「福岡のラーメンは今、おもしろい」を印象付ける一店に「駒や」という豚骨ラーメン店があります。ラーメン歴ゼロであった店主の倉田承司さんが、幼少時に親しんだ昭和の豚骨ラーメンを独自の解釈、製法で復刻。2019年の開業より倉田さんが掲げている“シャバ系”“くさうま”という言葉は、愛すべき古の豚骨ラーメンの象徴として浸透しつつあります。
2021年には馬出に次ぐ「駒や 箱崎店」(通称:ハココマ)、2022年には「うどん伍零八(こまや)」を開業し、同年、東京「大つけ麺博」に出店、年末には「地域へ恩返しを」と、ふるまいラーメンも開催するなど昨今動きが活発な「駒や」。
直近では、「ハココマにて『中華そば いけ田』が、3月1日に営業開始」のニュースが飛び込んできました。合わせてハココマ自体の営業スタイルも変わったのだとか。
豚骨ラーメン、うどんと来て、次は中華そば。「駒や」は一体どこまでいくのか。昼のみ営業する「中華そば いけ田」、そして夜の「ハココマ」も改めて体感してきました。
こちらが3月1日にオープンした「中華そば いけ田」です。「駒や」の中華そば部門として、10:00〜14:00のみハココマで営業しています。
メニューを見ると、麺は潔い中華そば一本。僕は「中華そば」(900円)と、気になる「節玉」(200円)を注文しました。後ほど紹介します。
作り手と出てくるラーメンが違う。という以外は、L字カウンター7席のいつものハココマのままです。仕込みの合間に店長の池田昌浩さんに話を聞きました。
池田さんは複数のラーメン店で腕を磨いてきたキャリアをもち、かつては客としても「駒や」の味に惚れ込んだ一人。「大つけ麺博」時には東京まで駆けつけ「駒や」のブースを手伝ったりなど倉田さんと親交を深めてきました。
「自分のラーメン店を出すことを目標にやってきましたが、資金面などハードルが高く、なかなか踏み出せずにいました。そんな時、ハココマで先にチャレンジしていた『うどん箱太郎』が卒業し路面店を開業したと聞き、入れ替わる形でやらせてくださいと倉田さんにお願いしたんです。『まずはウチで経験を積んでみるのもいいかもね』と倉田さんは快く承諾してくれました」と池田さん。
倉田さんは意欲のある若手に協力を惜しまない人です。ただし「あくまで駒やブランドの中華そば部門として、しっかりとしたものを出してほしい」との思いがありました。現在の中華そばは、倉田さんが監修しながら試行錯誤を重ね、池田さんの中華そばへのこだわりをより輝かせた一杯となっています。
この“鶏、水、醤油”の中華そば。「博多一番どり」「さつま純然鶏」など、銘柄鶏を使ってダシを取り、黄金色の鶏油の旨味も生かしています。具のナルトもいい感じ。ということもありますが、僕的にハッとなったポイントは大きく2つあります。
第一にスープを取る手法が「掃湯(サオタン)」であること。掃湯とは、まずは白濁させた白湯スープを作った後に、挽き肉などを加えてもう一度炊き、肉に濁りを吸わせ清湯にすること。これにより透明感のある軽やかなスープながら、鶏ガラ、鶏肉の旨味も凝縮させることができます。
そしてもう一点が、ラーメンダレに九州の醤油でなく関東の「ヒゲタ醤油」の本膳(濃口)を採用していることです。一口飲んだ時にわかりますが、いい意味で馴染みのない味がします。豚肩ロースチャーシューの煮汁も加わった奥深いコクがいいですね。
また、気になる「節玉」(200円)ですが、簡単にいうと魚粉がのった替え玉です。この“魚粉”の部分が良くできていて、サバ節など複数の乾物、ガーリックパウダー、一味などを池田さんがブレンドしたもの。味の調整をする付属のラーメンダレにはホタテの旨味も詰めています。
さらに、麺について付け加えると、実は替え玉で出てくる麺は最初に入っているものとは別ものです。茹で前を比べてみると一目瞭然ですが、
右が最初に入っている「製麺屋 慶史」の中細麺、左が替え玉用「宝フーズ」の平麺です。
ラーメンの麺を替え玉用とで、別々の製麺所に発注するのは、麺屋さんへの体裁もあり実はとても難しいことなんです。普通は全部ウチの麺を使って欲しいと思いますからね。しかし、双方に了承を得てこれをやってのけてしまうのが実に「駒や」ブランドらしいとも思います。
せっかくなので夜の「ハココマ」にも改めて行ってきました。
「駒や」の代名詞でもある“くさうまなシャバトン”が食べられるのは変わりませんが、
営業時間をより深い時間に、21:00から翌朝8:00に変更しました。10:00には先の「中華そば いけ田」がオープンするわけですから、2時間の間に入れ替わるということですね。
「駒や」の店主・倉田承司さん(右)と「ハココマ」をまかされている田井公平さん(左)。長くこの2人を見てきましたが、突き抜けた個性を持つ同士が上手い具合に噛み合っているんですよね。厨房でもあうんの呼吸の名コンビです。
「ハココマはこれまで深夜3時くらいまでの営業だったのですが、箱崎界隈の人の流れをみて、それから朝までの時間にも需要があることは感じていました。そこで思い切って朝8:00までに延長したら予想を上回る反響なんです。了承してくれた倉田さんに感謝しています」と田井さんが話すと、
「ハココマは田井くんが顔だから、好きなようにやっていいんですよ。ウマコマ(馬出の本店)とハココマ、基本は同じラーメンですが、職人が違うし、時間帯によっても味が異なるのは当たり前。それも魅力として楽しんでほしいですね。昼間に始めた『中華そば いけ田』も含めて全力サポートします」と倉田さんは答えます。
“くさい”“シャバい”を「愛すべき昭和の豚骨ラーメン」として昇華した「駒や」。そして同じく古き良きを追求して生まれた「うどん伍零八(こまや)」、さらには最新「中華そば いけ田」と、ジャンルを問わず業界に新風を吹き込む倉田さん。福岡市東区を起点とした麺ムーブメントから目が離せません。
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店舗名
中華そば いけ田/駒や 箱崎店(店舗写真)
ジャンル
- ラーメン
住所
福岡市東区箱崎1-27-8 是永ビル 1階
電話番号
営業時間
10:00〜14:00(中華そば いけ田)/21:00〜翌朝8:00(駒や 箱崎店)
定休日
不定休
席数
- カウンター7席
個室
なし
メニュー
【中華そば いけ田】中華そば(900円)、節玉(200円)、チャーシュー丼(300円)
【駒や 箱崎店】ラーメン(750円)、ワンタンメン(900円)、餃子(500円)、焼飯(700円)
喫煙について
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- ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
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