酔っ払いも食いしん坊も大満足のワイン酒場

「楽しくなければ酒場じゃない！」　そんな思いがヒシヒシと伝わってくるような店が「大衆ワイン酒場 Quiche×Quiche」です。実は数年前まで徒歩数分のところに住んでいた筆者は、この店の超常連。転居後はしばらくご無沙汰していましたが、今回久しぶりにホームグランドともいえる店を訪れました。

場所は薬院大通交差点近くの城南線と大正通りを斜めに結ぶ一方通行の道沿いにあり、敷地の形状から店内は変則的な三角形。その空間を最大限に生かしながら中二階席を設けるなどして約30席を確保した店内は鮮やかな朱色に塗られ、ワインの産地などを紹介するポップな描き文字がいかにも「大衆ワイン酒場」らしい雰囲気を醸し出しています。

黒木孝憲さんは長年この店の店長を務めながら猛勉強してソムリエの資格を取得し、前オーナーから店を引き継いで今年からオーナーシェフに。「美味しい料理とワインでワイワイ楽しんでほしい」と自ら腕を振るいながら、料理に合わせたワインを提案してくれます。

まずは店名の由来にもなっている名物のキッシュから！……といきたいところですが、ここのキッシュは注文が入ってから焼き始めるので、30〜40分待たねばなりません。なので、まず１品目はキッシュと並ぶ人気メニューの「KINGアヒージョ」（1,400円）から始めることにしました。
“KING”の名にふさわしく、エビ、ベーコン、ソーセージ、ホタテ、エリンギ、シシトウ、ナス、ズッキーニ、人参、パプリカなどなど、オールスター級の具材をたっぷりのオリーブオイルで煮た豪華版。グツグツと煮立った具材を爪楊枝で食べるピンチョススタイルで、ハフハフしながら辛口の白ワインで舌を冷まして食べるのが最高です。具材のエキスが染み出たオイルがまたいい具合の味になり、バゲットを浸して最後の一滴まで残さずいただきます。

白ワインでアヒージョをやっつけているうちに、名物のキッシュが焼き上がりました。実はこのお店、2010年に先代オーナーがキッシュのテイクアウト専門店としてスタートしたのが始まりで、今もその味をしっかり受け継ぎながら常に焼きたてを提供しています。オーブンから取り出されたばかりのキッシュは、サクッとした生地から卵と生クリームを使って作る中身のアパレイユまでもちろん手作りで、和風の具材を使ったオリジナルのレシピが人気です。
写真は左から「ポテトと明太子のキッシュ」、「照り焼きチキンとゴボウのキッシュ」、「カポナータとチョリソーのトマトキッシュ」（各550円）で、定番の５種類に日替わりキッシュをラインアップ。テイクアウトもできるので、お土産に買って帰るのもいいですね。

ワインを飲んで気分が上がれば、不思議と食欲も湧いてくるもの。そんな酔っ払いの食いしん坊に大人気なのが「牛サガリのガーリックステーキ」（1,400円）です。たっぷり150gもの牛サガリをアツアツに熱した陶板に乗せ、ガーリックを効かせた甘辛い味付けのステーキソースをかけて、ジュワーッと音をたてながら登場する瞬間はさらに気分が盛り上がります！　カジュアルな赤ワインをグビグビ飲みながら、ペロリと平らげてしまいました。

「大衆ワイン酒場」の名前どおり、ワインは生産国や産地を問わず、飲みやすい味と価格の銘柄がグラス550円から、ボトルは2,000円台から揃っています。17時から19時のハッピーアワーは、グラスワインや生ビール、おまかせキッシュなどがすべて330円というサービスも飲んべえにとっては嬉しい限りです。
さらに「最近は自分の趣味でちょっといいワインも入れています」と、ボルドーのシャトーものなどのプレミアムなボトルもストックしているとか。ここぞという時には、ソムリエ厳選の１本を開けてみたいものです。