コーヒーの街・福岡のロースタリー巡り【7】

個性は伝えずとも感じさせるもの。筑豊の隠れた名ロースタリー

公開日

最終更新日

ライター諫山力

カメラマン諫山力

このみ珈琲 直方市

直方市

このみ珈琲

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明治から昭和にかけて炭鉱で栄えた直方市の中心に位置する、東西に伸びるアーケード商店街「ふるまち通り」。かつての栄華も今は昔。現在はいわゆるシャッター通りになっており、その哀愁漂う雰囲気も相まって、ノスタルジーな気分に浸れます。今回はそんな商店街で1995年から愛されている、隠れ家的なコーヒーの名店をご案内します。

このみ珈琲 外観

創業1995年、自家焙煎に切り替え「このみ珈琲」に屋号を変わったのは2000年

店名は「このみ珈琲」。筑豊エリアでコーヒーを日々嗜む方であればご存知かもしれませんが、福岡市内となると同店のことを知っている人は、きっとそう多くはないでしょう。ですが、個人的にはコーヒー好きにこそぜひ一度足を運んでほしいと思っている一店です。

このみ珈琲 コーヒー豆

美しく粒がそろったコーヒー豆

その一番の理由は良い原料を手に入れられるという圧倒的な強みがあるから。「このみ珈琲」は東京にある「堀口珈琲」が運営するリーディングコーヒーファミリー(LCF)というグループに所属しており、そこから生豆を仕入れることができます。その原料を仕入れられるのはLCFのメンバーだけで、2025年5月現在、全国で120店ほどが加盟。「このみ珈琲」は初期から加入している古株のロースタリーです。

このみ珈琲 店主

「クリーンで飲みやすいのがおいしいコーヒーの条件」と許斐さん。写真は真剣な表情だが、すごく温和な人柄

オーナーロースターの許斐善隆さんは堀口珈琲やLCFとの出会いをこう振り返ります。
「もともと焙煎したコーヒー豆を販売するフランチャイズからコーヒー業界に入り、知識を深めていく中で、特別品質の良いコーヒーがあることを知りました。それが、今で言うスペシャルティコーヒーなのですが、当時はまだスペシャルティという呼び名さえなかった時代。もちろん現代のように情報があふれているわけもなく、自分で体験するしかないと、東京の自家焙煎喫茶やビーンズショップを巡りました。その時に堀口珈琲さんで買った深煎りのコーヒーがすごくおいしくて、焙煎をするなら、堀口さんのようなコーヒーが焼きたい。そんな思いで堀口珈琲さんの門を叩いたのが最初です」

このみ珈琲 豆売り

豆売りをメインに30年以上。使っている道具も年季が入っていてかっこいい

ちょうど堀口珈琲も生豆を生産者から共同で買い付けるメンバーを募っていた時期で、許斐さんはそのままグループに入り、焙煎も直々に堀口さんから教えてもらうことができたそうです。それが2000年ごろの話。
2000年というとスペシャルティコーヒーという言葉が少しずつ聞かれるようになってきた時代なので、「このみ珈琲」は福岡県内でもかなり早い段階でスペシャルティコーヒーを取り扱っていたことは間違いないでしょう。

このみ珈琲 豆ラインナップ

華美なデザイン性は一切ない。ディスプレイは必要な情報を淡々と伝えていくのみ

それからコツコツと堅実に、直方市を拠点にスペシャルティコーヒーを広めてきた「このみ珈琲」。LCFは品質の良い原料に強いこだわりを持ち、長く生産者と信頼関係を築くことに重きを置いています。畑からウォッシングステーション、積込港、さらには日本国内に保管する定温倉庫まで、できる限り温度管理を徹底するなど、ロジスティクスの面でも妥協はありません。当然トレーサビリティも明確に取れます。

このみ珈琲 ハンドドリップ

クリーンな味わいになるように、比較的抽出速度が速いドリッパーを使用

「そんな素晴らしい原料を仕入れられることは、本当に恵まれていると実感しています。自家焙煎を始めようと思った当時に堀口珈琲さんに出会えたのは幸運でした」と許斐さん。ただ、それは許斐さん自身がシンプルにおいしいコーヒー、そうじゃないコーヒーの判断ができていたからこそ。

このみ珈琲 ドリップコーヒー
このみ珈琲 コーヒーゼリー

ドリップコーヒーのイートインは1杯550円〜。コーヒーゼリーアイス(980円)。ドリンクセットは1430円

そんなスペシャルティコーヒーの隠れた名店「このみ珈琲」ですが、昨年から新たな焙煎のやり方に取り組んでいると言います。
気候や栽培する場所などスペシャルティコーヒーを取り巻く環境がこの20数年で大きく変わり、ここ数年、より良い品質の原料を追求した結果、標高が高い畑で栽培された生豆を扱うことが多くなったそうです。そういった高標高地で栽培されるコーヒーチェリーは生豆の硬度が高いものが多く、従来のように焙煎をすると中に含まれた水分が十分に抜け切れない、ということが起きやすくなっているそう(その代わり、的確な焙煎さえできれば抜群においしい!)。その残留した水分は渋みの原因となり、ネガティブな味わいに繋がります。

このみ珈琲 カフェスペース
このみ珈琲 豆売りコーナー

店に入ってすぐが豆売りコーナー、奥がカフェスペース

「昨年、全国各地のLCFのメンバーに声がかかり、そういった味わいにならないよう焙煎の講習会が開かれたんです。学んだのは今までとはまったく異なる焙煎の考え方で、正直最初は戸惑いました。ただ、実際に新たな焙煎方法を実践してみると、確かにほのかに残ってしまっていた渋みがなくなったんです。一方で、どの生豆にもそのやり方が合うかと言われるとそんなことはなくて、従来のやり方が良いのか、それとも新しいやり方が良いのか、試行錯誤の日々。25年近く焙煎をしてきても、まだまだ学ぶことばかりです」と許斐さん。
この真摯な姿勢もまた「このみ珈琲」の魅力。実際に芯までしっかり火を入れる焙煎を心がけたコーヒーはとても軽やかで、すっきりと飲みやすい仕上がり。一方でそのやり方だとボディ感が弱くなる場合もあり、そこの見極めに許斐さんの長年の経験が生かされています。

このみ珈琲 商店街 看板

店はアーケード入口そば。専用駐車場があるので車でも行きやすい

シングルオリジンは同じ生豆の焙煎度違いを合わせて14種程度、ブレンド7種と豆選びの選択肢が豊富で、ローストは中煎り〜深煎りと、比較的自宅で淹れやすい焙煎度合いの商品が揃っているのもうれしいポイント。おいしいコーヒーとの出会いを求めて、直方市までぜひ足を伸ばしてみてください。

店舗名

このみ珈琲(店舗写真

ジャンル

  • コーヒー

住所

福岡県直方市殿町2-9

電話番号

0949-24-3952

営業時間

10:00~19:00、日曜10:00〜18:00

定休日

木曜

席数

  • カウンター4席
  • テーブル7席

メニュー

ブレンドコーヒー550円、シングルオリジン550円、自家製ケーキ380円〜580円、ウインナーコーヒー600円、ハニーウインナーコーヒー650円、コーヒーゼリーアイス980円、キャラメルパフェ1200円

喫煙について

禁煙
  • ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
  • ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
  • ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
  • ※OSはオーダーストップの略です。
  • ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

記事に関する諸注意

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