凄腕シェフの料理が手軽に食べられるビストロバル

高砂１丁目交差点近くにある真っ赤な看板が目印で、店名の”モデレート”は、ちょうどいい、適度なという意味。カウンターメインのフランクな雰囲気の店内でテレビのモニターからサッカーや野球の試合が流れているのも、いかにもスペインの町角にありそうな風情です。ロゴマークに「ビストロ＋バル」とあるようにフランスやスペインの料理を中心にした、酒場以上レストラン未満といった表現がぴったりの店です。

店主の髙塚泰彰さんは調理専門学校を卒業後、福岡を代表する高級ホテルに入社してメインダイニングのフレンチレストランに10年間勤務。さらにその後、世界を一周する高級クルーズ船のVIP専用レストランのシェフを務めたという異色の経歴の持ち主です。
「船に乗っている間はあるものを使って料理を作らなければならないので、とても良い経験になりました」と語るとともに、寄港地の先々で世界中の料理を体験。その後、福岡市内のスペイン料理店などを経て、2020年に「髙砂モデレート」をオープンしました。

メニューはカウンター上の黒板メニューのみ。「日替わりメニュー」という言葉はよく聞きますが、実際は数種類の料理をローテーションしてるだけの店も少なくありません。ところが髙塚さんは「毎日必ず新しい料理を入れて書き替えています」というように、その日の仕入れによって食材や調理法を変えています。何ヵ月も航海する船でシェフを務めていただけに、その引き出し多さには驚きです。

食材と調理法がわかりやすく書かれたメニュー名も親切で好感が持てます。「冷たいとうもろこしのムースと生ハムと海老のコンソメジュレ」（400円）は、香ばしく焼いた海老の殻でとったコンソメのジュレと、旬のトウモロコシのムースの上に生ハムを散らしたもの。スプーンで口に運べば、海老の旨味、トウモロコシの甘味、生ハムの塩味が渾然一体となって広がります。しかも、これだけ手の込んだ料理が400円というお値打ち価格！　辛口のソーヴィニヨンブランと合わせれば、スッキリとした余韻が残ります。

毎日仕入れる新鮮な魚介を使った料理も揃っています。「玄海天然鯛のミントパン粉焼き新玉のクリームソース」（700円）は、爽やかなミントの香りをまとわせたパン粉で焼いた真鯛を、新玉ネギとタイムを入れた塩レモンクリームソースでいただきます。フランス産のフルーティーな辛口白ワインがスイスイ飲める軽やかさです。

そして髙塚さんのスペシャリテの一つが、博多らしく燻製にした豚足や豚の耳など様々な部位を使った「コラーゲンソーセージ」（800円）。コラーゲンたっぷりのプリプリとした食感に赤ワインヴィネガーのソースが抜群に合い、食べごたえもある一品です。豚料理には、濃厚な果実味のあるスペインの黒ぶどう品種テンプラニーリョの赤とのペアリングがベストでしょう！

定番のワインは白３、ロゼ１、赤４種類のラインアップで、それぞれグラス500円、ボトル3,000円というリーズナブルな均一価格。その他にもセラーには各国のワインが揃っているので、料理に合わせて気軽に相談してみてください。

軽いワインのアテから本格的なフレンチまで、なにげにチャチャッと作ってくれる凄腕シェフの髙塚さん。高砂の町角でそんな料理をリーズナブルに楽しめる、ワイン好きにとって貴重な店です。