新規店も続々参入。勢い衰えぬ〈立ち飲み〉はなぜ流行る?

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ライター葉山巧

カメラマン弓削聞平

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葉山 巧

グルメを中心に、カルチャー、ビジネス関係など様々な分野で寄稿するフリーライター。寄稿実績:「ソワニエ+」(エフエム福岡)「福岡 気軽で楽しい町の寿司屋」(聞平堂)「Pen」(CCCメディアハウス)等々

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もはやブームの域を超え、すっかり日常に溶けこんだ感のある〈立ち飲み〉。近年は「タチノミスト」なるイベントで賑わったり、有名料理店が手がける新規店もデビューしたりと、ちょっと見逃せない盛り上がりを見せています。
では、なぜ人は〈立ち飲み〉に惹かれるのか。福岡の立ち飲みムーヴメントに火を付けた「メグスタ」オーナーの落水研仁さんとともに、その理由や“これから”について考察してみました。

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NEO MEGSTA

■人々が繋がり、コミュニティが膨らむ面白さ

まず注目すべきは、どの立ち飲み屋にも共通する熱気やグルーヴ感でしょう。「メグスタ」をはじめ、そこには必ず心底リラックスした人々の笑顔があるはずです。
落水さんいわく、「皆さんが求めるサードプレイスの役割を〈立ち飲み〉が担っているからだと思います」。サードプレイスとは、米国の社会学者が提唱した「第3の場所」のこと。家庭や職場以外の心地よい場所を持てば、人生の様々な面で大きな利点が得られると言います。
ここで意気投合した客たちが、言葉・情報・感情を楽しく交わす光景はまさにその象徴。かつて「カフェ ソネス」を中心に起きたカフェブームを想起させますが、立ち飲み屋はその正統なフォロワーかもしれません。
「実は僕も、当時のカフェのかっこよさに憧れて飲食業を始めた一人。でもやがて、人と人が繋がってコミュニティが膨らんでいくという、すごく魅力的な現象に気づいたんです」と落水さん。「それと同じ景色が〈立ち飲み〉にもありますよね。そんな空間を提供し、皆さんを迎えることが今の僕の醍醐味です」

■思うままに回遊できる自由度が強み

そのコミュニケーションを容易にする重要なポイントが、そう、「椅子がない」ことです。例えば店内で偶然知人を見つけたとき、すぐに動きづらいテーブル席に対し、スタンディングならいつでも接近可能。気軽にフロアを回遊できる自由度は、人と人の接点をグンと増やす〈立ち飲み〉の強みです。
「売上を出しやすいのは着席スタイルなんですけどね(笑)。それでも、クラブにも似た〈立ち飲み〉の開放的な光景は見ていてワクワクします」と落水さん。そもそも、昔から屋台などオープンな空気を好む博多っ子。〈立ち飲み〉と相性が悪いわけがないのです。

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■フードやインテリアへのこだわりも成功要因

また、福岡には「角打ち」という歴史ある立ち飲み屋もありますが、無論今回のテーマの〈立ち飲み〉とは別ジャンルです。こちらは酒の種類が豊富なうえ、値頃で凝ったフードも多々。インテリアも居心地重視のデザインが多く、この辺も女性ファン獲得に成功した要因でしょう。

かくて、着実に浸透と拡散を続ける〈立ち飲み〉。このジャンルに将来性を感じた落水さんが、2015年、警固小前に「メグスタ」を構えて8年が経ちました。今では「ネオメグスタ」(赤坂)「メグスタ5」(春吉)など福岡・東京に6店舗を構え、2年前に立ち上げたイベント「タチノミスト」の参加店も43軒と初回から倍増するなど、日々追い風を実感しているそうです。

■福岡発の〈立ち飲み〉が海を越える

「コロナ禍の外出自粛の反動や、昼飲みを求める声もあり、時代とマッチしながら成長している感じです。観光資源となった屋台に代わる、“地元のコミュニケーションの場”としても存在意義が高まったのでは」と手応えを語る落水さん。そして、「いずれ〈立ち飲み〉が屋台と並ぶ福岡の食文化になればいいな」と付け加えました。

少なくとも、酒も料理も上等で、屋台と同質の空気が漂う立ち飲み屋は、国内外から訪れる人々にも好評です。とくに「地元の人と触れ合いたい」と望む観光客には、店ごとの個性を愛でつつ、多彩なレベルの交流ができる理想の場に違いありません。

最近韓国に登場したジャパニーズスタイルの立ち飲み屋も、その流れを汲んだ成果と言えそうです。落水さんによると、「タチノミスト」に参加した韓国の方がその体験に感激し、母国で同様の店を始めたというから嬉しい話ですよね。

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■人情味ある接客が生む、新たな福岡ブランド

さらに、東京でも大阪でもなく、福岡にしかない〈立ち飲み〉の魅力があると落水さんは力説します。「料理のクオリティもそうですが、何よりスタッフの温かさですね。過去に県外で何軒も立ち飲み屋に行きましたが、福岡ほど客に寄り添うもてなしができる土地はありません。他県に誇れる人情深い接客は、“福岡立ち飲み”というブランド確立の決め手になると思いますよ」

ここで先ほど落水さんが述べた「食文化」に繋がるのですが、昨今、福岡では新名物としてコーヒーとカレーが注目を集めています。そこに〈立ち飲み〉が加われば、食都・福岡をより熱くする新御三家が生まれそう……。そんな未来さえ夢見させる〈立ち飲み〉に、あらためて熱い視線を!

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  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

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