極小パスタ屋から始まった 「アマム ダコタン」平子劇場のストーリー

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ライター弓削聞平

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株式会社ヒラコンシェ オーナー

平子良太さん

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始まりはわずか7坪のパスタ専門店

六本松にある毎日行列ができているパン屋「アマムダコタン」。マリトッツォブームの火付け役としても有名で、その後博多駅、さらには東京へも進出を果たした、今福岡でもっとも話題の店といっても過言ではありません。
オーナーの平子さんは長崎出身で地元のホテル、数軒の東京の飲食店で働いた後に、地元で姉が開業するカフェを併設するアンティークショップを手伝うために帰省。その後福岡の飲食店で働いた後、2012年28歳で大楠の小さな物件でパスタの店「パスタ食堂 ヒラコンシェ」を開業しました。
実はこの物件は、井谷ビルという古いアパートに様々なお店が入居しているところなのですが、「ヒラコンシェ」の前に営業していたのは、「Goh」と「忠助」が共同でやっていたバー「Goh助」です。ここにはぼくも週1以上の頻度で通っていて個人的に愛着のある物件ということもあり、「ヒラコンシェ」ができてしばらくして訪問しました。しかし、そのときは今のような展開はまったく想像していませんでした。それは平子さんも同じで、当時から今のように様々な業種を、あちこちでやることを考えていたわけではないそうです。

飲食の次は物販(ドライフラワー)の店を

井谷ビルで始めた最大の理由はなんといっても家賃が安かったからだとか(笑)。少ない席数で利益を出すには大事なことです。穴場勘もありお客さんは来たものの、あまりに狭くて働いていると「酸欠になりそう」と感じ2年ほどで警固に移転します。こちらでは席数もだいぶ増え、内装などの店造りも含めて理想に近いカタチで営業でき、いつも満席という店になるのにそう時間はかかりませんでした。
警固に移転して1年ほどで、これまでよりもう少し大人が落ち着いて食事できる店を作ろうと思い警固本通り沿いの2階に「ヒラコンシェ クラシック」を開業します。
また、そこの1階ではドライフラワーの店「コテ ジャルダン」も始めました。今でこそドライフラワーはショップも増え、多くの人がインテリアに取り入れていますが、まだそのような風が吹く前のことです。

コテ ジャルダン

「コテ ジャルダン」警固店  ※店舗から提供

飲食から突然ドライフラワーというのはとても違和感があるように感じますが、「以前から山口のドライフラワーの店の人に懇意にしていただいていて、店のインテリアとしてドライフラワーを使っていたことから、自分なりのショップをやってみたいと思ったんです」と平子さん。その後、六本松に蔦屋書店ができる際、誘いがありテナントとして出店することになりました。

イタリアンからパンへの発想チェンジ

アマムダコタン六本松

「アマム ダコタン」六本松店  ※店舗から提供

パスタ、ドライフラワーと来て、次なるパン屋「アマム ダコタン」をオープンしたのは2018年の秋。「ヒラコンシェ」では既製品を使うのが嫌であらゆるものを自身で作っていましたが、パンはパン屋さんから仕入れていたそうです。あるとき、それも自分で作ろうと思い立ったそうですが、いろいろ考えているとやりたいことも増え、また設備のことを検討したりしていると、レストランで片手間にパンを作るのではなく、専門店を自分で作った方がおいしいパンを提供できると考えたんだとか。つまり、元々は、自分の店で出すパンだけを作るつもりだったのですが、そうなるともちろん他のパンも作って売らないといけません。そこで考えたのが惣菜パンです。一つにはお客さんは具が見えるパンを買う傾向にあることに気づいたそうです。また、惣菜パンはどこのパン屋さんにもありますが、それはやはり「パン屋で作る惣菜パン」です。自分がやろうとしていたことと逆に、パン屋さんはプロの料理人ではありませんし、厨房もパンありきですから調理用の厨房ではありません。そこで平子さんは「料理人の作る惣菜パン」を作ることにしたわけです。

全国に名を知らしめたマリトッツォ

元々行列ができていた「アマムダコタン」ですが、その存在を福岡だけでなく全国に知らしめたのはマリトッツォでしょう。これは商品が品薄になる午後にもお客さんが買いたいと思える商品を出したいと考えだしたもの。日本で見たことはなかったそうですが、ネットかなにかでイタリアのマリトッツォをみて、その見た目のインパクトに「これはかわいい!」と衝撃を受けたそうです。以前感じた「中の具がみえるパン」というお客さんのニーズにも合っているのでさっそく試作をして販売してみたところ、みなさんもご承知のとおり大ブレイクしたというわけです。

マリトッツォ

店舗から提供

東京の店はまずパン、そしてドーナツへ

次に博多駅横に「ダコメッカ」を出すことになるのですが、実はその前から東京の物件を探していたそうです。ところが平子さん曰く「実は石橋を叩いて渡るタイプ」ということもあり、なかなかいい物件との出会いがなく、結果的に博多駅の「ダコメッカ」を先にオープンすることになります。

ダコメッカ

「ダコメッカ」 ※店舗から提供

その後、探していた東京の物件がみつかり昨年秋に表参道店をオープン。さらに今年3月には中目黒にドーナツ専門店「アイムドーナツ」を、続いて渋谷への出店も決まっているそうです。

アマムダコタン表参道
アイムドーナツ

左:「アマム ダコタン」表参道店 右:「アイムドーナツ」  ※共に店舗から提供

プロデューサータイプならではの変幻自在の展開

元はイタリアンのシェフだった平子さんですが、次から次に違う業態へのチャレンジを繰り返しています。違うジャンルの料理人になる人はときどきおられますが、これだけ変化が著しい人はなかなかいません。
話をお聞きしていると、平子さんは料理人というよりプロデューサーの才能を強くもっている人だと確信しました。料理人はとかくおいしいものを作るということに注力しがちです。しかしそこに集中しすぎて失敗する人も多く、飲食店には料理だけではないセンスが必要なことをしばしば感じます。そんななか平子さんはバランス感覚に長けていて、料理(や商品)へのこだわりももちろん強いのですが、それ以外の内装、商品構成、接客など、実に細かなところまで自分のイメージがあり、それを完璧に実現することを第一としています。特に店舗内装については、元来好きだったアンティークの要素を取り入れ、これまでのパン屋や菓子店にはなかった発想の空間を作り上げてきました。しかし店舗を斬新なデザインにするだけではお客さんはやってきません。そこに商品やサービスなどの総合的な演出力が長けているからこそ、お客さんに支持される店が作れるのでしょう。
10年前に7坪家賃3万円のパスタ屋から始まった平子劇場は、わずか10年でこれまで述べたような変化と発展を遂げてきました。おそらくこの先も私たちが想像できないような新たな姿を見せてくれることでしょう。海外も視野に入れている平子さんの、海外1店舗目はどんな店なのか、今から楽しみで仕方ありません。

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  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

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