上野万太郎の「この人がいるからここに行く」【第21回】

2015年の開業当時は福岡では珍しかった南インド料理専門店

公開日

最終更新日

ライター上野万太郎

カメラマン上野万太郎

赤坂

ポラポラ食堂

上野万太郎

ここ十数年間、カレー店と珈琲店やカフェを中心に年間外食はのべ1,100軒以上。本業の傍ら、外食写真日記的なブログ「万太郎.net」で福岡を中心とした飲食店の人々やお客さんと関わったエピソードを発信。著書は「福岡カフェ散歩」(書肆侃侃房/2012年)、「福岡のまいにちカレー」(書肆侃侃房/2014年)。
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中央区赤坂にあるビルの地下1階に、2015年に開業した当時は福岡市ではまだ珍しかった南インド料理専門店について、インフルエンサーの上野万太郎さんが詳細レポートします。

調理師専門学校を卒業後、インド料理店としての独立を目指した宮崎店主

2015年、中央区赤坂に夫婦2人で開業した「ポラポラ食堂」という南インド料理専門店がある。当時福岡市ではまだ珍しかった南ンド料理専門店を開いたのは宮崎和晃さん。飯塚市出身で高校卒業後に福岡市内の調理師専門学校に入学した。元々飲食業界で生きていくことは決めていたが、どんなジャンルの店で働きたいかは決めてなかったそうだ。
「学生の頃、『和洋中のどれにする?』みたいな話になるんですけど、みんながあまり選ばないインド料理が良いんじゃないか、と考えてたんです。もちろんカレーも好きでしたからね」と宮崎さんは当時を振り返る。

専門学校卒業後にまずインドカレー店で勤務した。毎日スタッフが当番制で賄い料理を作るわけだが、インド人の同僚が宮崎さんの作った賄いカレーだけは食べてくれないことが続いたらしい。店では北インドカレーを中心としたメニューを提供していたが、そのインド人が賄いに作るのは南インド地方のカレーだった。そのうち「俺が作ったカレーを食べてみろ」と言うので食べさせてもらったら、それまで食べたことなかった味。宮崎さんが作る賄いカレーは1時間くらいかけて一生懸命に作っていたが、彼が作るカレーは10分くらいで炒めるようにササっと作る。その時のショックというか驚きと発見は宮崎さんにとって大きな転機にもなったという。

「今思えば当時自分が作ったカレーは、インド人にとってみれば受け入れ難いものだったと思います。そのうち作り方を教えてもらえるようになったら、そこそこインド人の舌にも合うものを作れるようになり、やっと彼らも食べてくれるようになりましたね。でも1、2年はかかりましたよ」と宮崎さん。そういう経験により宮崎さんはインド料理の中でも南インド料理への興味が強まっていった。

ポラポラ食堂

福岡市内のインドカレー店勤務時代の宮崎さん夫婦(店舗提供)

25歳で初めて行った南インド

さらにインド料理にハマっていった頃、先輩のインド人が南インドに帰国して自分の店を出すというので彼を頼って南インドに行ってみることにした。25歳の時だ。南インドでは紹介してもらったホテルレストランで働き、南インド料理を教えてもらいながら、結局先輩の店やホテルレストランで働きながら6ヵ月間インドに滞在した。

ポラポラ食堂

南インド修業時代の宮崎さん(店舗提供)

そもそも南インド料理とはどういうものなのか。日本人が比較的慣れ親しんできた北インド料理との比較について宮崎さんなりの解釈を聞いた。
「北インドでは小麦が主食だが南インドでは米が主食です。北インドよりもさらに暑い気候のため、ナンなどと合わせて食べる濃いカレーとは異なるあっさりとしたサラサラのカレーが多いです。そして肉食よりも菜食の割合が多いですね。北インドではバターやギーなどの動物性油脂を使うことが多いのですが、南インド、特にケーララ州ではココナッツオイルやココナッツミルクなどの植物性油脂を多用します」とのこと。

ライスとあっさりしたスープ、そして野菜料理が数種類並ぶヘルシーな南インド料理は、魚料理も多いので日本人にも合うと言われるのは納得である。サラサラのスープをライスと混ぜながら食べると、僕は子供の頃に食べていた味噌汁かけご飯を思い出す。また南インドがインドの南側にあるのなら、九州も日本の南側にある。そういうこともあり、南インド料理店を出すという計画は宮崎さんの中で確固たるものになっていった。

しかし、インドから帰国した宮崎さんが開業するにはもうしばらく時間がかかった。今から20年以上前のことなので、もちろん今のようなスパイスカレーブームも来てないし、南インド料理はまだまだ福岡では、というか日本でも馴染みがなかった時代だったのだ。開業の時期を見極めるため、アジアレストラン、居酒屋、知り合いのラーメン店などで働きながらタイミングを待つことにした。

「ポラポラ食堂」開業

2015年、ついに宮崎さんは「ポラポラ食堂」を開業した。「機は熟した感じでした?」と聞いてみると「いや、ちょっと出遅れた感がありましたね」とのこと。
確かに、2015年と言えばカレーブームはすでに来ていた。しかし、「ミールス」という南インド地方でいうところの“定食”の人気が出るのはその数年後だから相当早かったと思う。

ポラポラ食堂

「ポラポラ食堂」の人気メニュー

「ポラポラ食堂」ではやっぱり「ミールス」が一番の推しである。基本は「ベジタリアンミールス」(昼1,100円、夜1,600円)という肉や魚類を使用しないもの。バスマティライスにラッサム、サンバル、ダールなどの野菜カレーと、豆の煎餅であるパパド、その他に野菜の副菜やヨーグルトが大きい楕円形の金属皿に盛られた菜食カレーセットである。

ポラポラ食堂

これに肉や魚のカレーを追加注文して一緒に食べるとノンベジタブルミールスとなる。

ポラポラ食堂

ミールスはまだちょっと、という方には、「ポラポラプレート」(昼1,000円、夜1,300円)といういわゆるカレーライス的なイメージの盛り合わせカレーがおすすめ。これはチキン、マトン、魚など数種類が毎日用意されている。

ポラポラ食堂

夜メニューで前日までに予約が必要にもかかわらず人気なのが、「飯盒(はんごう)ビリヤニ」だ。3人前で3,600円だが、メニューにも書いていない裏メニュー。数人で料理をシェアする時には是非食べて欲しい。飯盒で炊かれたビリヤニがそのまま出てくるので盛り上がること間違い無しだ。

ポラポラ食堂

どの料理も本格的な南インド料理でしっかりと旨味もあるがスパイスの薫りがさわやかで食べやすい。サラサラと食べられる身体に優しいカレーである。当然ながら辛みやパンチがある料理もあるが、どれも奇をてらわず全体的にバランスが良い料理という印象だ。

COVID-19明けに人生2回目のインドへ

今年になって宮崎さんは夫婦でインドへ1ヵ月ほど行ってきたそうだ。24年ぶりのインド渡航について聞いてみると、「インドのレストランもあの頃に比べるとちょっとリッチな料理になった気がしました。久しぶりに行って、あらためて本場の南インド料理の美味しさを実感しました。ずっと店で料理を作っているだけでは得られない刺激を受けたので、今後は定期的にインドへ行って勉強したいですね」と笑った。
実際、帰国してからはレシピを変更してるそうだ。味を変えるというより、バラエティを出そうとしているとのこと。

ポラポラ食堂

もうすぐ50歳になる宮崎さん。福岡でもっともっと南インド料理をみんなに食べてもらえるよう頑張りたいとのことだ。
僕も歳をとって最近さらに南インド料理が好きになってきた。美味しいだけでなく身体が喜ぶことを実感できるのだ。そういう意味でも気軽に本物の南インド料理を提供してくれる宮崎さん夫妻には、末永く福岡で頑張って欲しいと思うのであった。

ポラポラ食堂

店舗名

ポラポラ食堂(店舗写真

ジャンル

  • カレー

住所

福岡県福岡市中央区赤坂1丁目9−1 サニー赤坂店

電話番号

092-712-2308

営業時間

11:00~OS14:30/17:30~OS21:00

定休日

日曜

席数

  • テーブル14席

個室

なし

メニュー

ベジタリアンミールス1,100円(夜は1,600円)、ポラポラプレート1,100円(夜は1,300円)、屋台風オムレツ(夜のみ)500円、ひよこ豆のサラダ(夜のみ)650円、殻付き海老のマスタードシード炒め(夜のみ)1,100円、チャイ450円、ラッシー450円、マンゴーラッシー450円

喫煙について

禁煙
  • ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
  • ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
  • ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
  • ※OSはオーダーストップの略です。
  • ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

記事に関する諸注意

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