「かなで」の新たな挑戦。豚骨、醤油、そして最新店は煮干しラーメン

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ライター上村敏行

カメラマン上村敏行

中華そば かなで〜煮干編〜

多の津

中華そば かなで〜煮干編〜

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オープンラッシュに沸く福岡のラーメン業界の中でも注目株、3月24日にデビューした多の津「中華そば かなで〜煮干編〜」に行ってきました。
同店は、春日市「かなで食堂」の系列で、東比恵「中華そば かなで」に次ぐ3店舗目となります。濃厚豚骨、中華そば(鶏醤油ラーメン)ときて今回は“煮干し”。
新店のオープンに合わせ既存の「中華そば かなで」の屋号には「鶏出汁編」を加えました。1つの店でメニューを増やすのではなく、ブランドを細分化しての出店には何かしらの意図、そして絶対的な味への自信を感じます。

中華そば かなで〜煮干編〜

店の紹介といく前に、僕が肌で感じてきた福岡の煮干しラーメン沿革を記しておきます。
煮干しは味噌汁など日常的に口にする食材でありますから、ラーメンにおいても日本人の舌に合うなじみやすい味です(もちろん苦手な方もいらっしゃいますが)。福岡のラーメン店でもかねてより魚介系と掲げるラーメンやつけ麺で煮干しは使われてきました。
あくまで“魚介系”の中の一つの要素であった脇役的な煮干しを全面に出したのは約6年前、高宮通りにあった「ジョンパン(前身はラーメン元次)」の「ニボ神(ニボゴッド)」というメニューです。その後、福岡空港「ラーメン滑走路」に東京の人気店「凪」が出店したことにより煮干しラーメンは福岡でも広く知られるようになりました。
この2店は現在閉店していますが、昨今平尾「麺や 鱗道」、北九州「あんとめん」など“煮干し推し”の店も少しずつ増えています。
また、ひと言で“煮干し”といっても、“THE煮干し”のビジュアルのカタクチイワシだけでなく種類は多岐にわたることも付け加えておきます。イワシだけでなくアゴやタイ、タコ、イカの乾物も煮干しのカテゴリ。さらには、すっきり清湯や、力強いドロなどスープの濃淡でも作り手の個性が出ます。

つまり何が言いたいのかというと、
“煮干しラーメンも奥が深い!”ということです。

さてさて、今回の主役「中華そば かなで〜煮干編〜」に話を戻しましょう。
場所は福岡東区の流通センター界隈。立ち並ぶ大手企業の社員、トラックドライバーもターゲットにしたランチスポットが集まる一角、ビル2階にオープンしました。

中華そば かなで〜煮干編〜

メニューは“煮干し特化”の「淡麗煮干そば」(780円)、「麻辣担々麺」(830円)、「煮干まぜそば」(830円)の3本柱。

中華そば かなで〜煮干編〜

僕自身、店主の松尾龍太郎さんとは、2011年に濃厚豚骨店「かなで食堂」ができてからの付き合い。松尾さんは、これまで社員を連れて東京食べ歩きも定期的に行うなど、ラーメンだけでなく常に“最先端の美味”にアンテナを張っている方であります。
「乾物の中でも旨味成分イノシン酸量の多い煮干しは、僕たちのラーメンの根幹である無化調ラーメンを表現しやすい食材として前々から着目していました。さまざまな煮干しラーメンを既存店の限定麺として創作するなかで、主役を張れるクオリティのものがようやく完成。豚骨、鶏、煮干しと各店舗で棲み分けをしているのは、もちろんそれぞれを極めたいという思いもありますが、原材料の仕入れ値段も揺れ、流行も移り変わる昨今、会社としてリスクヘッジするという狙いもあります」と松尾さん。

「淡麗煮干そば」(780円)は、長崎県産のセグロ、瀬戸内産のシロクチ(共にカタクチイワシの部類)など4種の煮干しを大量に使用。スープに動物系素材は入っていません。煮干し、干しシイタケ、昆布を煮詰めずにじっくりと、香りが立つように毎朝ダシを引いていきます。

中華そば かなで〜煮干編〜

醤油ダレには愛知県の白醤油を採用。
煮干し油と共に丼に張り、手鍋で温めた煮干しダシを張ります。

スープを飲むと、淡麗系の優しさの中で一口目から感じる“ニボっぷり”。程よい塩気、
甘さと共に、煮干しの旨味が舌をたゆたいます。また、煮干し油はニボ感を強調するだけでなく、スープに蓋をするように熱々にキープする役割もあるんですね。

中華そば かなで〜煮干編〜

そして、麺はコシが際立つ自家製中加水麺。春日市の本店にある製麺室で作っています。煮干し風味と共に、熊本県産の強力粉「南のめぐみ」のいい香りも鼻に抜けます。

中華そば かなで〜煮干編〜

具材は注文後に炙る低温調理の豚バラチャーシューにシソや茎ワカメ。真ん中の赤いものはドライトマトです。
チャーシューはバーナーで炙ります。低温調理した炙りのチャーシューは最近よく見かけますが、個人的にはドライトマトをのせたのが大正解だと思っています。トマトに関しても店内で仕込んだもので、甘味と酸味、そして食感も心地よいアクセントを加えてくれます。

中華そば かなで〜煮干編〜

さらには
「どろ煮干ZERO」(1,000円)も大好きな味でした。
こちらは土・日曜限定のメニューですが、先の「淡麗煮干そば」が、澄んだあっさり系であるのに対し、鶏白湯✖️煮干しの粘度大“どろり”としたスープ。
圧巻の重厚感もそうですが、驚きべきは“ZERO”というメニュー名通り、調味料はもとより、元ダレ(醤油ダレ)さえも加えていないということです。

中華そば かなで〜煮干編〜

「煮干し自体がもつ塩分、旨味、エグミも含めて楽しむラーメンです。大量の煮干しを鶏白湯と合わせハンドミキサーを使って混ぜ込んでいきます。それを丁寧に濾したのがこのスープ」と、松尾さん。

砕いた煮干しの粒感、独特の苦味もしっかりで“ニボッぷりMAX”!
大の煮干し好き。そしてカルシウムをしっかりチャージしたい方は、この“どろ煮干”をおすすめいたします。

卓上に濃縮プーアル茶が用意されているのも嬉しいポイントです。
コップに注ぎ、好みの濃さに水で薄めて飲むと、後味がさっぱりします。

系列3店舗で、“ラーメンは自由!”を体現。そして選べる楽しさを打ち出す「かなで」。
今度の動向にも注目したいと思います。

店舗名

中華そば かなで〜煮干編〜(店舗写真

ジャンル

  • ラーメン

住所

福岡市東区多の津4-8-7 サークレイトビル2F

電話番号

092-402-2872

営業時間

11:00〜OS15:40/17:00〜OS21:10

定休日

不定

席数

  • カウンター6席
  • テーブル12席

メニュー

淡麗し煮干そば780円、麻辣担々麺830円、煮干まぜそば870円、どろ煮干ZERO1000円(土日限定)

喫煙について

禁煙
  • ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
  • ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
  • ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
  • ※OSはオーダーストップの略です。
  • ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

記事に関する諸注意

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