路地裏の名店【18】

東比恵の川沿いで出合った、初めてづくしのイタリアン!

公開日

最終更新日

ライター諫山力

カメラマン諫山力

アンチュアソーセージ

東比恵

anciùa(アンチュア)

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東比恵の御笠川沿いになかなか尖った店がある。そんな噂を耳にして訪れたのが「anciùa(アンチュア)」です。地下鉄東比恵駅から、まさかここにレストランがあるとは思えない人通りもまばらな川沿いの道を歩くこと約4分。ありました! いかにも隠れ家的で、おしゃれな雰囲気です。ここなら博多駅の筑紫口からも歩いて来れると思います。

アンチュア外観

オーナーシェフの瀬口雄高さんは「静かな環境で、コバコで。その条件に合致したのがここでした。ただ、店を開いてみると想像以上に人通りがなくて」と苦笑い。ただ、そんな立地かつ前日までに要予約のスタイルだからこそ、特別感があるというもの。同店唯一のコースである、季節替りのコース(11,000円)をいただいてきました。

アンチュア店内

「anciùa」をあえて料理のジャンルで分けるならイタリアンです。ただ、いわゆるトリッパのトマト煮込み、アマトリチャーナ、アクアパッツァといったわかりやすい料理ではなく、供されるのは「あおさのりとアンチョビのクロワッサン」「ワカサギをいなご豆の生地で巻いて」などなど、説明されても味のイメージが湧きづらい一品ばかり。瀬口さんは「言葉ではわからなくても、食べてみると『なるほど』という料理を作っていきたい」と話します。

アンチュア クロワッサン

1品目は「あおさのりとアンチョビの焼きたてクロワッサン」。見た目からはほぼわかりませんが、クロワッサン生地にあおさのりと店名の由来でもあるアンチョビを巻いて焼いているんです。食べてみるとしっかりあおさのりの風味が香り、アンチョビの旨味が追いかけてきます。クロワッサンだけに発酵バターのリッチな風味もしっかり感じますが、最後まで残るのはアンチョビとあおさのりの余韻。これはまさにパンというより立派な前菜です。

アンチュア アジ燻製タルト

2品目は「オリーブ生地のタルト 燻製アジとフレッシュチーズ」です。アジは冷燻されており、ほぼ刺身ですがスモークの香りがしっかり。そこに濃厚なチーズの旨味、風味、軽く火を入れた高知県産のフルーツトマトの凝縮した甘味と酸味が加わり、口の中で味わいが完成していきます。タルト生地もブラックオリーブを練り込んでおり、いくつもの味わいをうまくまとめてくれている印象です。

アンチュアゴルゴンゾーラムース

3品目は「ゴルゴンゾーラチーズのムース リンゴのソース 季節のフルーツ ゆずのメレンゲ」。見た目はデザートのようです。ムースはしっかりゴルゴンゾーラチーズのクセを感じるのですが、自家製のリンゴのソースの香りがいい塩梅でアクセントをプラスし、チーズのクセを包み込んでいます。この日の季節のフルーツはキンカンとホオズキ。ゆずのメレンゲも相まって、さっぱり感をプラス。ゴルゴンゾーラチーズが苦手な人でも、この組み合わせなら食べられるというお客さんも多いそうですよ。

アンチュア イカのソーセージ

4品目は「ミズイカのソーセージ 季節の野菜をイカのソースで」。ミズイカのソーセージという時点で、頭の中には「?」がいっぱいでしたが、食べてみると、なるほど、これはまさにイカのソーセージ! イタリア料理でいうところのサルシッチャですが、豚肉の代わりにミズイカを使っているのはもちろん、小さくダイス状にカットしたイカのコリコリとした食感も楽しめます。黒い色はイカスミも練り込んでいるからで、奥深い旨味が口いっぱいに広がります。イカのソースをまとった野菜もすごくおいしいですね。

アンチュアワカサギ

5品目は「ワカサギをいなご豆の生地、ほろ苦い葉物野菜で巻いて」。瀬口さんは「ワカサギの内蔵、揚げ焼きしたいなご豆の生地、葉物野菜、これら3つに共通するのがほのかな苦味。こんなイタリア料理はないので、完全にオリジナルですね」と笑います。いただいてみると食感、味わいともに初体験なのですが、ワカサギの旨味がじんわりと口の中に広がっていき、バランスの良さに感動しました。瀬口さんが作る料理はどれも斬新かつエッヂが効いているのですが、食べてみるとどこか優しさに溢れています。

アンチュア シェフ

「初めて食べる料理、ここでしか味わえない一品、そして食べることを楽しむという体験を大切にしていますが、一番気を付けているのが“ちゃんとおいしいか”という点。常にそこは意識しながら新しいレシピを作っていますね」と話す瀬口さん。その言葉通り、どの料理も個性的なのですが、食べてみると不思議と落ち着く味わいで、バランスの良さを随所に感じます。食材の組み合わせによってはイタリア料理らしいシンプルさも大切にしているそうで、瀬口さんが作るそんな料理も食べてみたくなりました。

そばのようにしなやかに味わえる手打ちパスタ「生のホタルイカとフキノトウのタリオリーニ」、この日のメインディッシュ「放牧牛のロースト」、最後のデザートまでしっかりいただき大満足。一つ一つの料理に妥協することなく、オリジナリティを大切にする「anciùa」。ただお腹いっぱいになるだけじゃなく、料理に感動したいという人にはうってつけの隠れた名店。瀬口さん1人で調理からサービスまで行っているため、ワインを飲みながらゆっくり食事を楽しみたいという人に特におすすめです。

店舗名

anciùa(アンチュア)(店舗写真

ジャンル

  • イタリア料理

住所

福岡市博多区東比恵1-3-30 dc2ビル1F

電話番号

092-452-3136

営業時間

18:30一斉スタート(応相談)

定休日

水曜

席数

  • カウンター6席
  • テーブル4席

個室

なし

メニュー

コース11,000円

喫煙について

禁煙
  • ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
  • ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
  • ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
  • ※OSはオーダーストップの略です。
  • ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

記事に関する諸注意

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