上野万太郎の「この人がいるからここに行く」【第11回】
フランチレストランからマルチチャネルレストランへ
公開日
最終更新日
ライター上野万太郎
カメラマン上野万太郎
白金
BISTRO Pic d'or(ビストロ ピックドール)
上野万太郎
外食写真日記的なブログ「万太郎.net」で福岡を中心とした飲食店の人々やお客さんと関わったエピソードを発信。著書は「福岡カフェ散歩」(書肆侃侃房/2012年)、「福岡のまいにちカレー」(書肆侃侃房/2014年)。
インスタID:mantaro_club
中央区白金「BISTRO Pic d’or」のオーナーシェフである積明(じゃくみょう)隆さん。名字の読み方から彼のことをみんな「ジャックさん」と呼ぶ。現在は「BISTRO Pic d’or」でレストラン営業をしながら、店外での営業にも力を入れている。具体的には社員食堂の運営、弁当や惣菜の販売、出張料理など。この動きはCOVID-19以前に始まっていた。今でこそ店外営業については多くの店が取り組んでいるが、ジャックさんは何故以前からそこに向けて舵をきっていたのか、その辺りにアフターCOVID-19における飲食店の在り方のヒントにもなるのではないかと思い話を聞いてみた。
料理人としてのスタート
福岡市出身のジャックさんは高校時代からイタリアンレストランでアルバイトをしながら将来は料理の道で生きていこうという夢を持っていた。大阪の調理専門学校でフランス料理を学び、卒業後は福岡のフレンチレストラン「メゾン・ド・ヨシダ」に就職しフランス料理の基礎を教わった。
特に、吉田安政シェフが常々言われていたことがある。「昔、料理人は勉強が出来ない人がなるみたいに言われてきた。しかしこれからの料理人は変わらなければならない。国や自治体と協力して地域福祉活動、ボランティア、チャリティなどの社会貢献をしていくことも大切になる。それにより料理人への評価も上げていくことが、次の時代に料理人のためにもなる」ということだ。確かに現在吉田シェフの元に集まった福岡市内の料理人たちは、定期的に慈善事業などを開催されている。この考え方は今でもジャックさんの料理人としての芯になっているという。
「グリル豆の木」の開業
2011年、中央区白金に「グリル豆の木」を開業し独立。一軒家をリフォームした店は古い洋館のような雰囲気で、落ち着いた大人向けの空間に仕上げられていた。料理は赤レンガに囲われた焼き場でジャックさんが炭火で焼く肉料理がウリ。基本的にはアラカルトでワインがよく合う料理が揃えられていた。
ビーフステーキやポークステーキはもちろんだが、特にギャートルズ焼きと言われる両側から骨が突き出した形状の肉塊で出される豚のすね肉のグリルが人気だった。フランス産シャラン鴨(現在はバルバリー種を使用)のグリルも衝撃的に美味しかったのを覚えている。
ランチメニューはお手頃価格で美味しい炭火焼き肉料理が楽しめるということで次第に予約必須の店になった。人気店になってお客が増えてきた頃、隣の建物も借りて店舗を拡大し、スタッフも増やしてスーシェフとの体制で業態を大きくして行った。大バコにしたおかげで個室も出来てお客には好評で売上も伸びた。しかし数年後、ジャックさんの中で気持ちの変化が起こって来た。自分の目の届く範囲で料理を提供したいと思うようになってきたのだ。それは吉田シェフの考えにもつながってくる。店の営業で手いっぱいになると、将来的に考えている他の事業展開が難しいと思うようにもなったのだ。
「グリル豆の木」の閉店と「BISTRO Pic d'or」の開業
そういう気持ちの中、2018年10月に「グリル豆の木」を閉店し、心機一転、2019年2月、同じ白金に「BISTRO Pic d’or」を開業した。「BISTRO Pic d’or」は以前に比べると店舗は小さくジャックさんとフロアスタッフの2人がいれば回るレストランになった。「グリル豆の木」の頃は5、6人のスタッフだったので1/3くらいの規模になった。「マヌコーヒー」の店舗デザインをリスペクトしたという黄色い漆喰調の塗り壁と濃い茶色の柱とのコントラストが大人な雰囲気。店内にはリズミカルなアコーディオンなどのパリっぽいが音楽が流れる。
アラカルト中心だった「グリル豆の木」とは違い、今回はコース料理に力を入れることにした。3,900円からというお手頃な設定にして本格的なフランス料理を幅広い層に楽しんでもらいたいと思ったのだ。コース料理を注文するお客が増えてくると、カウンターはシェフズテーブルとして、ジャックさんと話をしながら料理を楽しもうとする常連客で人気の席となっている。
「グリル豆の木」時代と変わらずランチも好評だ。特に「ポークジンジャー」が一番人気なのも昔から変わらず。分厚くボリューム満点の豚肉に爽やかなジンジャーソースがたっぷりでバターライスによく合う。そんな人気の「ポークジンジャー」だが、最近ジャックさんがお気に入りのレストラン「キッチンポアレ」で食べたポークジンジャーに惚れ込んでしまい、自店のジンジャーソースのレシピを改良したそうだ。料理人歴25年のジャックさんだが、美味しいと思う料理へのこだわりと挑戦する気持ちはまだまだ衰えるところを知らない。
またCOVID-19の期間に始めたお手頃価格の夜定食もそのまま継続している。ちょっと一人で晩ご飯でも、という方にも気軽にビストロを楽しんでもらいたいという思いである。ワンドリンクオーダーは大人のエチケットでお願いしたいところであるが。
アラカルト中心だった「グリル豆の木」とは違い、今回はコース料理に力を入れることにした。3,900円からというお手頃な設定にして本格的なフランス料理を幅広い層に楽しんでもらいたいと思ったのだ。コース料理を注文するお客が増えてくると、カウンターはシェフズテーブルとして、ジャックさんと話をしながら料理を楽しもうとする常連客で人気の席となっている。
「グリル豆の木」時代と変わらずランチも好評だ。特に「ポークジンジャー」が一番人気なのも昔から変わらず。分厚くボリューム満点の豚肉に爽やかなジンジャーソースがたっぷりでバターライスによく合う。そんな人気の「ポークジンジャー」だが、最近ジャックさんがお気に入りのレストラン「キッチンポアレ」で食べたポークジンジャーに惚れ込んでしまい、自店のジンジャーソースのレシピを改良したそうだ。料理人歴25年のジャックさんだが、美味しいと思う料理へのこだわりと挑戦する気持ちはまだまだ衰えるところを知らない。
またCOVID-19の期間に始めたお手頃価格の夜定食もそのまま継続している。ちょっと一人で晩ご飯でも、という方にも気軽にビストロを楽しんでもらいたいという思いである。ワンドリンクオーダーは大人のエチケットでお願いしたいところであるが。
店外営業拡張への挑戦
さて、そんなジャックさんが力を入れていることがある。レストランの外で行う営業活動である。「グリル豆の木」を閉店しようと思った頃から考えていたそうだ。レストランでの待ちの仕事だけでなく自分から社会へと出て行き、料理人の新しい可能性を見つけることで社会貢献にもつなげたいという思いである。それを今少しずつ実現している。これは、前述の吉田シェフの教えに対するジャックさんなりの答えかもしれない。
現在取り組んでいることは、2年前から行っている企業から依頼された社員食堂の運営だ。自分のレストランでは良い素材を使ってより美味しく食べてもらうことを第一に考えて経営をしているが、社員食堂では決められたコストの中でいかに美味しいものを作るかが大事になる。同じ料理でも初めてのタイプの仕事だ。そのあたりも新たな挑戦だったようだ。
2つ目は弁当販売だ。企業などからの注文による弁当販売にも力を入れている。さらに惣菜販売としてはスーパーなどへの卸売から始めて直販店も検討中だ。
3つ目は出張料理。現在、産婦人科での料理提供を週2回行っている。病院の厨房でジャックさんが作った料理を産後のお母さんに食べてもらっているのだ。またパーティーへの出張料理も行なっている。
そして次は通販サイトの立ち上げだ。冷凍商品の製造販売許可を取って通信販売にも取り組んで行きたいそうだ。
カッコイイお父さんになりたい
今年45歳になるジャックさん。男として脂が乗っている年頃だ。美味しいフランス料理への挑戦だけでなく、飲食業経営者としても新しいスタイルに挑戦している。
家に帰ると小学生の姉妹の父親。「そろそろ、お父さん気持ち悪い~、とか言い出す年頃になるらしいんですよ。だからカッコイイ父親になろうと頑張ってるんです!!」とジャックさん。坊主頭をやめ少し髪を伸ばして金髪にしたもの娘たちのため。そして日々運動に励んで、一時期120kgくらいあった体重を90kgまで落としたのも娘たちのためらしい。そこは普通の父親だった。
ジャックさんは自身の事業全体を「豆の木」と呼んでいる。そして「BISTRO Pic d’or」というレストランは「豆の木」というブランドの中の一つの事業であるということだ。店外営業の割合を増やしていくことは今後のレストラン経営のリスク管理としても重要だと考えている。それがゆくゆくは社会貢献が出来る体制強化にもつながると信じて挑戦を続けて行くという。
「豆の木」全体の事業が上手くいけば、将来大人になった娘さんたちに、見た目ではなく本当の意味で「お父さん、カッコイイ~~!!」と言われる日が来ることだろう。パパ頑張って!
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店舗名
BISTRO Pic d’or(ビストロ ピックドール)(店舗写真)
ジャンル
- フランス料理
住所
福岡市中央区白金1-9-8
電話番号
営業時間
18:00〜フードOS21:00(21:00〜23:00頃まではバー営業)
定休日
火曜
席数
- カウンター4席
- テーブル12席
メニュー
コース料理3,900円・6,600円・8,800円・11,000円、ステーキフリットセット・ポークジンジャーセット各2,500円、豚のリエット660円、是非もの!パテ・ド・カンパーニュ1,200円
喫煙について
- ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
- ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
- ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
- ※OSはオーダーストップの略です。
- ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
- ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
- ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。
記事に関する諸注意
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