「コロナから学んだこと」〜「百式」店主・上山修さんインタビュー（後編）

新型コロナウイルス感染症への対策として、昨年以来多くの飲食店が営業時間の短縮や休業を余儀なくされています。そんな状況にあって何ができるのか模索する中、「炉端 百式」、「めしや コヤマパーキング」店主の上山修さんはスタッフへの勉強会を積極的に行うことで、次のステップへと進む準備をしています。（前編はこちら）

昨年から4度の緊急事態宣言が出て、営業時間の短縮や酒類提供の禁止などの措置がありましたが、すべて国や県・市の要請に従ってきました。その間、弁当やテイクアウト商品の販売、営業時間の変更、ランチ営業の開始などで対応してきましたが、おかげさまで利益を出していくことができています。
国や行政に対していろいろと批判する声もあるかと思いますが、僕は今回のコロナ禍に関しては誰も悪くないと思うんですよね。こういう状況でもしっかり利益がとれるのが強い店だと思うし、今までやってきたことが間違っていなかったという自信にもなりました。

「百式」を出してからいろいろと出店のお声がけをいただきましたが、同じ業態で多店舗展開することはまったく考えていませんでした。「コヤマパーキング」を出したのも「百式」とまったく違うアプローチの店がやりたかったからです。
以前から従業員には言っていたんですが、うちの店は「全方位型」でありたいと思っているんです。客単価でいうと5,000〜6,000円なんですが、普段2,000〜3,000円の店を利用している若い人たちは少し背伸びができるし、8,000円〜1万円の店に行ってるアッパー層には安くてうまい店と思ってもらえる。サラリーマンもファミリーも気軽に利用できる店づくりをしてきたから、コロナ禍でも影響が少なかったのではないかと思います。

5月に3回目の緊急事態宣言を受けて、ただ店を休むのではなくて何かできることがあるんじゃないかと考えて始めたのがスタッフ向けの勉強会です。僕の知り合いや取り引き先の方に講師をお願いして、もう20回以上開催しました。ジャンルも実に様々で、主なものでは日本酒、ワイン、ウイスキー、リキュール、クラフトビール、コーヒー、魚、蕎麦打ち、スパイスカリー、器、生け花、習字などです。

「クボカリー」の久保さんにスパイスカレーの基本をレクチャーしてもらったり、「赤坂けやき通り むらた」の村田さんに蕎麦の打ち方を教わったり、内容も実践的なものばかりです。
もちろん、そんなに簡単に習得できるものではありませんが、その道のプロに直接話を聞くだけでも大きな刺激になります。

習字や生け花などは料理とは直接関係ありませんが、飲食店の空間を彩るものですよね。僕は居酒屋の評価は料理が7割を占めると思っていますが、ただ美味しいものを出すだけではなく、料理以外のプラスアルファをいかに表現するかが大切な時代になっています。
今すぐ仕事の役に立たなくても、スタッフが次のステップに向かうための好奇心をくすぐるのが狙いです。「好きこそものの上手なれ」という言葉があるように、何か新しいことに対して興味を持つきっかけになればいいですね。

平常時なら講師の方とスケジュールを合わせるだけでも大変だし、スタッフ全員が参加するのもまず不可能です。コロナによる緊急事態だからこそできることで、そういう意味では有効な時間の使い方ができていると思います。

これまでも特に目新しいことをやってきたわけではないし、自分がやりたいことを実行した結果として今があるので、今後もそこはブレずにやっていきたいですね。
こんな時だからこそ学べることも多いので、今考えていることを自分なりに表現していくことが大事だと思っています。