コーヒー片手にパクパク食べたい。自分のための“イビツ”な焼菓子

中洲川端駅から歩いて2分ほど。人通りの少ない路地に今春、登場したのが「焼菓子屋イビツ」です。ロゴマークは、店主の友人であり多くのファンがいる菓子店「OYATUYA.U」が手掛けたとあって、オープン当初からスイーツファンの注目を集めていました。

雑居ビル1階の路面店とはいえ、目印になるような看板やのれんはなく、知らなければ通り過ぎてしまいそう。引き戸を開けて店内に入ると、こちらもまた飾りっ気のないシンプルな店内に、焼き菓子が整然と並びます。筒状の容器に入るクッキーやショートブレッドのほか、中央の台にはパウンドケーキも数種類。どれにしようか目移りしてしまいます。

「コーヒーを淹れて、ソファに座って、パクパク食べる。食べて幸せと思える“自分”のためのお菓子をイメージしています」と話してくれたのは、店頭に立つ廣幡舞子さんです。

廣幡さんのおすすめは、「ディアマンクッキー（チョコレート）」（820円）。一口食べた瞬間、バターとココアを感じる逸品で、ザクッとした軽い歯応えが特徴です。特に、コーヒーとの相性は抜群！　廣幡さんも「はじめて食べたとき、コーヒーを淹れていなかったことを後悔しました」と笑います。

一番人気は「ショートブレッド」（580円・写真中央）。バターの芳醇な香りとコクがありながらも、後味は重た過ぎないシンプルで飽きがこないクッキーです。厚みのある生地はザクザクした食感。一口サイズなので、食べ始めると手が止まりません。

チョコレート好きなら、「ココアホワイトチョコチップクッキー」（680円・写真左）もおすすめです。ほろっとした食感に、チョコの甘味をしっかり感じる濃厚な味。時折、ガリッと音を立てるホワイトチョコがアクセントになっています。

また、乳製品にアレルギーがある方にも人気なのが「抹茶クッキー」（650円・写真右）です。バターではなく太白胡麻油を使用し、ベーキングパウダーは添加物不使用のアルミフリーを採用。甘さとほろ苦さが絶妙なバランスで、食べ終わった後も抹茶の爽やかな香りが余韻として残る大人の味です。

店名の「イビツ」は、一つひとつ手作りするからこそできてしまう不揃いさのこと。「“イビツ”って、ネガティブなイメージですよね。でも、そうじゃない。“イビツ”だからこそ、一つひとつおいしい発見、そして面白さがあると思うんです」。

また、手作りだからこそ、日々、味のアップデートを繰り返しているそうです。例えば、この日店頭に並んでいた「ラムレーズンバターケーキ」（280円）。ラムレーズン好きの方の声を聞いて、発売当初よりしっかりとラムを効かせ、粉を控えめにしてしっとりと焼き上げるようになりました。「同じ材料でも、素材を混ぜるタイミングや生地の厚さ、焼く温度、オーブンを開けるタイミングなどで味が全く変わってくるんです」。材料へのこだわりだけでなく、技術を磨くことに重きを置いて、「おいしさ」を追求しています。

「余裕がないと、人には優しくできない。エネルギーも出ないですよね。忙しくていっぱいいっぱいな毎日でも、お菓子で満たされて、少しでも余裕を持ってもらえたらうれしいです。そのためにも、お菓子の味だけでなく、食べるときの楽しみ方まで一緒に伝えていきたいですね」と廣幡さん。

これまでは、自宅で食べるお菓子を想定していましたが、需要が高かったことから、今秋にはギフトボックスも登場予定。日々のおやつに、ちょっとした手土産にぴったりの「イビツ」のお菓子。丁寧に作られた焼菓子が、ふっと心ほぐれるひとときを届けてくれます。