水炊きとはひと味違う、天草大王の「とりなべ」がたまらない

「長崎さん！　2年くらいご無沙汰してましたが、お元気ですか？今日は忙しそうですね。」
「そうなんです、実は最近私が仕込みもすべてやってるんですよ。」
ここ「とりなべマルニ」では熊本県の地鶏「天草大王」の水炊きを食べることができる。寒くなってくると、鍋を食べたくなるのはみんな同じようで、この日は予約で満席。

博多の町で愛されてきた伝統ある水炊きを、ずっと作り続けていきたいとの思いで、長崎啓子さん（写真：私の隣）とご主人が2010年にこの店を始めた。3年前からは長崎さんが店主となり、男性スタッフが卒業してからは、自ら１羽３～４kgもある天草大王の丸鶏(中抜き)をさばいて、12時間ほど煮込む作業を行っている。

ここでは店で提供する水炊きを「とりなべ」と表現している。これは一般的な水炊きとはひと味違うからだそう。「”水炊き”はスープ、鶏、野菜と別々に味わっていくのに対し、”とりなべ”は、まずつくねを食べた後、旨味を出すために、肉も野菜もすべて一緒に入れて炊くんです。わかりやすく言えば、“水炊きのちゃんこ鍋”かな」と長崎さん。なるほど！

県外からの来客があり、水炊きが食べたい！　とリクエストされたら、普通に水炊きの店に連れていくのも面白くないので、他とはひと味違った水炊きが味わえるこの店に連れてくることが多い。スタッフが目の前で鍋を調理してくれるのもおもてなし感があるし、手際よくつくねを鍋に落とす職人技はみんなに大好評だ。

鍋の前に絶対食べてほしいのは、一品料理の「地鶏お刺身盛合せ」。他ではなかなか食べられない天草大王の鶏刺しは、しっとりしていると同時に、ブリブリ感もある。この日はササミ、砂ズリ、モモのたたき、白レバー、レバー、ハツ。種類も豊富で、特にレバーやハツは絶品。女将の長崎さんが仕込みをすべてやるようになってからメニュー数を減らしているとのことだが、この刺身の盛り合わせは引き続き食べられるので嬉しい。

「とりなべ」のスープは鶏の風味を生かすため、ネギ以外の香味野菜は一切使用せず、天草大王の鶏ガラを長時間煮出した鶏の旨味のみ。深いコクがあり濃厚なので、ポン酢などにつけずにそのままいただける。

まずはつくねからいただくのだが、スタッフが手慣れた手つきでくるくると丸く成形しながら鍋に入れていく職人技はおみごと！　毎回じっと見入ってしまうね。ナンコツやネギが入ったつくねはプリプリでほどよい歯ごたえがたまらない。
天草大王のモモ肉はほどよい弾力があり、柔らかくてジューシー！　食べ応えがある。

しゃぶしゃぶして食べる胸肉は、柔らかくてしっとりしている。ここで橙のポン酢を使って味変してもOK。爽やかな酸味でさらに箸がすすむよ。

〆は、和そば、中華麺、雑炊の３つから選べるが、「和そば」がオススメ。最後にのせるとろろ昆布でさらに旨味がアップ。お腹がいっぱいなのにペロッとたいらげてしまうから不思議だ。

天草大王をいろいろな食べ方で楽しませてくれるので、大満足すること間違いなし。しかも手間のかかった「とりなべ」が1人前2,200円（〆の麺込み）という価格も嬉しすぎる。
ちなみに「とりすき」(2,200円)というメニューもあるが、これは「とりなべ」に割下を加えたもの。

大人気店なので、事前の予約は必須ですよ。特にこの時期は早めの予約がオススメです。あぁ～、これを書いていたらまた食べたくなってきた。