グランドメゾン presents 「ハレの日レストラン」【第10回】
尽きせぬ情熱で「究極の九州料理」を目指すイタリアンレストラン
ある意味で、「Ristorante Kubotsu(リストランテ・クボツ)」に勝る贅沢なレストランはありません。なにしろ食材はキュウリ1本、パセリ1束にいたるまで“ブランド品”。料理長の窪津朋生さんが産地を訪れ、生産者と話し、実食して採用を決めたものばかりなのです。メニューの全食材に「○○さんの作った」と書ける店が、いったい全国にいくつあるでしょう?
場所は警固公園向かいのビル4階。ここは以前、全国にフランス料理店やイタリア料理店を展開する「ひらまつ」が運営する「Ristorante ASO(リストランテ・アソ)天神」が入っていましたが、その料理長だった窪津さんが2018年に引き継ぎ、同系列の新店としてリスタート。今や県内外のグルマンを魅了する、「ひらまつ」グループ屈指の人気店です。その訳は、驚きや感動が一瞬も途切れぬ美食体験。昨年末の初訪問で、ついに僕もそれを知ることができました。
店内は優雅で落ち着いた雰囲気。壁に鍋島段通を飾るなど、随所に配した九州の工芸品が目を引きます。ナプキンリングも陰影の美しい大川組子でした。「僕はとにかく九州が大好きで、使う食材や器も九州産ばかり」と窪津さん。「各県の工芸品も、九州の文化をもっと知ってほしいとの想いから集めたものです。レストランは、そうした伝統や文化に触れられる場所でもありますからね」
麗しいメニューも博多織の献上柄。表紙を開くと、当日のコース内容とともに、多くの作り手の名が並んでいました。「休日はだいたい畑か海にいます」と笑う窪津さんが、8年かけて開拓した契約生産者は農家だけで60軒以上。そんな地道な努力を刻んだ“情熱のリスト”です。
そんな厳選素材を全8品に昇華させた、14,916円のコースは噂に違わぬ風味絶佳でした。例えばこのパスタは、糸島のイタリア人生産者・ザニンさんの黒キャベツを練り込んだスパゲティ。半生で仕上げたアオリイカと桜海老の揚げ玉を合わせ、最後にカラスミを振ったアーリオ・オーリオです。甘みを秘めたスパゲティには黒胡椒をピリッと利かせ、さらにそれを海鮮の風味でくるむ至福の一皿。どの食材も味が濃く、それらが合わさり膨らむ香味にはドキッとする迫力を感じます。
魚料理は、脂の乗りが頂点を迎えた有明海のスズキです。直前に薩摩黒じょかで熱々スープを注いでもらい、さっそく一口。パリッと焼いた皮目と柔らかな白身のコントラストが絶品で、熊本産アサリなどで取ったスープも複雑妙味。ふわっと立ち昇る旨味のオーラにうっとりしてしまいました。これに「田中さんのブロッコリ」と「岩本さんのムール貝」を添え、窪津さんいわく「九州版ズッパ・ディ・ペッシェ」の完成です。
「この店の主役は野菜と魚」と語る窪津さんですが、もちろんクオリティでは肉料理も譲りません。柔らかな身にたっぷり肉汁を蓄えた鴨のローストも比類なき完成度。それを一段高みに引き上げる美味なソースは「ひらまつ」伝統のヴァン・ルージュです。周りを固める築城町「ふく福ふぁーむ」のほうれん草、ビーツ、菊芋も溌剌と輝きを放っていました。
極上ミカンを使ったデザートも、鮮やかな感激に満ちた一品。生産者は「これほど上手に柑橘を作る方を知りません」と窪津さんが惚れこむ国東半島の「岸田果樹園」です。間にフロマージュブランのムースを挟み、丸々1個で提供されるミカンは、その言葉どおり非常にパワフル。噛んだ瞬間、純度の高い酸味と甘みがプシュッと弾け、「天然の恵みに勝るものなし」を実感。香りを広げるためにドライアイスを置く仕掛けも洒落ています。
現在も休日は西へ東へ飛び回り、究極の地産地消を目指す窪津さん。「イタリア人シェフが郷土料理を誇るように、僕も世界に誇れる九州料理を作りたいですね」。そんな“九州愛”は年を追って深まる一方。実現への取り組みは料理だけにとどまらず、仕入れルートの改革や生産者支援、後進の教育といった舞台裏にも及びます。
「将来独立を目指す料理人も多いのですが、僕がやりたいことを叶えるにはここで頑張るのが一番。組織にいるからこそ料理界に貢献できることは多いと思うんです」。そして、いずれは地方創生そのものに関わる仕事がしてみたい──とも。
いろんなものが萎縮しがちな世の中で、このような志あるシェフに出会うとなぜだか無性に励まされます。ひたむきに夢を追う姿はロマンにも似て、それを真っ直ぐ語れるからこそ「Kubotsu」は特別なレストランなのでしょう。
この記事は積水ハウス グランドメゾンの提供でお届けしました。
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店舗名
Ristorante Kubotsu(リストランテ・クボツ)(店舗写真)
ジャンル
- イタリア料理
住所
福岡市中央区天神2-5-55レソラ天神4F
電話番号
営業時間
11:30〜OS13:30/17:30〜OS20:30
定休日
火曜(祝・祝前日は営業)
席数
- テーブル30席
個室
4〜20名
メニュー
ランチコース4,972円・7,458円・12,430円・31,075円、ディナーコース9,944円・14,916円・19,888円・31,075円 ※サービス料込み
喫煙について
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- ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
- ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
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- ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
- ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。
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