「BAR SEBEK」の八女抹茶とあまおうのカクテル「FRI（Fukuoka Roku Ice）」

BARをこよなく愛するライター西山健太郎が、福岡・博多のオーセンティックバーを訪れ、旬のフルーツカクテルを紹介する連載コラムです。今回は、中洲「BAR SEBEK（セベク）」の八女抹茶とあまおうのカクテル「FRI（Fukuoka Roku Ice）」をご紹介します。

中洲の一角に「人形小路」と呼ばれる、路地の左右に長屋が建ち、個性あふれる店舗が軒を連ねる区画がある。そのT字路が交差する場所に、オーナーバーテンダーである大津麻紀子さんが2011年6月に開いた「BAR SEBEK」がある。
大津さんは「ヘネシー X.O カクテルコンペティション」「サントリー ザ・カクテルアワード」といった全国のバーテンダーがその腕を競うコンペにおいてグランプリを獲得するなど、日本を代表する創作カクテルの名手。現在、日本バーテンダー協会福岡支部の研究部長として、若手バーテンダーの技術向上にも携わっている。

新作カクテル「FRI（Fukuoka Roku Ice）」がカウンターの上に載せられたとき、思わずその美しさに息を呑んだ。
苔むした古刹の庭に凛として咲く寒椿。そういった想像をかき立てるような、まさに芸術的な「和」の色彩が、グラスの縁で切り取られた円形の画面に浮かんでいる。
ジャパニーズクラフトジン「ROKU（六）」に甘酒とバニラアイスクリームを加えたものをブレンダー（ミキサー）にかけてグラスに注ぎ、八女抹茶の粉を振り、その上から冷凍のあまおうをすりおろして完成するという、そのレシピも含めて極めて独創的な一杯。
グラスを口に運ぶと、アイスクリームの甘さ、甘酒の風味、ジンの力強いアルコール感、そして抹茶の香りとあまおうの酸味が重なり合い、まるで舌の上に五重の塔が立ち上がるかのようなインパクトを受ける。
「とにかくモノづくりが大好き」と語る大津さん。その「想像力」と「創造力」の結晶は、フルーツカクテルのみならず、ギムレットやダイキリといったスタンダードカクテルにも感じ取ることができる。
店名にある「SEBEK（セベク）」はエジプト神話に登場するワニの神。まるで神業ともいえる大津さんのカクテルをぜひ同店にて味わっていただきたい。