間借りカレーを卒業して実店舗になった人気カレー店5軒

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ライター上野万太郎

カメラマン上野万太郎

バダピリラ

上野万太郎

ここ10年間、カレー店と珈琲店やカフェを中心に年間外食はのべ1,100軒以上。本業の傍ら、外食写真日記的なブログ「万太郎.net」で福岡を中心とした飲食店の人々やお客さんと関わったエピソードを発信。著書は「福岡カフェ散歩」(書肆侃侃房/2012年)、「福岡のまいにちカレー」(書肆侃侃房/2014年)。
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数年前から「間借りカレー」という言葉が注目を浴びて来た。店舗を持たないカレー店店主が昼間営業していないバーや居酒屋を借りてカレー店を営業する仕組みのことだ。昨今のカレーブームがピークになって来た頃から東京、大阪、福岡などで特に数多く見られだした。サラリーマンやフリーターをしながらいつかはカレー店を開きたいと思う人たちにとってはとてもありがいたいシステムである。

飲食店を開業するとなると不動産物件の契約から店内の改装費用など数百万円の初期投資が必要になるのが一般的。そのリスクを背負っていきなり開業するのはなかなかの決断になる。しかし「間借り」となれば厨房設備も整っているので初期投資がほとんど不要でお試し開業が出来るのである。鍋とフライパンが使える厨房であればとりあえずはカレー作りが出来るというのも「間借りカレー」の広がりに拍車をかけたのかもしれない。これがラーメンやうどんの間借りとなればそうはいかなかったかもしれない。
反面、不動産管理会社や大家さんの許可がないと又貸しになるので注意も必要だし、火災や事故が起きた場合に対する保険などの準備は必要かもしれない。

そんな状況の中、「間借りカレー」での経験と実績を経て実店舗営業に移行していったカレー店が多く出始めている。今回はそんな中から人気の5軒を紹介してみたい。

1. 和平(かずへい)カレー

ミュージシャンだった山崎和平さんは日々の大変な生活の中でスパイスカレーに出会い心も体も元気になったという。それからカレーにハマり、「和平カレー」として親不孝通り近くで間借りカレーを開始したのが3年前。路地裏のラーメン店の奥の2階にあるバーを借りての営業。場所を説明するのも難しいロケーションだったが彼が作るカレーはSNSを中心に話題なった。
そこで自信をつけて2021年1月についに東区名島で実店舗を開業。インドやパキスタンのカレーをベースにチキン、ポーク、鴨肉、海老などを使ったオリジナルカレーを提供。ランチタイムには行列が出来る人気店となってる。そしてなによりも和平さんの笑顔が印象的。最近作られた店頭看板には大きな彼の似顔絵が微笑みかけてくれている。そもそもは和平さん自身を健康にしてくれたスパイスカレーに出会ったことからスタートしているので、まさに彼の笑顔は健康の証そのものといえるのだ。

和平カレー

パキスタンカレーとキーマカレーの二種盛り

和平カレー

店主の山崎和平さん

和平カレー

店頭テントに描かれた店主の似顔絵

2. みわCurry

博多区美野島「みわCurry」の松岡美和さん。「マサラキッチン」で約2年間、スタッフとして働いていた美和さん。月に1回、同店の定休日を間借りして自分の屋号「みわCurry」として営業していた。カレー作りやチラシ作りに関しては三辻店主からアドバイスをもらいながらのカレー修業。その後別の店での間借りカレーを経て2020年6月に実店舗として独立。チキンカレーをメインに女性ならではの優しさもありながらパンチのあるスパイスカレーや、大好きな沖縄タコライス風のキーマカレーなどを日替わりで提供している。
余談だが「マサラキッチン」の三辻さんも開業準備中に今泉のバーを間借りしてカレーを提供してたことがある。その頃はまだ「間借りカレー」という言葉が世の中に定着していなかった頃のことだが。

みわCurry

チキンカレーとキーマカレーの二種盛り

みわカレー

3.カレーとお酒banyan

伴勇太朗さんと尚さんの夫婦で営む「カレーとお酒banyan」はカレー好きが縁で知り合ったお2人の店だ。僕が最初に出会ったのは奥様の尚さん。彼女もまた「みわCurry」の松岡美和さん同様「マサラキッチン」スタッフとして働いていた期間中に店休日に「ヒノキハラカレー」という屋号で営業をしていた。退職後に市内数ヵ所での間借りカレー営業を経て、2019年6月に伴さんと一緒に「カレーとお酒banyan」をスタートさせた。定番メニューであるチキンカレーとマトンキーマカレーは勇太朗さんがメインで、限定の日替わりメニューを尚さんが担当している。どちらも肉肉しいパンチのあるスパイス使いが特徴的。ちなにに日曜の夜はカレータレントのたけるさんが間借り営業をしている。そんな風に次の世代に「間借りカレー」が受け継がれているのも面白い。

カレーとお酒-banyan

ラムキーマカレー

カレーとお酒 banyan

時々提供される限定メニューのカツカレー

カレーとお酒-banyan

伴勇太朗さんと尚さんの夫婦

マサラキッチン

「マサラキッチン」時代に店内で間借り営業していたころの「ヒノキハラカリー」と「みわCurry」のPOP

4. バダピリラ 【大分に移転】

40歳でサラリーマンをやめて独立したくて飲食業を目指した「バダピリラ」の安部勝也さん。会社を辞めた後に調理学校に通い、知り合いの居酒屋を間借りして欧風カレー店を開業。その後住吉のバーの間借りした頃からスリランカカレーに目覚めた安部さん。それからは定期的にスリランカで現地カレーを学ぶ。肉類、魚介類を使用したメインのカレーと豆類や様々な野菜の副菜をライスの周りに盛り付け、少しずつ混ぜながら味の変化を楽しむ現地系カレー。「バダピリラ」はそんな現地系スリランカカレーで福岡を代表する店になっている。
2021年11月には「福岡カレードットコム」という会社を設立。“福岡のカレーを全国へ!”というテーマの元、福岡の人気カレー店を集めて冷凍カレーの通信販売サイトもスタートさせた。

バダピリラ

スリランカのライス&カリースタイル

バダピリラ

オプションの揚げ卵(100円)はおすすめ

バダピリラ

店主の安部さん

5. キャンチョメ102

南区玉川町「キャンチョメ102」の店主、勝部拓哉さん。通称はキャンチョメさん。勝部さんが同名のアニメキャラに似てるということで奥様から呼ばれるようになりそれが後に店名になったそうだ。
彼は博多区にある欧風カレー店で働いていた時から、曜日限定で「キャンチョメカレー」という自分のスパイスカレーも提供していた。お客の注文によって欧風カレーを出したり自身のスパイスカレーを出したりするという珍しいパターンだ。そのうち噂が広がり「キャンチョメカレー」を出す日には行列が出来るようになり独立を決意。2020年2月に「キャンチョメ102」をオープンした。インドカレーをベースに食材の組み合わせや彩りの良さが人気の店名を冠したキャンチョメライスや、ラム肉の旨味と香りを楽しめるラムカツカレーなど、勝部さんの独創性とセンスが光るカレーが人気で新店になっても行列が出来る人気店となっている。

キャンチョメ102

看板メニューの真キャンチョメライス

キャンチョメ102

ラムカツカレー

キャンチョメ102
キャンチョメ102

最後に一言

以上いかがでしたでしょうか。「間借りカレー」を卒業して実店舗営業への移行を果たした人気のカレー店はこの5軒に限らずもっともっと他にもたくさんあります。「間借りカレー」を開くには注意すべき大人の事情や条件もありますが、その辺りを解決して取り組めば「いつの日か自分のお店を持ちたい」という夢を叶えるには素晴らしいシステムだと思います。

そして「間借りカレー」をずっと続けるという方法もこれからはありかもしれません。いわゆる“シェアレストラン”という考え方。COVID-19の影響が続いている昨今、まだまだ飲食店にとっては厳しい状況が続くかもしれません。様々な可能性を模索してリスクを減らして収益を上げる考え方を柔軟に取り入れた経営が求められると思います。僕が今回一番言いたかったことはこのことかもしれません。その一つの方法が「間借り」ということだと思い、今回うまくいった事例として5軒をご紹介させていただきました。決して、「美味しいカレー屋さんを5軒紹介します」と言いたかっただけではありません。

店舗名

和平(かずへい)カレー(店舗写真

ジャンル

  • カレー

住所

福岡市東区名島3-27-1

電話番号

070-8544-0902

営業時間

11:30~14:30/18:00~OS20:30(金曜のみOS21:30)

定休日

不定

席数

  • カウンター6席
  • テーブル4席

メニュー

パキスタンカレー1,000円(その他日替わりカレーあり)、テイクアウトカレー弁当800円

喫煙について

禁煙

店舗名

みわCurry(店舗写真

ジャンル

  • カレー

住所

福岡県福岡市博多区美野島3-12-10

電話番号

092-483-3636

営業時間

11:30~OS14:30/18:00~OS20:00

定休日

火曜(日曜夜は休み)

席数

  • カウンター4席
  • テーブル4席

メニュー

定番!チキンカレー770円、その他日替わりカレー

喫煙について

禁煙

店舗名

カレーとお酒banyan(店舗写真

住所

福岡県福岡市中央区清川1-11-15

電話番号

なし

営業時間

12:00~15:00/18:00~22:00(木曜は昼のみ営業)

定休日

日曜

席数

  • カウンター3席
  • テーブル8席

メニュー

ビアチキンカレー950円、マトンキーマ1,100円、その他日替わりカレー

喫煙について

禁煙

店舗名

キャンチョメ102(店舗写真

ジャンル

  • カレー

住所

福岡市南区玉川町2-16

電話番号

092-231-8899

営業時間

11:30〜OS14:00/18:00〜OS21:30

定休日

水・木曜、他不定休あり

席数

  • カウンター5席
  • テーブル6席

メニュー

キャンチョメライス1,500円、ラムカツカレー1,300円

喫煙について

禁煙
  • ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
  • ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
  • ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
  • ※OSはオーダーストップの略です。
  • ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

記事に関する諸注意

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秋のスパイスまみれ 10/12(土),13(日),14(月)
JAPAN PIZZA FESTIVAL 10/17(木)~10/20(日)

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