イタリアンの枠を超えた創作料理が評判。鹿児島から福岡に移転したリストランテ

鹿児島グルメに詳しい方なら、きっと「NOCE」のこともご存知でしょう。イタリアンベースの創作料理を振る舞うリストランテですが、2023年12月より拠点を福岡に変更。評判の店でしたから、この移転を嘆く鹿児島のグルマンは少なくないと思います。

元々は、山口将大さんと里美さんご夫婦が2010年に開いた店。コロナ禍や店舗の老朽化を機に、さらなる高みを目指して移転を決めたそうです。
その舞台に選んだ中央区平尾は、鹿児島時代と同様、都心から少し離れたロケーション。西鉄平尾駅から歩いてみると、10分ちょっとで到着しました。

店内は清潔な白一色で、見た目以上に広がりや非日常を感じます。なのに少しも堅苦しさがなく、むしろ妙に落ち着く温かさが好印象。22,000円コースのみというアッパー店ながら、どこか“山口家の晩餐”に招かれた気分になるのです。

そう、スタッフはすべて山口ファミリー。シェフは将大さんですが、実はサービス担当の里美さんはご主人よりもキャリアの長いイタリアンシェフで、共に仕込みやメニュー考案を行う最強のパートナーです。また今春から大学に進学し、両親と同じ道を志す娘の胡桃さんも厨房をこまめにサポート。「NOCE（＝胡桃）」の快適さの源は、こんな家族の絆にありそうですね。

料理の方も意欲的で、どの品にもハッとする仕掛けを配置。東京のミシュラン二つ星店「プリズマ」の前身である「ペルゴラ」で修業した将大さんが、16品以上に及ぶ料理で独自の世界観を披露します。

最初のインパクトは、フィンガーフード３皿に続くピザ（写真は２人前）で訪れました。発酵シャンピニオンとマカロニグラタンの上に、どっさり乗ったイタリア産黒トリュフに一瞬で心を掴まれます。うーん、なんとリッチなかぐわしさ！

続く前菜３品も、小粋な目配せが効いていました。レモンとオリーブオイルで和えた赤貝＆キュウリは爽やかな香味が、天然ヒラスは南米発祥のチミチュリソースを合わせた風味が印象的です。
なかでも秀逸だったのが左下の一品。半球状のスダチを手に取って、上に乗せたヤリイカを食べたらすぐにスダチをかじり、爽やかな果汁でイカを流し込むのです。テキーラとライムを連想させる、かなり技アリの面白さでした。

口直しのシーザー風レタスも指でつかんでパクリ。「気にせずに、チーズをテーブルにこぼしながら召しあがれ」と里美さんがニッコリ。この気の置けなさも「NOCE」流のようです。
それが済むと、意外にも早めに肉料理が登場。「鹿児島時代から、僕らは県内最高の肉を仕入れてきた自負があります。せっかくの食材を満腹になる前に楽しんでほしくて」と、今度は将大さんが微笑みました。その言葉に嘘はなく、鹿児島産のヒレ肉は濃厚かつ深い旨味の塊。これには口うるさい肉マニアも納得でしょう。

その至福を上書きしたのが自家製パスタ。手打ちのタリオリーニにはこれまた黒トリュフがたっぷりで、この食材への強いこだわりを感じます。「以前も“黒トリュフを食べるならNOCEだね”と言って下さる方が多くて」と将大さん。「福岡でもこのポリシーを貫くつもりです」と、トリュフ好きを喜ばせる一言をくれました。

九州産の厳選食材を柱にし、アイデアや工夫を凝らしたコースは素直に「楽しかった！」と呼べる内容でした。品数豊富なわりに、それぞれが小ポーションなので胃の負担も軽く感じます。
「食材の魅力を余さず伝えるには、やはりこれだけのボリュームが必要なんですよね。そのぶん準備も大変ですが、僕には家族という頼れる仲間がついていますから」。この将大さんの一言で、食後の温もりが格段に増すようでした。「NOCE」は、そんな心からほっこりできる自然体のリストランテです。

この記事は積水ハウス グランドメゾンの提供でお届けしました。