上野万太郎の「この人がいるからここに行く」【第1回】

福岡スパイスカレーの人気店として突っ走る「路地裏カレー Tiki」のトシさんの話

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ライター上野万太郎

カメラマン上野万太郎

上野万太郎

ここ10年間、カレー店と珈琲店やカフェを中心に年間外食はのべ1,100軒以上。本業の傍ら、外食写真日記的なブログ「万太郎.net」で福岡を中心とした飲食店の人々やお客さんと関わったエピソードを発信。著書は「福岡カフェ散歩」(書肆侃侃房/2012年)、「福岡のまいにちカレー」(書肆侃侃房/2014年)。
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「路地裏カレー Tiki」の店主、通称、トシさん。開業してもうすぐ9年になる福岡のカレー店でも屈指の人気店の店主である。今の福岡スパイスカレーブームの火付け役の一人と言っても過言でない。
店は渡辺通りの路地裏、焼肉屋の敷地内の細道を裏に回った所にある。古い住宅を改装して店舗にした、まさに路地裏のカレー店。トシさんが作るカレーは、現在はスパイシーチキンカレー(900円)、スパイスMAXチキンカレー(950円)、ラム&ピースなキーマカレー(1000円)、ポークビンダル(1000円)の4種類。開店時間前から、行列が出来る人気店なのだが、ある意味福岡で一番回転が早いスパイスカレー店かもしれない。

路地裏カレー Tiki

福岡の人気カレー店では、店に入るまでに30分〜1時間待ちもざらだが、こちらではかなりの行列が出来ていても、あれよあれよという間に席に案内される。
「うちは回転が命ですから」というトシさん。
カレーの調理方法は店によってバラバラだが、一皿一皿しっかり時間をかけて提供するお店も多い中、確かにこちらでは、大手チェーン店かと思うほど、あっという間に提供される。席数も1階と2階合わせると最大で24席あり、個人経営のカレー店としては広い店なので回転はさらに良くなる。それでも一杯一杯ご飯の量や辛さの調整については細かく注文に応じてくれる。

とにかく多くのお客にいかに早くカレーを提供するかが一番の顧客サービスであり、もちろんトシさん自身のためでもあるという考え。
ちなみに開業当初の開店時間は11:30だったが、開店前から並ぶお客を準備でき次第に案内していたため、実際の開店時間がだんだん早くなり、現在では正式な開店時間が10:30になっているところもトシさんらしい。
「早くてうまいならそれが一番だ」と思うのは僕だけではないはず。その回転の早さもあり、カレーマニアだけでなく、近隣のビジネスマンなどでいつも賑わっているのも納得である。

路地裏カレー Tiki

スパイシーチキンカレー

知っている人には有名な話だが、トシさんは20年以上のバーテンダーとしての仕事を引退して、2012年11月に「路地裏カレー Tiki」を開業した。バーテンダーとして、お客をしっかりつかんでファンも多くいるトシさんだったが、一念発起、昼間の営業の店、それもカレー店を開業したのだ。
古くからトシさんを知る友達やお客は「トシさんには昼の仕事は絶対ムリ!」という声が多かったらしい。それがどうだろう。いざカレー店をオープンしたら、早朝5時から店に出てきて一人仕込みを始める真面目さ。以前なら夜通しでまだまだお酒を作って営業真っ盛りの時間である。

深夜の仕事から早起きな仕事に変わったトシさんの趣味はトライアスロン。過去にはハワイ(2回)、石垣島、宮崎県、そして福岡県での大会に参加したそうだ。 「店を始めたタイミングでトライアスロンに出会ったんです。精神的には向上心やら諦めない心を養えたし、朝早くからカレーの仕込みをやれてるのもトライアスロンで体力がついたおかげだと思ってます。僕の中ではお店とトライアスロンは切り離せないんです」 日頃から油山の山道を走ったり、バイク(自転車)で仕事の後や休日に市内を走り回ったりと、仕事と同様にトライアスロンに対しても地道に毎日コツコツ努力しているトシさんなのだ。

路地裏カレー Tiki

「どうしてカレー屋さんをしようと思ったんですか」と聞いてみたことがある。
「40歳過ぎて子供も出来たし、そろそろ昼間に働いて夜は家で家族と暮らす生活もしてみようかなと思ったんですよ」とのこと。
人気店になり仕込みの量が増えた最近は朝4時から仕込みをする日々。月曜日から土曜日までかれこれ9年くらいそんな生活を続けているからすごいもんだ。
今ではすっかりカレー職人だ。
時々、トシさんはこんなことを言う。
「俺、カレーのこと、よう分からんのですよ」
そんなはずがないのはよく分かっている。それはトシさんの照れなのか、自己防衛なのかは分からないが、これだけの人気店になっているにも関わらず、その謙虚な言葉が出て来る人ってなかなかいないと思う。
変なプライドがないため、分からないことがあれば同業者や専門家に素直に「教えてちょうだい」とお願い出来るのだ。あまり感情を前面に出すタイプではないが、いまでもカレー作りに対する好奇心と向上心は冷めることを知らない。

路地裏カレー Tiki

4種類のカレーはどれも人気だが、僕はここに来たらスパイシーチキンカレーの一択。
しっかりと炒められた玉葱の旨味と鶏がらスープの出汁がベース。クローブ、ブラックペッパー、カルダモンなどが主張する正統派のチキンカレー。パンチがあるのにしつこくなく後味さわやかな仕上がり。タイ産プリッキーヌ(青唐辛子)による風味の良い辛味が相まって、味と香りのまとまりの良さがクセになる。

とにかく僕はトシさんが作るこのチキンカレーが大好きなのだ。以前、某雑誌のコメントで「30年後も福岡で食べたいカレー」と書いたのは大袈裟ではない。

路地裏カレー Tiki

さて、来年で丸10年を迎える「路地裏カレーTiki」だが、去年末からオリジナルのレトルトカレーを店頭やネット( https://tikicurry.shop-pro.jp/ )で販売している。レトルトでは難しいと言われるお店で食べるカレーの再現性。ここのレトルトカレーはその再現性がすごく高いともっぱら評判だ。

また今までイベントや期間限定以外では夜営業はしてなかったがこの夏から15時以降の夜営業も「vin glass dish(ヴァン グラス ディッシュ)」という屋号でスタート(現在は営業自粛要請のため休み中)。
昼のスタッフとしてトシさんを手伝っている奨平さんが店長として、オリジナルのスパイス焼酎とスパイス料理を提供。クラフトビールやワインも出してスタンディングで気軽にお酒とスパイスを楽しめるお店にしたいらしい。

渡辺通りの路地裏で9年。定休日以外ほとんど休まず毎日早朝からカレー作りに励むトシさん。10年、20年続く店はこういうことの積み重ねの結果だと思う。これから何十年も毎日毎日どこかでこのチキンカレーを作り続けてくれたら嬉しいなと、僕は勝手に思うのだった。

店舗名

路地裏カレー Tiki

ジャンル

  • カレー

住所

福岡県福岡市中央区渡辺通5丁目24−38

電話番号

なし

営業時間

10:30〜15:00(売り切れ次第閉店)

定休日

日曜

座席

  • カウンター14席
  • テーブル10席

個室

なし

メニュー

スパイシーチキンカレー(900円) 
スパイスMAXチキンカレー(950円)
ラム&ピースなキーマカレー(1000円)
ボークビンダル(1000円)
ごはん大盛り(100円)
温泉玉子(100円)

  • ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
  • ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
  • ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
  • ※OSはオーダーストップの略です。
  • ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

記事に関する諸注意

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