福岡グルメトリビア〜ン【6】
「パスタ」という言葉さえ認知されてない70年代 「生パスタ」に挑戦した住宅街の専門店
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ライタークイッターズ福岡(チカラ)
原
パスタフレスカ 英(はな)
クイッターズ福岡(チカラ)
ライターが自腹で本気にレビューする福岡のレストラン情報サイトの執筆チーム。福岡を拠点に活動するライター集団「チカラ」のメンバーが中心になって、2016年から記事を寄稿。http://quitters.jp/
〝福岡で初の生パスタ専門店〟と言われているのは、早良区原にある「パスタフレスカ 英」だ。この店が生まれたきっかけは、創業者・高江陽一氏(現・会長)が1977年、東京で開催された青海国際見本市でイタリア製の最新パスタマシンと出会ったことにある。当時は、「パスタ」という言葉すら珍しく、「スパゲティ」が一般的な時代。東京で「あるでん亭」や「壁の穴」「五右衛門」などのパスタ専門店が続々と開業していた頃だった。
東京青海国際見本市で買い付けたイタリアパルミジアーノ社製パスタマシン(左)。右の2号機・新型機とともに現役で稼働している。
陽一さんは、約120万円を投じてイタリアパルミジアーノ社製のパスタマシンを購入。1978年には、早良区原で妻・英鯉さんと「生スパゲティの店 英」をスタートさせた。ラーメンが一杯約200円の時代、パスタは1皿500円からに設定した。
「パスタ料理のレシピは概ね父と母の独学です。父は有名店を食べ歩き、母は情報誌や料理番組を参考に試行錯誤を繰り返していました」
右が創業者の高江陽一さん、左が妻の英鯉さん。
そう話すのは、長男であり二代目の高江秀樹さん。開業当初は、100%のデュラムセモリナ粉(硬質小麦)や良質なオリーブオイルは値段が高く、産地や輸入量が不安定で手に入りにくかった。品質が不安定な上に数も多くは出回っておらず、麺には日本の製粉会社がブレンドしていた「パスタミックス」という粉を使っていたこともあるという。
レシピは今も変わらず、粉と卵と水のみ。材料をパスタマシンに入れ生地を練り、ダイス(口金)を変えることによりさまざまな形状で絞り出す。1~2日間寝かした後、注文が入ってから茹で上げ具材やソースと絡めたら完成だ。乾麺の茹で置きを再加熱してナポリタンかミートソースで食べることが一般的だった時代に、「茹で立て」「歯切れのいい」本格的な生パスタを提供した。
一方で「生スパゲティの店 英」の周辺は田んぼや町工場、倉庫ばかり。〝生〟のスパゲティが認知されておらず、場所も中心部から離れていたため当初は客足が伸び悩んでいた。やむをえずサイドメニューとしてカレーライスを提供し、夜はスナック営業をして賄う日が続いたという。
あさり、えび、いかのトマトソースパスタ「地中海風スパゲティ」(1,400円)。 麺だけで1人前140g、ボリュームにも大満足だ。
転機をもたらしたのは、当時創刊から間もなかった「シティ情報ふくおか」などのメディア取材だ。〝福岡で初の生パスタ専門店〟として取り上げられたことをきっかけに、「生パスタ」がクチコミで話題になった。これに80年代の全国的なイタメシブームが重なり、客足が増え始め徐々に店が手狭になったので、1989年に駐車場を併設した現店舗に移転。店名も「パスタフレスカ 英」に改名した。
1999年には事務所として使っていた2階部分を改装し、席数を増やすことで快適性を向上させようとする。ところが、バブル崩壊で客数が減ってしまい、秀樹さんが東京から帰福した2001年頃には、赤字ギリギリの状況だったと当時を振り返る。
「親父から代替わりしたものの、飲食業の素人で当時はお客様を恐れていたんですよね。値上げもお客さんが離れていきそうでなかなかできなくて。そんな時期でも、毎週決まって通ってくださる地元の方や来店される度に同じメニューを食べてくださる常連さんがいたんです」
「えびとベーコンのスパゲティ エッグクリームソース」(1.375円)。トマトソースとワインソースは1,265円。
自分に何ができるのか。「パスタフレスカ 英」の良さとは何か。秀樹さんは飲食店経営とより真剣に向き合い始める。手打ち蕎麦や寿司のような職人技を見せるというよりは、温かみがあって、ほんのり懐かしさを感じる味わい。イタリア語で言えば「マンマ ミーアの味」だ。秀樹さんは、両親の思いを受け継ぎ「英の生パスタ」の魅力を今まで通りに届けていていくことを心に決めた。
まずは来店から退店まで、接客オペレーションを改革した。時代とともに接客業務が無人化されるなか、「パスタフレスカ 英」には今も呼び鈴一つなく、お客とのアイコンタクトを欠かさない。一組ずつ的確に接客するため、ピーク時の席の誘導や料理の提供のタイミングに気を配った。また、何度訪問しても飽きずに食事を楽しめるように、季節に合わせた新メニューも増やしている。
2021年2月、「パスタフレスカ 英」は店舗の老朽化と慢性的な駐車場不足を解消するために、1.5kmほど離れたイオン原店南棟に移転した。2019年には通算3台目となるパスタマシンの新型機も購入した。
「40年以上営業していると、もはや地元のランドマークになってしまっていて。これからも変わらずに続けていくことに責任を感じちゃっています」
福岡で最高の「生パスタ」を食べさせる店を目指して、秀樹さんはさらなる高みを追い求める。
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店舗名
パスタフレスカ 英(はな)(店舗写真)
ジャンル
- イタリア料理
住所
福岡県福岡市早良区原6丁目27−52 パスタフレスカ 英
電話番号
営業時間
11:00〜OS20:00
定休日
木曜
メニュー
あさり(トマトソース・ワインソース・和風ソース)1,210円、スパゲティボロネーゼ1,155円、地中海風スパゲティ1,540円、玄海灘風スパゲティ1,540円、ローマ風フェトチーネ1,375円、アラビアータのリガトーニ1,155円、えびグラタン1,815円、ラザニア1,815円
喫煙について
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- ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
- ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
- ※OSはオーダーストップの略です。
- ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
- ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
- ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。
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