物に器を選ぼうとしたものの、ギャラリーのような雰囲気のお店に敷居の高さを感じたそう。そこで、雑貨店の延長のような気軽に入れる器のお店があればと2004年に「うつわ屋 フランジパニ」を開きました。

オープン当初は小石原や天草など福岡をはじめ九州で作陶する5名の作家・窯元から取り扱いをスタート。全国各地の陶器市に足を運びさまざまな作家に出会ううちに「福岡の人たちに全国の作家を紹介したい」という思いに変わり、現在は全国各地から約50作家の作品を紹介しています。

セレクトの基準はシンプルで飽きずにずっと使えるもの、そして高価すぎないもの。器に興味を持ち始めた若い世代もちょっと背伸びをしたら購入できる価格帯の作品を選んでいるそうです。「作品のよさはもちろんですが、ご本人に会って人柄も大好きになった人のものだけを取り扱っています」と地蔵さん。最初は一般のお客として作家さんと話して器を購入し、使い心地をしばらく試したのちに取り扱いの相談をするのだそうです。

そうして選ばれた約50作家の作品。お2人の思い入れがあるものばかりですが、「作家名にとらわれることなく、いいと思ったものを手に取ってもらいたい」という思いから、陳列棚にもプライスシールにも、作家名が書かれていません。すぐに目に入る情報がないからこそ、新しい作品との出会いを純粋に楽しめそうですね。もちろん尋ねれば、さまざまなエピソードとともに作家名を教えてもらえます。

また水玉や鳥、植物などのモチーフが描かれたかわいらしい印象の器、そしてシンプルな造形の中に素材の表情を感じる渋めの器、その両方を扱っているのも「フランジパニ」の特徴です。「かわいいものから入った方にも、渋めの良さを伝えられるようにどちらも選んでいます。もともと渋めがお好きでも、年を重ねるうちにかわいいものを抵抗なく使えるようになったという方もいらっしゃいますよ」と地蔵さん。そういった話を聞くと、これから自分の好みがどう変わっていくかも楽しみになります。

ここで私が気になった器をご紹介。この3点は、つい先日までこちらで作品展を行っていた宇田康介さんの作品。滋賀県甲賀市の信楽に窯を構え、妻・令奈さんとともに器を作っている方です。手前から「粉引 輪花 六寸皿」(3,080円)、「グラタン皿セット」(3,850円)、「湯のみ」(各1,100円)。粉引きや飴釉、鉄釉など信楽の伝統を用いながら、モダンな印象の器は現代の食卓にフィットするものばかり。優しい手触りも心地よく、普段使いに活躍しそうです。

次に紹介するのは、美術大学を卒業後、栃木県の益子に移住して陶芸を行っている若き作家・猪原朱乃さんの「オーバル皿」(各3,630円)、「スープマグ」(3,080円)。マットな質感とアンティークを思わせる形に惹かれました。オーバル皿のフォルムやリムの幅、そしてスープマグの持ち手などありそうでなかなか出会えない形ではないでしょうか。オーバル皿は、料理でもお菓子でも受け入れてくれそうでさまざまな使い方が思い浮かびます。

3月16日(木)~21日(火祝)に個展を行う馬野真吾さんの作品も一足早く見せてもらいました。益子で技術を磨いたのちに徳島に移り住んで作陶をしている作家さんです。さまざまな植物の灰を使った釉薬を使って作られていて、自然の力を感じる表情が特徴です。艶のある質感が料理をおいしく引き立ててくれそうですね。個展には「輪花 四寸皿」(2,200円)、「リム 五・五寸皿」(3,300円)などが並ぶそうです。

また「フランジパニ」といえば、ホームページから始まり、現在はInstagramで発信する「我が家の食卓」という、地蔵さん家の食卓の様子を紹介するコンテンツが人気です。Instagramのフォロワーは今や10万人以上! おいしそうな料理、そして素敵な器。コーディネートや献立の参考に、見ているだけでも楽しいですよ。

「器を買うのは楽しく気分も上がりますが、そこをピークにせず、使っているうちにふと『これを買ってよかった』と思ってもらえるとうれしいですね」と地蔵さん。私の家にも10年以上前に購入したものからつい最近手に入れたものまで「フランジパニ」からやって来た器がいくつもあります。使うたびにしみじみと良さを感じ、大切にしたくなるものばかりです。

店舗名

うつわ屋 フランジパニ(店舗写真

ジャンル

  • 物販店

住所

福岡県福岡市早良区南庄6丁目10−25

電話番号

092-821-1218

営業時間

10:00~19:00

定休日

水曜

  • ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
  • ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
  • ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
  • ※OSはオーダーストップの略です。
  • ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

記事に関する諸注意

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