庶民的な料理ながら、ちょっとした贅沢感のある「とんかつ」。もともとは明治時代に考案されたといわれる和製洋食の「豚カツレツ」が語源ですが、今では和食を代表する料理として定着しています。筆者はこの記事を書くにあたり、UMAGAでも「とんかつ」が和食のジャンルになっていることに初めて気がつきました(笑)。
そんな「とんかつ」を、フレンチ風コースのメイン料理として提供しているのが「糀ナチュレ」です。和食から洋食への先祖返りともいうべきコースがどんなものか興味を持ちながら、警固へと赴きました。
店は警固本通りから城南線に向かう通りの角にある「警固ランドマークタワー1」の1階。余談ですが、ここは以前「オークビルⅡ」という名前で、かつて「ジョルジュ・マルソー」の前身である「ビストロ炎」、「レストランカズ」の前身「カズキッチン」、「料理屋よしかわ」といった名店が入っていたビルで、今も人気の定食屋「いっかく食堂本店」があります。他にも何軒か好きな店があり、筆者も足繁く通っていました。
警固小学校側にある「糀ナチュレ」は、高い天井下のカウンター席の正面に観葉植物がライトアップされ、どことなくエキゾチックな雰囲気です。8人掛けの大テーブルもある広い店内を1人で切り盛りするのは、オーナーシェフの伊藤貴志さん。10代の頃からフレンチや和食の店で豊富な経験を積んできた料理人です。「ワインを飲みながら、ゆっくり食事を楽しんでほしい」という思いから現在のスタイルに行きつき、以前は串揚げのコースを提供していました。コロナ禍でメニューを見直し、とんかつをメインにしたといいます。
今回注文したのは、季節の前菜4〜5品にヒレとロースのとんかつ、カレー、デザートが付いた「糀ナチュレおまかせコース」(7,000円)。前菜の1品目は宗像の猟師から仕入れるイノシシからとったコンソメをベースにしたキノコのスープで、インカのめざめ(ジャガイモ)のすり流しでとろみと甘味をつけたもの。柚子の香りが食欲を目覚めさせてくれます。
2品目の小さな椀からは、ほのかな湯気とともに磯の香りが漂ってきます。その正体は四国の吉野川で採れる川海苔で、その下には真鯛からとった出汁を使った茶碗蒸しが。卵のとろけるような食感と香りのハーモニーが素晴らしい逸品です。
さらに前菜が続きます。西京味噌に漬けた豚肉の薄切りスライスをサッと湯通しした後に氷で締めた冷しゃぶは、叩きオクラ、山芋の千切り、ミョウガ、小ネギなどの薬味に焼き松茸が乗っています。出汁には京都の千鳥酢を加えて、程よい酸味をプラス。
赤いナプキンで登場したのはバターにオリーブオイル、甘藷、シナモンなどに浸して焼いたバゲットの上に本マグロの中トロとトマトを乗せたブルスケッタ。手づかみでガブリといくと、アボカドとライムのソースが香ります。
ここまで食べて感じたのは、食材ごとに計算された香りのマジック。フレンチ、イタリアン、和食の技法が、高いレベルで融合した料理にすっかり引き込まれてしまいました。
メインのとんかつは、宮崎県産霧島山麓豚のヒレとロースの2種類。低温の米油でじっくり火を通した豚肉は衣の厚さも申し分なく、ほんのりとしたピンク色で絶妙の揚げ具合。自家製のとんかつソース、カレー塩、トリュフバター、スダチが添えられています。
ヒレはスッと歯が通る柔らかさで、スダチを絞るだけで豚肉の旨味がじんわりと伝わってきます。対してロースは脂身に上質な甘みがあり、とんかつソースと好相性。どちらも少量なので、ペロリと食べられます。
シメにカレーライスの小盛が出てくるのも意表を突かれます。牛肉と野菜からとった2種類のペーストを合わせてスパイスで味を整えたルウと、雑穀米にチリメン山椒と漬物を乗せたトッピングもユニークです。スパイスの使い方も見事で、最後まで伊藤シェフの香りのマジックに魅了されました。
料理はコース以外にも日替わりメニューをアラカルトで注文ができ、早い時間からワインバー的な使い方もできるそう。次回はぜひ一品料理とワインを楽しんだ後、カレー(1,000円)にとんかつのトッピング(+500円)を食べに再訪したいものです。
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店舗名
nature(ナチュレ)(店舗写真)
ジャンル
- とんかつ
- ワインダイニング・ワインバー
住所
福岡市中央区警固2-13-7警固ランドマークタワーⅠ-1F
電話番号
営業時間
18:00〜翌1:00
定休日
火曜
席数
- カウンター6席
- テーブル12席
個室
なし
メニュー
おまかせコース7,000円〜、霧島山麓豚パテ・ド・カンパーニュ1,000円、霧島山麓豚ロースカツレツ(150g)1,600円〜、天使の海老フライ(4尾)1,600円、カレー1,000円
喫煙について
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- ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
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