日本人ならではの世界観を表現した「茶酒」に酔いしれる

「ミクソロジー（Mixsology）」という言葉をご存じだろうか？
英語で混ぜるという意味の「mix」と、学問の分野を表す接尾語「〜ology」を合わせた造語で、酒にフルーツやハーブなどを混ぜあわせたカクテルやその作り方の総称である。
1980年代にロンドンで生まれたといわれ、その後世の中の健康志向の高まりと相まって世界的なムーブメントとなり、日本に上陸。ラディカルなバーテンダーが取り入れるとともに、専門店も登場している。
そんなミクソロジーの技法を使い、日本の伝統的な素材を伝った新しいカクテルを提案しているのが、大名にある「Japanese Salon 雫」の店主・髙橋宏明さん。日本におけるミクソロジーの第一人者である南雲主于三氏に師事して技術を習得し、自家製の「茶酒」をはじめとする独創的なカクテルを提供している。

坪庭につくばいを設えた和風の店内には、およそバーには不釣り合いな化学の実験器具のような機械が置かれている。なんともアンバランスな組合せではあるが、これこそが自家製の茶酒を作るために欠かせない装置であり、髙橋さんが自ら「ラボ」（実験室）と呼ぶ所以でもある。
この「ロータリーエバポレーター」と呼ばれる機械を使って、スピリッツに素材の香り成分だけを移す手法で作る自家製の茶酒は20種類以上。日本茶で唯一GI（地理的表示）認定を受けている「八女伝統本玉露」をはじめ、日本の伝統的な素材に酒を掛け合わせている。

「GI認定八女伝統本玉露”雫”マティーニ」 （1,600円）は、細心の注意を払いながら日本茶の最高峰である本玉露の旨みを最後の一雫まで抽出。アミノ酸の一種であるテアニンの旨みが凝集されている。

フレッシュな南瓜のジュースと抹茶酒を二層に重ねた「南瓜と抹茶の二層カクテル」（1,300円）や、茶碗で提供される「抹茶のエスプレッソマティー ニ」（1,300円）など、茶酒をベースにしたカクテルはまさに無限のバリーションがある。いろいろと試してみたければ、季節の素材や玉露を使ったカクテルコース（3杯3,450円〜）がオススメだ。

西洋で生まれたミクソロジーの概念を、日本人ならではの豊かな感性と繊細な技術で再構築した「茶酒」。
一杯のグラスの中に伝統と革新を混ぜあわせる職人の技に酔いしれたい。