生け簀の活魚をその場でさばく、魚が主役のおまかせコース

長浜鮮魚市場にほど近い中央区港は、市場に魚を水揚げする漁船が出入りする博多港に面し、周囲は水産会社の倉庫が建ち並ぶ福岡きってのベイエリア。最近屋台が復活したことで話題になっている界隈の一角で、新鮮な魚を売り物にしているのが「おのころ五合」です。

大将の猪又哲也さんは板前として豊富な経験を積む中で魚の目利きと扱いを熟知。独自の仕入れルートを確立して長崎県平戸市の生月島（いきつきしま）から毎日活魚車で運ばれてくる魚を生け簀で泳がせ、締めたての鮮魚をリーズナブルな価格で食べさせてくれます。
「どんな魚がくるか分からないので、その日入ってきた魚を見ながら献立を考えます」という大将おすすめの「おまかせコース」は5,500円からですが、今回は7,700円のコースをお願いしました。

コースは突き出しの吸物から始まり、とびきり新鮮な刺身が続きます。この日は10kgオーバーのアラとメイチダイ、くじらの鹿の子（アゴ肉）。分厚く引かれた白身はネットリ、モッチリとした食感で、噛むほどに甘味を感じます。希少な高級食材という鹿の子は初めて食べましたが見た目も味も馬刺しを思わせ、生姜醤油でいただきました。

続いて出てきたのは、何と殻に入った生ウニです。宮城県気仙沼産の「北ムラサキ」という品種だそうで、殻を割ったばかりの身から磯の香りが漂い、甘みとともに舌の上でとろけるような食感でした。

この日の焼き物は「うなぎの白焼き」で、国産うなぎの脂を落としながらサッと炙り焼きにしたもの。蒲焼きと違ってシンプルな調理法なだけにうなぎ本来の持ち味がダイレクトに伝わり、塩とワサビだけの味付けは日本酒にもよく合います。

コースの中で唯一の肉料理が、極上の魚介類に負けじと厳選した鹿児島産黒毛和牛のローストビーフ。低温調理でじっくりと火入れした後にサッと炙って香りを立たせ、醤油ベースの甘辛い和風ソースとの相性も抜群です。つけ合わせにはグリーンアスパラとオクラの夏野菜に、珍しい佐賀県産のゴールデンビーツの細切りが添えられ、細部にわたる食材へのこだわりが感じられます。

そしてこの店の名物が、梅酢を使った赤いシャリのにぎり寿司です。この日のネタはマグロのホホ肉、生月のイサキとコチ、松浦産のアジ、車エビの５貫。そこいらの寿司屋では到底食べることのできない豪華なネタの競演に、心から満足することができました。

今回はコースで注文しましたが、メニューにはバリエーション豊かな一品料理がズラリと並び、冬場には名物の「魚のしゃぶしゃぶ」（2人前4,400円）、「ネギマグロ鍋」（1人前2,200円）といった鍋料理も人気です。
カウンターをはじめ、テーブル席や個室もすべてゆっくりとくつろげる掘りごたつ式。普段使いのほか、うまい魚を求めて訪れる来福客をもてなすにも最適な一軒です。