細く揉み込まれた茶葉は緑碧玉のように深い緑色。静かに湯を注げば、清々しい香りがふわりと開きました。旬の果実の瑞々しさを閉じこめた水羊羹は洗練された佇まい。色や香り、味わいに空間、所作までも、隅々まで美しいなぁと心満たされます――。
今回やってきたのは7月4日、赤坂にオープンしたティーサロン「茶料 山科」。季節ごとに選りすぐる日本茶、パティシエによるアシェットデセール(皿盛りのデザート)やデセールコースを楽しめる話題のお店です。
「日本茶の可能性を広げながら、新しい価値や楽しみ方を提案したい」。そんな思いで店を手掛けるのは、茶葉の選定から製茶までを独自に行っている福岡県朝倉市の製茶問屋「製茶所山科」。日本茶インストラクターや日本茶鑑定士としても活躍する山科康也さんが代表を務め、味、香り、生産者や産地、製茶方法までこだわり抜いて仕上げた茶葉だけを取り扱っています。
「リーフセラー」や「製茶室」などを備える朝倉市の本店も素敵ですが、こちら「茶料 山科」も負けず劣らずのかっこよさ! 空間デザインは本店同様、インテリア・プロダクトデザイナーの高須学さん率いる「TGDA(Takasu Gaku Design and Associates)」が担当されています。壁面に使用しているのは、「七山紙漉思考室」に製作を依頼したという茶染めの手漉き和紙。メインカウンターは白セメントと漆喰に茶葉を混ぜ込み、左官職人さんに研ぎ出してもらったものだそう。お茶を愛する想いが空間にも込められています。
さぁ、早速お茶とデセールをいただきましょう。こちらでは、月ごとに変わる日本茶・お菓子・デセールのセット「日本茶とお菓子」(4,000円)が基本メニューとなっています。
まずは日本茶を8種類の中から1つ選び、続いてメインとなるデセールを2種類から1つ選びます。浅蒸煎茶や深蒸煎茶、抹茶や釜炒り茶、アレンジを施した炭酸茶などお茶の種類は多彩で、九州産をはじめとした茶葉の銘柄は合わせるデセールや季節によって変わるそう。プラス1,000円で玉露を選ぶこともできますよ。どれにしようか迷っていると、日本茶インストラクタ−である菅野舜さんがそれぞれのお茶について丁寧に教えてくださいました。
「茶葉本来の青い香りや清涼感を楽しめる」という点に惹かれ、私は「浅蒸煎茶/八女さえみどり」(+500円)をいただくことに。お茶の種類によって1〜2煎、2〜3煎と味わうことができ、浅蒸し煎茶は3煎ほど楽しむことができます。まずは1煎目、湯を入れて蒸らし、静かに注がれたお茶は透明感のある美しい黄緑色。浅蒸しならではの清々しい香りが広がったと思えば、「八女さえみどり」の特徴もしっかりと! まるで玉露かと思うほどの旨味と甘味がありながら後口はすっきり……、なんと心地よい美味しさでしょうか。
お茶をいただいていると、程なくして1品目のお菓子も運ばれてきました。こちらは9月の茶菓子である「和紅茶とクイーンニーナの水羊羹」です。屋久島の和紅茶を白餡と合わせた下段は豊かな香味とコクがあり、上段の瑞々しく甘いクイーンニーナと調和。お茶のほろ苦さや渋味がほんのりと出た2煎目のお茶にもよく合いますね。泡状にした酒粕のソースを少しのせて食べると風味が変化するのも楽しいです。
そして驚くことに、こちらでいただけるデザートはすべて東京・神楽坂の「VERT(ヴェール)」が監修しているそうです。「VERT」は日本茶を織り交ぜたデザートコース専門店で、予約が取れないことでも有名な人気店。「茶料 山科」のカウンターには「VERT」でも腕を磨いた台湾出身のシェフパティシエ、ワン・チシュンさんが立ち、目の前で繊細なデザートを仕上げてくれますよ。
さぁ2品目、9月のアシェットデセールもいただきましょう。こちらは2種類から1つを選ぶことができ、私は「煎茶朝露と無花果のヴァシュラン」をいただきました。フレッシュな「とよみつひめ」の山にスプーンを入れると、器の役割を果たしているほうじ茶と竹炭を混ぜ込んだメレンゲがサクッ! 中からは“天然玉露”とも呼ばれるほどに豊かな甘味のある「知覧特選茶 山の朝露」のアイスクリームがトロリ。国産のバラの花弁で作った自家製ジャムやイチジクのプディングなども重ねられており、高貴な香りと味わいがたまりません。
ちなみに、お茶は1種類プラス1,500円から、アシェットデセールは1品プラス2,000円で追加することもできます。私は気になっていたもう一方のアシェットデセール「抹茶バスクチーズと和梨のパフェ」もいただくことに。茶畑をイメージしたというデザインが何とも素敵です。「食べ進めるほどに発見や驚きがあるように」と、あえて中身が見えないパフェグラスを使っているそうで、ワクワクしながらスプーンを入れました。
“茶畑”の正体は、薄いチュイル、バスクチーズケーキ、「せいめい」の抹茶パウダーでした。チュイルをパキッと割った下には、梨のコンポート、ヒノキのジュレ、「八女おくみどり」のアイスクリーム、小さく角切りにしたフレッシュの梨、ガナッシュなどがとりどりに。バスクチーズやガナッシュの濃厚さに負けないお茶の香りと旨味、ジュワリと広がる梨の瑞々しさが絶妙です。
3煎目のお茶をいただいて、この日のセットは終了。淹れ方、使い方によって変化する香りや味わい、組み合わせの妙……お茶のさまざまな表情に触れることができて大満足のひと時でした。
また、月・土・日・祝日の11:00〜13:00は「お茶と季節のデザートコース」(6,500円・完全予約制)も提供しています。5〜6種類のお茶とコース用のデザート3品を味わえるそうで、次はこちらをいただきたいなぁ。席が少ないので、セット利用の場合も予約して出かけるのがオススメです。(※コース提供の曜日・時間帯・価格は23年10月以降変更の場合あり)
店内には「製茶所山科 赤坂分店」も併設しており、こだわりの茶葉を購入することもできますよ。「なかにわデザインオフィス」が手掛けたパッケージも素敵なので、手土産や贈り物にもきっと喜ばれるはずです。
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店舗名
茶料 山科(さりょう やましな)(店舗写真)
ジャンル
- スイーツ
- カフェ
住所
福岡市中央区赤坂1-5-3 オクターブ赤坂ビル2F
電話番号
営業時間
11:00〜OS19:30
定休日
火、水曜
席数
- カウンター11席
個室
なし
メニュー
日本茶・お菓子・デセールのセット「日本茶とお菓子」4,000円、お茶と季節のデザートコース6,500円(月・土・日・祝の11:00〜13:00・完全予約制)、「製茶所山科」ティーバッグ10包入り972円〜 ※コース提供の曜日・時間帯・価格は23年10月以降変更の場合あり
喫煙について
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- ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
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