川のほとりでピエモンテ料理を!一軒家イタリアンの新星
目の前には清らかな小川と緑が広がり、真っ白な皿の上には力強くも優しい料理の数々が――。
2023年10月20日、那珂川にまた一つ素晴らしいリストランテが誕生しました。
福岡市内から40分ほど車を走らせ着いたのは、豊かな自然に囲まれた那珂川の上流。「中ノ島公園」よりもさらに少し上った先に、今回の目的地「La cucina piemontese da Beppe」はあります。店名に「ラ クッチーナ ピエモンテーゼ」と冠してある通り、ここはピエモンテ料理店。オーナーシェフの寺田翔太さんと奥様の真悠子さんが笑顔で迎えてくれました。
イタリアは地方ごとに個性豊かな郷土料理が育まれている国。寺田シェフはそんな郷土料理、中でもイタリア北西部に位置するピエモンテ州の料理に魅せられた一人です。この道に入った時から「いずれはイタリアで本場の味を学び、自分の店を出したい」と志してきました。薬院の名店「Trattoria Del Cielo(トラットリア・デル・チェーロ)」で7年間みっちりと腕を磨くことでその思いは一層強くなり、2017年に渡伊。ピエモンテ州アスティの南東、ロケッタ・ターナロにある「トラットリア・イ・ボローニャ」で3年間に渡る修業の末、ついに独立を果たしました。2018年には真悠子さんも合流し、2人で現地を食べ歩き、ワイナリーを巡り……と、ピエモンテの文化をめいいっぱい吸収してきたそうです。
白を貴重とした店内は明るい雰囲気で、オープンキッチンからは美味しそうな香りが漂います。まるでシェフの自宅キッチンへお邪魔しているようなワクワク感と居心地の良さ。窓の外には、初夏にホタルが舞う清らかな川と豊かな緑が広がっています。素晴らしい景色を前に“本当にイタリアの田舎町に居るみたい!”と感想を伝えると、寺田さん夫妻は「僕たちがいた村、ロケッタ・ターナロに似た景色に一目惚れしてこの場所に決めたんです」と話します。
メニューはコースのみで、ランチは5,000円と8,000円の2種類。ディナーはランチと共通の8,000円、またはおまかせコース(11,000円〜)を予約できます。今回は5,000円のランチコースをいただきました。最初に「ストゥッツィキーノ」として供されたのは、熟成した生ハムとあんぽ柿。「ストゥッツィキーノ」とは日本で言うところの「お通し」です。さらに、クロスに包みテーブルに置かれたグリッシーニも本場スタイル。セモリナ粉を使ったものとポレンタ粉を使ったピエモンテ風の2種類が用意されています。
続いて「前菜の盛り合わせ」も運ばれてきました。この日登場したのは(左から時計回りに)、那珂川・ふじもり農園の菊芋のロースト「菊芋とフォンティーナチーズ」、「ヴィテッロ トンナート」、イタリア産のトリュフをのせた「ピエモンテ風クロスティーニ」、「パプリカの詰め物」、そして中央はほうれん草やハムで作るピエモンテのお焼き「フリチュリン」。“これぞまさにピエモンテ料理!”といえる惣菜がズラリと並んでいます。
「ヴィテッロ トンナート」は、仔牛のシキンボ(外モモの一部)を使ったローストビーフのようなピエモンテの名物料理だそうで、ケッパーなどを加えたツナのソースが絶妙に合います。「パプリカの詰め物」の中にはアンチョビや茹で卵、ツナで作るムースが包まれており、肉厚でジューシーなパプリカと相まって後を引く美味しさです。
5,000円ランチのパスタは2種類から選べ、私はピエモンテの代表的な詰め物パスタ「アニョロッティ・ダル・プリン」をオーダーしました。注文ごとに伸ばす生地は文字が透けるほどに薄く、焼いた牛や豚の肩肉と香味野菜などで作るリエット状の詰め物を手際よく包んでいきます。茹で上げ、セージ風味のバターソースにサッと絡めて皿に盛り、季節ごとに仕入れる上質なイタリア産のトリュフを客席で削ったら出来上がり。
このパスタ、実は寺田シェフのスペシャリテでもあります。私は渡伊前にも寺田シェフの「アニョロッティ」を食べたことがあるのですが、前よりさらに美味しくなっていて感激! パスタ生地はプルッと儚い食感で、ザラつきのないトリュフの舌触りと香りもたまりません。中から溢れ出す詰め物は力強くも優しく、素朴ながらも洗練されていて、何というか柔剛一体となった絶妙な味わいなんです。
「イタリア料理は技術だけは作れないと言いますが、本当にその通り。感覚を体で覚えるのが大切で、“焼いて水分を抜いてから塩をふる”といった肉の調理法も衝撃を受けた一つです」。寺田シェフがそう言って出してくれたメイン料理は「豚バラ肉の一晩ロースト」。一晩近くかけて仕込んだ逸品は、繊維がホロリと解けながらもパサつきはなく、通常のローストやコンフィとはまた違った食感に驚き。現地の保存食でもある「チポッリーネ・イン・アグロドルチェ」という、甘酸っぱい小タマネギの煮込みをベースにしたソースがまたよく合います。
最後のドルチェは3種類から選べ、私はピエモンテ州の郷土菓子「ボネ」をいただきました。「ボネ」はチョコレート風味のプリンですが、チョコレートは使わずブラックココア、刻んだアマレッティ、卵のみで作るのが本場式です。アマレットとビターなカカオが香る大人の味わいで、これも美味し〜。
食後は那珂川市の「自家焙煎珈琲専門店 かほり」の豆を挽いて入れるコーヒーやエスプレッソ、ハーブティーを選べ、「バーチ・ディ・ダーマ」をはじめとした3種の自家製小菓子も美味。また、寺田夫妻が現地でお世話になったというワイナリー「Braida(ブライダ)」のバルベーラワインなど、素晴らしいワインもたくさん揃っているのでワイン好きの方は要チェックですよ。
ちなみに、店名は寺田夫妻がお世話になった友人で、修業先「トラットリア・イ・ボローニャ」の“看板男”ベッペさんの名前に由来するそう。
「ベッペは温かくてサービス精神旺盛な男。彼の周りには常に人が集まり、みんなに愛されていました。この店をそんな存在にしたくて」と寺田さんははにかみます。毎日食べても飽きない、食べるほど好きになる……そんなピエモンテの料理や食文化を、ぜひ体験してみてくださいね。
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店舗名
La cucina piemontese da Beppe(ラ クッチーナ ピエモンテーゼ ダ ベッペ)(店舗写真)
ジャンル
- イタリア料理
住所
福岡県那珂川市市ノ瀬1144−8 Beppe【 La Cucina Piemontese da Beppe】
電話番号
092-284-9771 (完全予約制)
営業時間
11:30〜OS14:00/17:30〜入店20:00
定休日
不定
席数
- テーブル12席
個室
なし
メニュー
ランチコース5,000円・8,000円、ディナーコース8,000円、おまかせコース11,000円〜、ワイン1杯800円〜、ボトル4,000円〜
喫煙について
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- ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
- ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
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- ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
- ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。
記事に関する諸注意
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