福岡ラーメン愛が止まらない
福岡のラーメン業界に一石を投じる、全く新しい「創作白湯」

春日市
創作白湯 かなで食堂
上村敏行
1976年鹿児島市生まれ。2002年、福岡でライター業を開始。同年九州ウォーカーでの連載「バリうまっ!九州ラーメン最強列伝」を機にラーメンライターとして活躍。各媒体で数々のラーメンページを担当し、これまで1万杯以上完食。取材したラーメン店は3000軒を超える。ラーメン界の店主たちとも親交が深く、ラーメンウォーカー九州百麺人、久留米とんこつラーメン発祥80周年祭広報、福岡ラーメンショー広報、ソフトバンクホークスラーメン祭はじめ食イベント監修、NEXCO西日本グルメコンテストなど審査員も務めてきた。ラーメンライターとしての活躍はイギリス・ガーディアン紙、ドイツのテレビZDFでも紹介
福岡ラーメン業界の勢いは増すばかり。
昨今もオープンラッシュで沸き、そそられるラーメンニュースが続々と飛び込んできています。今回はそんな最旬麺情報の中から、6月18日にリニューアルオープンした「創作白湯 かなで食堂」(春日市)の話をします。
通称“かなで系”としてラーメンファンの間で親しまれているこの系譜。2011年「濃厚豚骨 かなで食堂」から始まり、鶏醤油「中華そば かなで〜鶏出汁編〜」(2015年〜)、煮干し特化の「中華そば かなで〜煮干編〜」(2022年〜)、豚清湯「中華そばかなで〜豚と節〜」(2024年〜)と1ブランド1店舗展開で人気を博してきました。
そしてネクストが「創作白湯」。
果たしてどのようなラーメンなのか? これがまず気になるでしょうが筆者的には、同店のこれまでの流れと異なり既存店をブランドチェンジしたこと、しかもそれが春日市の創業店でのことであり、なぜ人気絶頂であった豚骨の冠を外す決断をしたのかが非常に興味深い点です。新しいラーメンを体感すると共に店主の松尾龍太郎さんに話を聞きました。

「創作白湯 かなで食堂」の場所は春日市の県道505号沿い。店前に無料駐車場、店内には子連れファミリーに嬉しい小上がりの座敷席も備えています。
まずはメニュー構成と、味の魅力についてからいきましょう。
ちなみに、屋号に掲げている白湯(ぱいたん)は乳化させた白濁スープの総称。相対する言葉が澄んだ清湯(ちんたん)スープです。
新生「かなで食堂」は鶏&豚の肉系白湯スープをベースに「鶏豚白湯」(950円)、「トマト白湯」(1,100円)、「担々麺」(1,000円)の3本柱、プラス季節の限定麺を加えたメニューを用意しています。この日は看板の「特製鶏豚清湯」(1,400円)をオーダーしました。

着丼したラーメンは“かなで系”らしく、ビジュアルがゴージャスですね。分厚く、皮もあえて残した鶏と豚の2種のチャーシューがどっしりと鎮座。黄身がリキッドな味付け煮卵、とろとろに溶ろけるタイプの上質な佐賀海苔が脇を固めています。ブレンダーで乳化させ泡を立てた白濁スープはパッと見「鶏白湯」を連想させますが、それよりもやや茶濁。ズズリと飲んでみると―――なるほどっ、これはうまい! おもしろい!!
濃度、粘度とも高いスープは、豚骨感、鶏感が絶妙のバランスでガツンと効いています。
スープの厚みは従来の濃厚豚骨と共通していますが、そこに鶏がより主張してくるといった味わい。うま味調味料に頼らず、選び抜いた醤油や多彩な乾物で味の奥行き、芳醇な香りを出すのが同店のポリシーであり、この一杯についても「濃いけど上品」。また、キメの細かい泡は飲み口をライトにしてくれる効果もあり、後味もすっきりで食後の罪悪感なし。さらに、これも大きく変わった点ですが、麺を低加水の細ストレートから、切刃14番の中太平打ち麺に変更。替え玉はなくして大盛り対応、麺の硬さの要望にも基本的には応えていません(ヤワメンのみ可能)。力強い自家製麺に泡白湯がよく絡んでおいしいですね。
さて、今回のリニューアルの狙いについて、
「実は、4、5年前から春日店のブランドチェンジの構想を温めていました。これまで“濃厚豚骨”“鶏出汁”“煮干”など明確に1つのジャンルを屋号に掲げ、そこから派生する創作麺も多数リリースしてきたわけですが、こと『豚骨』に関しては文化的に根付き、お客様の『こうであるべき』との思い入れが強いので、作り手として他ジャンルより自由にできないジレンマは長くありました。あえて屋号から豚骨を外して“創作白湯”とすることで解き放たれ、より納得できるラーメンが作れると思ったんです。それでも、創業から支えてくれた濃厚豚骨でしたのでだいぶ悩みましたが、時流を読んだ新たなチャレンジとして舵を切りました」と松尾さんが話してくれました。
系列店舗ごとに異なるラーメンで勝負する松尾さんは、それぞれで用意する限定麺の開発も含めた新味の研究に余念がありません。これまで編み出したラーメンのレシピはなんと100以上。
筆者は開業から松尾さんを見てきましたが、古くて良いものは残し、新しい技術やトレンドも積極的に試してみる柔軟性があり、その見極めに長けている人だと感じています。そして前述したように、無化調で作るラーメンにこそ美学を見出している職人。そこに向かって妥協は一切しません。各店の絶品ラーメンのほか、例えば春日店の卓上に置いてある無料の自家製白生姜。丁寧に塩気を入れ、手切りしたこの生姜にいたるまで、めちゃくちゃうまいんですよね。さりげないことですが、こんなところにも松尾さんのこだわりが光ります。
豚骨の枠を飛び越えた「創作白湯」という屋号にすることで松尾さんのセンスがいかんなく発揮され、個性爆発のラーメンがさらに私たちを楽しませてくれることを確信しました。
春日市にデビューした「創作白湯 かなで食堂」、今後の動向に要注目です。

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店舗名
創作白湯 かなで食堂(店舗写真)
ジャンル
- ラーメン
住所
福岡県春日市須玖南1-182
電話番号
営業時間
11:30〜16:00(LO15:40)/17:00〜21:00(LO20:40)
定休日
火曜
席数
- カウンター5席
- テーブル6席
- 座敷14席
個室
なし
メニュー
鶏豚白湯950円、特製鶏豚白湯1,400円、トマト白湯1,100円、特製トマト白湯1,550円、担々麺1,000円、特製担々麺1,450円、麺大盛り+150円、旨とろチャーシュー丼450円、鉄板餃子550円
喫煙について
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- ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
- ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
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