弓削聞平の福岡飲食最前線
福岡グルメ、裏天神に続く注目エリアは「奥春吉」!?

弓削聞平
福岡のグルメ系エディター。グルメ雑誌「epi」「ソワニエ(現ソワニエ+)」「UMAGA」の創刊編集長。「ぐる〜り糸島」「私、この店、大好きなんです。」「福岡気軽で楽しい町の寿司屋」などを多数編集・発行。Instagram @fukuoka_umacato
春吉といえば私が10代の頃はちょっといかがわしい町というイメージでした。特に「ホテル イルパラッツォ」がある通りは、夜になると灯りがあるのはラブホテルくらいで、薄暗い家屋の前には“たちんぼ”と呼ばれる女性達が何人も座って、酔客に声をかけていました。人通りも少なく、女性1人で歩くのははばかれるし、そんな町だから住む人も少なく、アパートやマンションもあまりありませんでした。

その後その通りに少しずつ飲食店が増えてきたのですが、セブンイレブンができたときはかなり衝撃的でした。あの通りにコンビニができるなんて、昔の春吉を知る人の誰が想像したでしょう。
そして世の中はインバウンド時代に突入し、福岡にも「食」を目的に県外、海外から旅行者が来るようになり、春吉には大小のホテルが次から次にでき、博多駅前に並ぶ観光客、それも特にアジアのインバウンド客の多い街へと変貌していきました。
そんななか、長いこと立ち退き交渉、工事をしていた渡辺通りの桜十字病院からキャナルシティに抜ける道が開通しました。それ以来、この道路から北側、つまり国体道路寄りのエリアは飲食店やホテルの密集度が高くなり、それに伴い観光客の往来がみるみる増えています。
今のところその道の北と南で店・ホテル・人通りがかなり違っています。しかし、これからは徐々に南側にその波は押し寄せてきて、そこから住吉通りまでがこれから変貌を遂げそうです。
1月に公開した今年の展望を述べたコラムでも触れたのですが、私はこの桜十字病院からキャナルシティに抜ける道と住吉通りに挟まれたエリアを「奥春吉」と呼んでいます。このエリアは国体道路の方に比べてまだ家賃が安いこともありこれから飲食店が増えていくのは間違いありません。


現状ではそんなに物件が出ているわけではないのですが、まだまだ古いアパートやビルが多く、建て替えてテナントが入っていく気配を感じます。

この「奥春吉」で随分前の代表的老舗といえば町中華の「紅蓉軒」。ビートルズの大ファンという店主が有名で昼も夜も人気です。このあたりは昼食が食べられる店が少ないのでここに集中しているのかもしれません。
また10年以上前から実力を発揮しているのは、居酒屋の「きりん」です。いわゆる大人居酒屋とでもいいますか、しっとりした雰囲気のなか確かな料理を深夜までいただける評判の店です。また、同じマンションにはガラス張りの人気焼鳥店「あたらよ」もありますし、マンションの横というか前というか、古いビルには焼肉の「ばかとあほ」と並んでヘルシー中華の「はまざる」があります。
そして「あたらよ」と「はまざる」の間を抜けて那珂川沿いにいくと、ぼくがしょっちゅう行ってるワインバー「キネマの月」があります。ナチュラルワインと福岡では珍しいおつまみ的ロシア料理を食べられ、最近は福岡在住のロシア人のお客さんも来られているようです。




「キネマの月」がある川沿いにはいくつか店があり、うちから出してる町寿司の「大池どんぽ」やバーの「BAR KAKU(バルカク)」、渡辺通りの屋台の方が有名になった「Telas&mico」、魚料理と日本酒をいただける「内場」もあります。さらに「キネマの月」の隣は真っ黒な外観が異彩を放っている焼鳥の「ちんぷんかんぷん」があり、ここは若い方やインバウンドに人気のようです。また、もう少し北側に行くと、9月下旬に「焼肉 栄」という店がオープンしたばかりです。私はまだ未訪問ですが、行った人は「そんなに高くないしおいしかったよ。4時までやってるみたい」と行ってたので、中洲、西中洲、春吉あたりの飲食関係者には朗報です。

一方、「きりん」の向かいには、ビルの建て替えにより奥じゃない春吉からこちらに移転してきた「みかん」があります。さすが「みかん」、先見の明がありますね。その横にはお母さん2人でやっていた極狭老舗餃子店「旭軒」があったのですが、この夏、こちらも立ち退きのため64年間にわたる営業をやめて遠賀に移転したそうです。

「旭軒」があったところは何ができるのでしょう。
また、渡辺通の人気居酒屋「トキシラズ」の姉妹店「シラトリ」は那珂川沿いですが、もう柳橋商店街に近いところです。こちらは「トキシラズ」より大衆酒場っぽいのですが、やっぱり連日満席の繁盛ぶり。すぐ横には業務用スーパーもできてますね。

一方、「Telas&mico」のすぐ横の住吉橋から渡辺通り手前の「だるまラーメン」に続く道もいろいろと店が増えています。とても紹介しきれませんが、熟成肉の「アカミヤコウシ」、水炊きの「鳥千代」、大楠から移転してきた天ぷらの「nasubi」、朝9時から営業している新顔のスパイスカレー店「you&me curry」、これぞ博多の焼鳥「村崎焼鳥研究所」、そして荒戸から移転してきたその姉妹店の「村崎炊鳥研究所」、2014年版のミシュランガイドで一つ星を獲得したイタリアン「COME(コーメ)」、野菜料理の「ほく菜」、焼鳥の「もち乃き」などなど。こうしてみると他のエリアから移転してきたところが目立ちまさうね。
そしてカジュアルに焼肉が食べられる「しちりんや」もなかなかの穴場です。深夜4時までやってるし、食べ放題もあれば定食もあって、カウンターがあるわけではないのですが、割と一人焼肉もしやすい自由な雰囲気です。「孤独なグルメ」の井之頭五郎氏も好きかもしれないなぁ(笑)。

ホテルニューオータニの裏にもズラリと飲食店が並んでいます。ここも町名としては「春吉」ですが、イメージとしては渡辺通という感じなので、ここを「奥春吉」というかどうかは微妙なところ。私の個人的感覚としては「奥春吉」というより「渡辺通南」とでも言う方がわかりやすい気がします。
このエリアは裏天神の延長のような町でもあって、ほんとに細い路地や古いアパートがいっぱいあるので、これから建て替え、あるいはリノベーションにより飲食店やミニホテルが増えていくに違いありません。大バコはあまりできなさそうなので、個性的な実力派が集まるエリアになってくれるとうれしいなぁ。


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- ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
- ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
- ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
- ※OSはオーダーストップの略です。
- ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
記事に関する諸注意
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