大名の地上18階で、モダンウエスタン料理が紡ぐ珠玉の時間

６月に待望のオープンを果たしたザ・リッツ・カールトン福岡。この著名なラグジュアリーホテルは、これまで福岡になかった幾つかのサプライズをもたらしています。その一つが地上18階にある「Viridis」。宿泊ゲストはもちろん、地元のグルマンにも特別な時間を提供するレストランです。

まず注目すべきは、やはりこのロケーションが紡ぐ無類の浮遊感でしょう。福岡では珍しい都心の高層レストランとあって、窓外のロマンティックな眺めは実に壮麗。誰もがうっとりと高揚する夜景は、まさしく極上の“食前酒”です。

モダンで温もりを帯びた内装は、17～19世紀の北欧の邸宅にあった温室〈オランジュリー〉がモチーフだとか。福岡の四季を金属で描いたアート作品や、オブジェのように壁面を飾る小石原焼の器が、そこに凛とした郷土色を添えています。また、12名まで利用できる個室も１部屋ありました（室料ランチ33,000円、ディナー55,000円）。

さて、この甘美な空間を取りまとめるのは総料理長の早坂心吾さん。日本フレンチ界の雄・三國清三シェフの愛弟子にして、これまで複数のホテルで実績を積んできた41歳のベテランです。サスティナブルな食材を生かすなど、地域・環境に配慮した料理をテーマに据え、そのジャンルを「モダンウエスタン料理」と定義。この店にも「Farm-to-Sky」というコンセプトを冠し、九州の生産現場と店を直接繋ぐ地産地消のレストランを目指しているそうです。
「九州産食材のクオリティには日々驚かされます。各県の生産者さんとお付き合いできるのも楽しみですね」と、精悍な表情に笑みを浮かべる早坂さん。「今後の目標は、九州産食材の素晴らしさをここから国内外へ発信すること。今はその責任感で身が引き締まる思いです」。僕らが信頼を置くに足る、真の職人らしい謙虚な言葉が印象的でした。

そんな“九州リスペクト”を込めたメニューは9,000円（全４皿）と13,000円の２種類で、今日は13,000円コースを選びました。料理はトマトコンソメ、バジルスポンジのアミューズからスタート。それに続く冷前菜は、アオリイカ、ズッキーニ、オカワカメ、キャビアを合わせ、仕上げに佐賀の農園のレモンを搾った一皿です。
厳選素材が引き立て合う、味と食感のコントラストに思わず感嘆。様々な風味を巧みにぶつけあい、主役のイカの豊かな甘みを盛りあげるセンスが絶妙でした。

次の温前菜は、糸島産の「つまんでご卵」を半熟で提供。九州各県の卵を10種以上も試食した早坂さんお気に入りのブランド卵です。トロリとしたその黄身を包むのは、熊本産の白カビチーズ「クマンベール」をクリームソースに投じ、エスプーマにしたもの。これにトリュフが加わって、濃厚風味の三重奏が美味しく味蕾に響きます。卵・トリュフ・チーズはフレンチ定番の組み合わせですが、その九州ヴァージョンといった趣ですね。

この日の魚料理は長崎で捕れたアカハタでした。長浜市場から届いた後、３～４日寝かせて脂を回し、旨味の強い皮ごと一緒に焼きあげます。カリカリの皮目のクリスピー感と、モチッとした身のコラボがたまりません。さらに八女茶の出汁で煮含めた福岡産の長茄子や、佐賀産の海苔を練り込んだチップスの存在感も抜群。白ワインとクリーム＆バターのソースにも、八女茶がほんのり香っていました。

お待ちかねのメインには、これまた早坂さんが惚れ込んだ「はかた極味鴨」を使用。八女の大自然で育った食材で、早坂さんが「フランス産鴨や高級黒毛和牛にも劣りません」と言い切るハイクラスな食材です。
その言葉も食べて納得。「これほど旨味が濃く、ジューシーな鴨が地元にあったのか」と妙に誇らしくなる逸品でした。数種のスパイスと能古島の蜂蜜で調えた、滋味なソースとの相性も文句なし！

この後、エキゾチックフルーツ、モヒートのソルベのデザートでコースは終了。味はもちろん、胃もたれを感じさせない快さも好印象です。ホテル特有の丁寧なサービスも気持ちよく、事前の期待を超えて記憶に残る一夜となりました。優美なムードもプライスレスで、すでに数組のプロポーズが成就したそうですよ。

この記事は積水ハウス グランドメゾンの提供でお届けしました。