グランドメゾン presents 「ハレの日レストラン」【第76回】

今春、舞鶴に移転を敢行。料理・人・空間の三拍子が揃った愛すべき寿司屋

公開日

ライター葉山巧

カメラマン平川雄一朗

伍水庵寿司集合

舞鶴

すし 伍水庵

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客を笑顔にするために、常に己の限界に挑むこと──そんな誠意や献身が、“作り手”を“職人”にするのだと思います。今春、荒戸から舞鶴に移転した「すし 伍水庵」の筒井啓太さんは、まさにそんな意味での“職人”でした。素敵な寿司と店主が迎える、心地よい新店舗へようこそ。

伍水庵外観

伍水庵」は、中央区荒戸で2017年に創業した寿司屋。すでに熱心なファンもいましたが「以前の店はとても狭く、毎回お客様に窮屈な思いをさせるのが申し訳なくて」と筒井さん。「せっかくの寿司をもっと良い環境で楽しんでほしいとの想いもあって、開業8年目に移転を決めました」。そう、今回の移転は、「伍水庵」が次のステージへ進むための“第二章”なのです。

伍水庵店内
伍水庵店内2

その決意を形にした新店舗は、期待以上の空間でした。実面積以上のゆとりを持つ心地よさ。素朴な美が際立つ内装。建築関係者を唸らせる、贅沢に使った天然建材。10年後、20年後にはより味わい深い表情になりそうです。「お客様と一緒に年齢を重ねる店にしたくて」と目を細める筒井さん。

また、寿司屋には珍しい待合ベンチも2脚あり、これは「悪天候時にお客様を外でお待たせしないように」との配慮だとか。他にも、板場と客席のほどよい距離感、京都の専門家が調光した優しい照明、スピーカーの音が反響しても耳が痛くならない壁面設計と、緻密に計算された仕掛けの数々に感嘆が漏れました。まさに寿司屋の鏡のような“力作”で、移転に賭けた筒井さんの気持ちが随所に感じられました。

伍水庵店主

この秀麗な店を、奥様の由佳さんと営むのは46歳の筒井さん。北九州に生まれ、高知県で20年近く腕を磨いた料理人です。一時は人気和食居酒屋の店主も務めましたが、若き日の夢だった寿司職人を諦めきれず一念発起。福岡に戻ると、寝る間を惜しんで独学に没頭します。「僕に寿司屋の修業経験はありません。しかし魚の扱いは心得てますし、誰より勉強し、何度も失敗を重ねた経験は確実に僕の血肉になっています」。
その努力を間近で見てきた由佳さんも、良き理解者として大将を支えます。「私たちが一番大切にするのは誠実さ。常に“お客様や仕事に嘘をついていないか?”と自問してますね」。真面目で純粋な価値観を共に持つ、息の合ったご夫婦なのです。

伍水庵つまみ1
伍水庵つまみ2
伍水庵茶碗蒸し

ではお待ちかね、つまみ3品から始まる「おまかせコース」(27,500円)をいただきましょう。1品目は寿司屋の定番、青魚とガリの海苔巻きです。青魚のイワシは臭みが皆無で、入念な仕込みが窺えます。
3品目の対馬産赤むつのうまさも絶品! 軽く炙った珠玉の白身の、言葉にできない感動が口一杯に広がりました。
つまみの後はスペシャリテの一つ、金目鯛の茶碗蒸しが登場。優しい中にも鰹節の旨味がくっきり際立ち、これが日本酒と合うんですよね。

伍水庵カスゴ
伍水庵マグロ
伍水庵コハダ
伍水庵ウニ

そして、ここから大将入魂の寿司13〜14貫がスタート。柳橋連合市場の「天龍」で買い付け、あらゆる技法で最高の状態に整えた天然魚介が楽しめます。
その代表格が、染み入るうまさのカスゴ。これまた丁寧に臭みを抜き、独自の工夫でしっとり仕上げた食感が秀逸です。豊洲のマグロ専門業者から取り寄せる、赤身や中トロの品質も盤石。絶妙な酢加減・塩加減のコハダは、やや甘めで九州人好みの味でした。

これら極上ネタを支えるシャリの存在感も光ります。目利きで名高い城南区の「屋部商店」で選んだ米は、塩を極力使わず、米や酢の旨みが引き立つシャリへと昇華。「夜中にのどが乾かない」「帰宅後すぐまた食べたい」と常連にも好評の、クセになる食味が魅力です。
驚いたのは、完成後のシャリは必ず複数の陶器のおひつに分け、必要に応じて順番に使うこと。これにより変化しやすい温度と水分を管理でき、最後まで同品質のシャリが味わえるそうです。

伍水庵干瓢巻き
伍水庵デザート

以上はほんの一例ですが、何一つおろそかにせず、限界まで仕事に精魂込める筒井さん。その熱量が生みだすのは、綺麗で優しく、クリアな余韻の寿司でした。食材に敬意を払い、引き算を重ねてつむぐうまさには、どこか懐かしささえ感じます。
寿司の末尾を飾るかんぴょう巻や、由佳さん担当のデザートのチーズケーキも見事な出来。心尽くしのもてなしが彩る、ほっこりする時間はこうして幕を閉じました。

伍水庵落款

移転後もなお、着実にファンの輪を広げる「伍水庵」。その磁力の秘密は、間違いなく筒井夫妻の真摯さ、優しさにあります。一切の妥協なく理想の味に挑む“職人”の大将。繊細な気遣いで接客の高みを目指す女将。二人が起こす幸せな化学反応が、人々を自然と引き寄せるのでしょう。
「今の僕らがあるのは、天龍さんや屋部商店さんなど、ずっと支えてくれた方たちのおかげ。それらのご縁を大事にし、感謝を忘れず今後も仕事に励みます」──無垢な少年がそのまま成長したような、筒井さんの真っ直ぐな言葉と眼差しがとても印象的でした。

この記事は積水ハウス グランドメゾンの提供でお届けしました。

店舗名

すし 伍水庵(店舗写真

ジャンル

  • 寿司

住所

福岡市中央区舞鶴2-8-23 ルピエ舞鶴1F

電話番号

092-725-3575完全予約制

営業時間

12:00一斉スタート/18:30一斉スタート

定休日

日・月(ランチは水・土曜のみ)

席数

  • カウンター9席

個室

なし

メニュー

おまかせコース27500円(サービス料込み)

喫煙について

禁煙
  • ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
  • ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
  • ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
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  • ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

記事に関する諸注意

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