万太郎の喫茶と定食ノスタルジア【13】

”万太郎の喫茶と定食ノスタルジア” 台湾料理界で25年の「亜洲界世」10月から台湾ランチをリニューアル

公開日

ライター上野万太郎

カメラマン上野万太郎

台湾料理 亜洲界世

上野万太郎

ここ15年以上、外食写真日記的なブログ「万太郎.net」で福岡を中心とした飲食店の人々やお客さんと関わったエピソードを発信。著書は「福岡カフェ散歩」(書肆侃侃房/2012年)、「福岡のまいにちカレー」(書肆侃侃房/2014年)。
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はじめに

中央区港にある「台湾料理 亜洲界世」(あしゅうかいせい)。3年半前に「UMAGA」でも紹介された台湾屋台料理が人気の店。僕がここに来るようになったのは8年前「Telas & mico」久保田店主の紹介で一緒に来たのが最初だったがそれから定期的に伺っている大好きな店だ。

夫婦二人で切り盛りされている「亜洲界世」。コロナ禍以前は深夜2時まで営業してた完全夜型の店だったが、今年1月からなんとランチ営業を始められたのだ。さらに10月からは、もっと気軽に台湾を感じてもらえるような定食スタイルにリニューアルしてさらに昼間の営業にも力を入れていきたいというではないか。少し歴史を遡ったうえで、お二人の考えにどんな変化があったのか話を聞きながらランチのご紹介をしたい。

東区馬出にあった初代「亜洲界世」

「亜洲界世」は料理人の濱﨑洋平さんと妻の真理子さんで切り盛りする創業18年になる台湾料理の店だ。

まずは洋平さんの料理人としての軌跡を振り返ってみよう。鹿児島県串木野市(現・いちき串木野市)出身の洋平さん。地元の高校を卒業後に鹿児島市内の調理専門学校に進学。卒業後に福岡市の和食店に就職したそうだ。

洋平さん― 最初は和食料理人として魚をさばいて刺身を引いたりしていたんです。そしたら、会社の社長が「台湾料理の店をやろう!!」と言い出したんです。最初は、え??台湾ですか??なんで??という感じでしたね。

― それ以前に洋平さんは台湾に興味はなかったんですか?

洋平さん― 興味はまったく無かったですね(笑)

― では、和食料理人としてその道で進んで行きたいというようなこだわりで悩んだりはしなかったんですか?

洋平さん― 和食に対してもそこまでのこだわりもなかったので社長が言うなら仕方ないなと思ったくらいでした(笑)。ただ台湾料理を勉強するために会社のスタッフで何回も台湾に行ったんです。そうするうちに台湾料理の美味しさや台湾自体のすばらしさを知って、だんだんやる気になっていきました。 

そうやって東区馬出に新業態として出店したのが「亜洲界世」だったのだ。この初代「亜洲界世」はすぐに人気となり当時珍しかった台湾料理を福岡で広めるきっかけにもなった店として今でも昔の店を懐かしむオールドファンがいるほどだ。特に築100年以上の古民家を改築した店舗は雰囲気も良かったという。

初代「亜洲界世」から2代目「亜洲界世」へ

しかし開業して数年が経ったころ、初代「亜洲界世」は会社の事情で閉店することになったそうだ。

― それで初代「亜洲界世」を継いで洋平さんが2代目「亜洲界世」を開業したということですね。もうその頃は洋平さんも台湾料理にドハマりしてたんですか?

洋平さん― ドハマりというほどではなかったですが好きでしたね。本当は、独立するならカウンターだけの小料理屋がしたかったんですよね。

― は?和食の小料理店ですか? では何故、「亜洲界世」を継いだんでしょう?

洋平さん― 社長が店を閉める時に、「出来れば『亜洲界世』という名前を残して欲しいと言われたんです。だったら、台湾料理店として今後ももう少し頑張ろうかなと思ったんです。

まあなんとお人好しというか優しい性格の洋平さんなんだろう。そうして2代目というか現在の「亜洲界世」は2007年に中央区港で開業したのだった。開業にあたって妻の真理子さんもお店を手伝うことにした。それ以来18年間2人きりで店を守ってきているのである。

「亜洲界世」の料理

店を続ければ続けるほど濱﨑さん夫妻が台湾や台湾料理にハマってきたのは間違いないようだ。この18年間で台湾に50~60回は行ったという話を聞けば誰でも納得するだろう。

― どうしてそんなに台湾にハマったんですか?

洋平さん― 福岡市には台湾料理を教えてくれる先生がいないので定期的に台湾に行って勉強するしかないんですよね。今でも年に2~3回は行ってます。

真理子さん― 昔は渡航費や現地の料理も価格が安かったので気軽な気持ちで2泊3日くらいでバタバタ行って朝の飛行機で帰って来て、当日夜の営業をするみたいなこともしてましたね。とにかく台湾の人が日本人に優しいしご飯も美味しいし最高です。

洋平さん― 昔の日本の歴史や懐かしさなどを感じる国なんですよね。料理もカツオの出汁を使った素材を生かしたシンプルな料理が多かったり、素朴だけど美味しく感じる料理が多いと思うんです。行くたびに行ったことがないさらに田舎の食堂や屋台を廻って食べ歩きしてます。

― 現地に行かれて美味しかった味をお店で再現しようとされてるのでしょうか?

洋平さん― 自分の店では僕が感じた現地の味をそのまま再現してお出ししている部分も多いです。作りたいもの、食べて欲しいものを一生懸命勉強してメニューにするんですけど、あまりに日本では馴染みのない味の料理を出すと、お客様は「ポカ~~ン」とした顔をされて不評だったりすることもあります。食べて欲しいものが必ずしも売れるものではないってことですね(笑)

真理子さん― 昔はみんなが分かりやすい中華料理として、酢豚や海老チリなども出してましたが、最近では台湾料理にこだわったメニューにしています。

コロナ禍とキッチンカーとランチ営業

コロナ禍では、時短営業や弁当のテイクアウトなどで乗り越えて来た「亜洲界世」だったが、コロナ明けは、それまで深夜まで営業していたスタイルを方向転換させることにしたそうだ。

真理子さん― 自分たちの年齢的なもののあるかもしれませんが、お昼中心に営業して夜の仕事を減らせないかと考えるようになったんです。以前は深夜2時まで営業していましたが現在は22時まです。たぶんコロナ禍での営業をやってみてその生活パターンのほうが人として生きやすいなと感じたんだと思います。ちょっとした働き方改革ですよね。

― お昼の営業と言えば、キッチンカーも導入されてましたね。

洋平さん― そうなんです。コロナ禍に新規事業なども考えてキッチンカーも買ったんですよ。週末を中心に弁当や丼物などでイベント出店したり、知り合いの会社の前でランチタイムに出店してみたりいろいろやりました。古い車体を買ったのでそろそろ限界になってきたので4年間くらい使って今年売却しました。

― そしてランチ営業へと続くわけですね。

洋平さん― 今年の1月からランチ営業を始めてみたんです。現在は、土・日・月曜日の週に3日のみのランチ営業ですが、酒の販売に頼らないスタイルの飲食店としてやっていけないかと考えて、テスト的な取り組みです。最初は台湾ランチプレートとして現地のセルフ食堂で好きなおかずを一つの皿に自分で盛り合わせて食べるスタイルをイメージして、その日のおかずを盛り付けて提供したんです。10種類以上の料理を盛り付けるので仕込みも手間暇かかって1,800円という価格で始めたんです。僕たちは台湾の現地の雰囲気も含めて楽しんでもらいたいと思ってやったんですが、反応はイマイチでした。台湾好きな人には好評だったんですが、そうでない一般の方には前にも言ったように「お客様がポカーン」とすることもしばしばでした(笑)

― その反応をみて、今回のランチリニューアルですね。

洋平さん― そうです。魯肉飯(ルーローハン)または鶏肉飯(ジーローハン)のどちらかに日替わりの一品料理とサラダ、スープ、漬物をセットにした定食スタイルにして1,200円という価格にしました。

真理子さん― 台湾料理と言えばやはり魯肉飯と鶏肉飯だと思うんです。自分たちも大好きで台湾に行った時は1日でこれだけを3軒回って食べたりするんです。店によって味付けも違うのが面白いんです。福岡で言えば、ラーメンやうどんみたいに庶民料理の代表みたいな感じだと思うんです。だからこそ、この2品のどちらかをしっかり食べてもらって、さらに台湾屋台風の副菜も楽しんでもらえたら嬉しいと思って定食スタイルにしました。

― 魯肉飯と鶏肉飯は僕も大好きなメニューなので、ここに来たら必ずどちらかは食べています。特に今回はそれに博多らしいトッピングを用意されているらしいですね。

真理子さんー はい、魯肉飯または鶏肉飯に大手門の人気魚料理専門店「ごはんや 飯すけ」さんの自家製明太子がどーんとのったものを1,500円でお出ししています。「飯すけ」の大将とお話していてコラボさせていただくことになったんです。

― 台湾料理に明太子とはちょっと意外だったんですが、食べてみたら違和感が無くて大変美味しいですね。さすがの組み合わせにあっぱれでした。

将来の夢

― 50歳を越えたお二人ですが、将来に向けての夢はありますか?

洋平さん― 台湾大好きな二人ですから、このまま「亜洲界世」を続けていくことも一つの幸せと思うのですが、やっぱりいつかはカウンターだけの小料理屋をやってみたいという夢もありますね(笑)

周りの要望に応えながら台湾料理の道を進んできた洋平さんだったが、本音の夢としてはまだカウンター小料理店の大将というところにあったのか。年を取ってくると昔やりたかったけど諦めてた夢を元気なうちにもう一度追いかけてみたいと思う気持ちは僕も60歳半ばを迎えようとしているので切実に理解できる。

カウンターだけの小料理店でなくても、カウンターだけの台湾食堂なんてのはありかもしれない。とりあえずは、台湾大好きご夫婦が作る魯肉飯と鶏肉飯の定食ランチ。みなさんにも是非一度味わってみて欲しいものである。

土・日・月曜日ランチタイムのみに現在提供中のランチ(明太魯肉飯の定食)

年越しオードブルもおススメ

店舗名

亜洲界世(あしゅうかいせい)(店舗写真

ジャンル

  • 台湾料理

住所

福岡市中央区港2-4-24 ILGraziaマリーナ1F

電話番号

092-732-5258

営業時間

18:00~OS22:00、ランチタイム(土・日・月のみ)11:30~14:00

定休日

不定

席数

  • カウンター5席
  • テーブル14席
  • 掘りごたつ6席

個室

なし

メニュー

青野菜炒め880円、ラー油ワンタン(6個)750円、ピータン500円、イカ団子フライ750円、焢肉飯(コンローハン)750円、鶏肉飯(ジーローハン)650円、拌麺(バンメン)900円

喫煙について

禁煙
  • ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
  • ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
  • ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
  • ※OSはオーダーストップの略です。
  • ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。

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