私、この店、大好きなんです【18】
自らの煩悩と闘い、ひたすら「締め」を目指す
公開日
最終更新日
ライター長谷川和芳
カメラマン岡上啓太郎

「飲んだ後の締めは、やっぱラーメンよね」なんて時代が、ワタクシにもあった。しかし、30代終盤になると、段々とそのラーメンがキツくなり、五十路に足を踏み入れると「締め」という概念自体が消えてしまった。
そんなワタクシに「締め」の悦楽を思い出させてくれたのが、この店。飲んだ後でも蕎麦なら食える! 手打ちの麺はツルツルと喉を通っていく。そして、翌朝も胃もたれしない。クオリティ・オブ・ライフが急上昇——などと浮かれていたのだが、この店は日本酒もウリなのだ。しかも、肴もうまい。ついつい日本酒が進んで気持ち良くなるのはいいのだけれど、そこは五十路、飲みすぎると、胃に蕎麦が入るスペースがなくなってしまう。

そんな経験を幾度か繰り返した挙句、ついには「締め」から、その日の注文を逆算するという習慣を身に付けた。店に入ると、まずは瓶ビール、サッポロラガーを注文。1杯グビッと飲み干したら、旬の食材を使った料理が並ぶ黒板を一瞥。季節替わりの蕎麦が目に留まる。あぁ、心惹かれる。けど、ちょっと高いんだよね。その後、手元のメニューに視線を落とし、蕎麦のページへ。しばし季節の蕎麦と定番の蕎麦を交互に見て、締めの蕎麦を確定する。そして、肴のセレクトに移るわけだ。「肴盛り」「とちお揚げ」「かも団子」「小柱のかき揚げ」などなど、どれも捨て難い逸品なのだけど、その日の腹の空き具合や締めの蕎麦のボリュームを考慮し、緻密なシミュレーションを繰り返した結果、2品を目安にチョイス。その頃には瓶ビールも残りわずかとなっているので、肴とともに日本酒をオーダーする。2合をぬる燗でよろしく。ようやく、肩から力を抜いて椅子に深々と座り直す。

酒は2合で足りるのか? いや。飲み足りん。しかし、全ては締めのため。お銚子が空になったら、迷わず蕎麦を注文するのだ。飲んだ後は温かい蕎麦を推したい。出汁が心に染みる。蕎麦を一気に啜り、そして「今日も蕎麦が食えた。自分に勝った」とひとりごちる五十路オヤジであった。

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店舗名
手打ちそばと和酒 サケハジメ(店舗写真)
ジャンル
- 居酒屋
- 蕎麦
住所
〒815-0041 福岡県福岡市南区野間2丁目7−13
電話番号
営業時間
12:00~14:00/17:00~22:00(土曜は12:00~22:00)
定休日
日曜
席数
- カウンター6席
- テーブル8席
個室
なし
メニュー
肴盛り980円、鴨南蛮そば1630円、盛りそば880円、天セイロ1,540円、かけそば880円、山口 仙崎 板わさ720円、だし巻玉子770円、天ぷら150円〜、かも団子460円
喫煙について
- ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
- ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
- ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
- ※OSはオーダーストップの略です。
- ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
- ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
- ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。
記事に関する諸注意
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