初体験の一本に出会えるかも！　情熱とこだわりの創作串揚げ

少し前から気になっていた、赤坂の「串揚酒坊 檸檬」。清潔感ある店構えやズラリと並んだ提灯の光が、やけに「何かありそう」なオーラを放っているんですよね。先日ようやく足を運んだのですが、結論から言うと予感的中！　そこに待っていたのは、まさしく“檸檬”のごとくフレッシュな串揚げ体験でした。

オープンは2020年10月。ビル地下１階の店舗には、そこはかとない隠れ家感が漂います。暖簾をくぐると右手にテーブル席があり、その先にはカウンター席と個室が２部屋。シンプル＆モダンな店内はデートにも似合いそうな艶やかさです。

カウンターに陣取って、まずはメニューをチェック。なるほど、ここの串揚げは「創作」がウリのようです。とくにコンフィ、ボロニアハム、モッツァレラといった洋風の単語が目を引きますが、どんなユニークな串揚げに結実するのでしょう。

さてお手並み拝見……と構えていたら、のっけから強烈な先制パンチが。パルミジャーノを雪のように振った「熱々カルボナーラ トリュフ風味」です。箸で割ると自家製ベーコンと濃厚チーズクリームがとろ～り。そこへトリュフオイルが加わると、たちまち高級アラカルトが目の前に現れました。不意を突くうまさにガツンとやられ、次の１本への期待も急上昇！

それに応えてくれたのが、チーズ、大葉、豚バラを重ね、ゴージャスな食味を表現した「豚ミルフィーユ 藻塩レモン」です。優しい歯触りのパン粉も印象的で、これは東京の名店でも愛用される『中屋パン粉工場』製の高級品とか。串も米油でカラッと揚げており、胃への負担が軽いのも「檸檬」の魅力でしょう。

続いて登場した「牛ヒレ」は夢心地の弾力に驚いた一本。素材は草だけで育ったニュージーランドの放牧牛で、デミグラスもこのために仕込んだ本格ソース。これまた“うまい串揚げ”への意欲が伝わる非凡な一皿でした。

「僕らが目指すのは、今までにないスタイルの串揚げです」と明言するのは店長の渡邊知さん。その実現のため、佐賀県みやき町にある姉妹店の人気イタリアン「marugo & eat（マルゴ・アンド・イート）」のシェフ（現在は独立）と知恵を絞りメニュー開発に取り組みました。ちなみにシェフは福岡イタリアン屈指の名店で、今はなき「サーラ・カリーナ」の出身！　完成度の高さも納得です。

この６品も当然ながらツワモノ揃い。（写真左から）「燻製アジ 塩かぼす」は香りと酸味のマッチングが忘れ難い逸品です。刺身用イワシの極上食感を、香味野菜が際立たせる「イワシ さっぱり香味ソース」は個人的に贔屓の一本。甘い味噌が隠れたニューカレドニア産「天使の海老」はまさしく昇天ものの美味でした。「半熟うずらの卵」と「とうもろこしバター醤油」は口で弾ける素材の旨みと汁気がたまりません。「鶏胸肉 黒七味」は柔らかな胸身と、ピリッとほろ苦い辛みのコントラストが鮮烈でした。

焼鳥屋優勢の串もの業界（？）ではありますが、創意・仕込み・こだわり素材の３拍子が揃った「檸檬」は、あらためて串揚げの醍醐味や可能性を感じる楽しい一軒でした。センスの良い串揚げはもちろん、ワインも充実しているので洒落たバル感覚で使うのも良さそうですね。

〆はランチタイムでも好評の「中華そば」を注文。甘めに仕上げた醤油ベースのスープには鶏節のコクが潜み、確かな飲みごたえを感じます。店内で手揉みした「製麺屋 慶史」の縮れ麺との相性も抜群。単品は700円ですが、ランチタイムは300円追加で頼める自家製シウマイ＋鶏唐揚＋麦ごはんのセットがオススメです。

最後に、２月から新登場のお値打ちランチをご紹介。スープ・漬物付で1,300円の「海鮮丼」は、本マグロの中トロ、イクラ、赤海老など、長浜の鮮魚店が選りすぐった上質ネタの盛り合わせです。「刺身よりも厚めに切っています」と渡邊さん。「ディナーでの注文もOKですよ！（1,800円）」。