上野万太郎の「この人がいるからここに行く」【第10回】

店構えと料理のギャップにびっくりするレストラン

公開日

ライター上野万太郎

カメラマン上野万太郎

キッチンポアレ

上野万太郎

ここ10年間、カレー店と珈琲店やカフェを中心に年間外食はのべ1,100軒以上。本業の傍ら、外食写真日記的なブログ「万太郎.net」で福岡を中心とした飲食店の人々やお客さんと関わったエピソードを発信。著書は「福岡カフェ散歩」(書肆侃侃房/2012年)、「福岡のまいにちカレー」(書肆侃侃房/2014年)。
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キッチンポアレ(吉塚)

博多区吉塚2000年通り沿いにある「キッチンポアレ」は町の人気洋食店だ。お店の外観は地味そのもので、照明看板やネオンなどもないため夜には外から見ると営業中なのかどうかも分からないほど。店内も特に凝った造りではなく言うなれば食堂風のインテリア。一見何の変哲もないこの食堂が何故人気なのだろうか。それは、見かけとは逆に出て来る料理が正統派のフランス料理でこの上なく美味しいのだ。

今年66歳になる自称“大将”の坂口良児さんは10代から洋食一筋の料理人。古典的なレシピと盛り付けにこだわり、いわゆる映えるような料理は作らない。しかし、ピカピカに磨かれた皿の上にはすべての料理が食べる人に一番良い顔を見せるように配置され、見ただけで作り手の想いと美味しさが伝わるオーラを放っている。

店を構えて12年になるが、そんな本格的なフランス料理を出す店がここにあるなんて、毎日店の前を通っていても気付かない人が多いかもしれない。だからこそ一度ここで料理を食べた人たちの中では、その佇まいと料理のギャップが大きすぎると話題になりファンが増えてるのだ。

キッチンポアレ

坂口良児さんの経歴

長崎県壱岐市生まれの坂口さん。幼少の頃に両親の仕事の関係で名古屋に引っ越し、10代から喫茶店、レストランなどで働いた。最初から料理人の道を目指したわけではなかったが、負けず嫌いだったという坂口さんは、キャベツの千切りひとつとっても仕事仲間にそのスピードで負けるのが悔しかった。その分仕事にも打ち込み料理の勉強もしていった。そのうち料理の面白さを知り料理人としてずっと仕事をしていこうと思うようになったという。名古屋ではレストラン数店舗で働いた。先輩の紹介などもあり仕事には困らずあちこちから声をかけてもらい経験を積んでいった。

30歳を過ぎた頃、両親が九州に帰るというので、坂口さんも福岡市内のホテルレストランに転職した。奥様とはその後、福岡で知り合うことになる。

キッチンポアレの開業

2010年、坂口さんが54歳の時に「キッチンポアレ」を開業。洋食レストランの料理人として35年以上仕事をしてきたが、自分の店ではフランス料理に絞ることにした。店名にした「ポアレ」とはフランス料理における魚料理の調理方法のひとつで坂口さんもお気に入りの料理。フランスをイメージできる言葉を店名にしたくて「ポアレ」を選んだそうだ。

現在、お昼は坂口さん夫妻とお兄さん、それと叔母の4人で、そして夜は奥様と2人で切り盛りしている。ランチタイムは1,000円前後でサラダ、ミニスープ、ライスとメイン料理がセットされ、大人気の「日替わりランチ」(900円)は数量限定で、13時頃には売りきれることが多い。

夜はアラカルトもコースもある。アラカルトはランチのようにセットメニューにした場合、2,000円前後の価格帯。メイン料理もスープもランチより量が多い。また、コースは4,500円から用意されている。

もちろん、ソースもドレッシングもすべて手作り。煮込み料理が得意で6時間かけて作るタンシチューやビーフシチューは人気メニューだ。僕が最初に食べたのはトロトロビーフシチューとカニクリームコロッケのセット。とろけるように柔らかく煮込まれた大きな牛肉がドンと入ったビーフシチューを食べた瞬間、「あ、ここは洋食屋さんではなくフレンチレストランだ!!」とすぐに思ったことは今でも覚えている。

キッチンポアレ
キッチンポアレ

次に僕がハマったのは厚切りポークステーキジンジャーソースだった。坂口さんも自信があるという和風のジンジャーソースがたまらない。表面はパリパリ、中心部はジューシーに焼かれた厚切りの豚肉にこのソースがよく絡むのだ。

中央区で長年ビストロを営む僕の知り合いのシェフがここのジンジャーソースを食べて気に入り、何度か通って自店のジンジャーソースのレシピに手を加えたというくらい、プロも惚れ込む味だ。
実際、坂口さんを頼ってやって来るレストランのシェフに、ドレッシングやスープ、ジンジャーソースの作り方を指導したこともあるという。

ハンバーグやエビフライ、ビーフステーキなど、ここの料理はどれもこれもライスがイケる料理だ。どの料理もおススメだが、そのおススメメニューがある場合はそれを選ぶのが良いだろう。その日の仕入れ具合で良い素材があった時や数日間かかる仕込みが完成した時に提供できるその日のおススメメニュー。食べない手はない。

キッチンポアレ
キッチンポアレ

最後に

冒頭にも書いたが、こんなに美味しいフランス料理店なのに店舗の内外装はハッキリ言って食堂のようだ。それに関して坂口さんに聞いてみた。

「店にいくらお金をかけても料理が美味しくなることはないですよね。そこにお金をかけてない分安くて美味しい料理が提供できるので、それを喜んでくれるお客さん向けに、私はこのスタイルでこれからもやっていきたいです」とのこと。

もう一つ書いておきたいことがある。坂口さんはどちらかというと強面だ。決して愛嬌があって親しみやすい雰囲気の人ではない。しかし話しかけると照れながらいろいろと料理の説明もしてくれる。若い頃はファンションに関することが大好きで、ガチガチのアイビールックだったらしい。アイビーと言っても今どきの人には理解してもらえないだろうが、僕もアイビーにハマった世代なので、その話になった時は料理の話題以上に盛り上がった。

キッチンポアレ

最後に「お店をやってての楽しみは何ですか?」と聞いてみた。「お客様に提供した料理が綺麗に完食されたのを見るのが楽しみですね」と坂口さん。滅多にないが皿に残っているものがあると「お客さんは何か言ってなかったか?」と、フロア担当である奥様に聞いてみるそうだ。お客様の声なき声に常に耳を傾ける姿勢として、そのチェックは欠かさず続けているという。

そんな坂口さんの夢は、この場所で1年でも1日でも料理を作り続けていくことだという。僕も1日でもながくここの美味しい料理を食べるのを楽しみにしています。

店舗名

キッチンポアレ

ジャンル

  • フランス料理

住所

福岡市博多区吉塚2-16-4

電話番号

092-623-8508

営業時間

11:30~OS14:00/17:00~OS21:30

定休日

水曜(他不定休あり)

席数

  • カウンター8席
  • テーブル18席

メニュー

昼:日替わりランチ900円/夜:ビーフシチューとカニクリームコロッケ2,000円、厚切りポークステーキジンジャーソース1,900円(共にスープ、サラダ、ライス付き)、コース料理は4,500円~

  • ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
  • ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
  • ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
  • ※OSはオーダーストップの略です。
  • ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

記事に関する諸注意

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