平尾の住宅街にあるとんかつの名店で食べる名作ちゃんぽん

初めて訪れたのは、まだ駆け出しライターの頃。当時平尾にあった写真スタジオで撮影している時、「昼飯食いに行こうか」と先輩カメラマンから連れていかれたのが最初でした。到着するとどうやらとんかつ店のようでしたが、先輩はメニューを見ることもなく「チャンポン！」と注文するではありませんか。「とんかつ屋でチャンポン？」と思いながらつられて頼むと、これが美味いこと！　それ以来しばしば訪れているのが「味のかつえだ」です。

場所は高宮通りから一本入った平尾の静かな住宅街。店舗は最初に訪れた時から建て替えられていますが、半世紀以上同じ場所で営業している老舗です。開店直後から満席になるほどの人気店で、６台分ある駐車場もすぐに埋まるのは、近隣だけではなくわざわざ遠方から訪れる客が多い証拠です。

今回は昼のピーク時を少し外して訪問したにもかかわらず、テーブル席はほぼ満席という盛況ぶり。カウンターに着くなり目当ての「チャンポン」（1,000円）を注文して周囲を伺うと、およそ客の半分以上がチャンポンをオーダーしているようでした。
程なくもうもうとした湯気を上げながら出てきたちゃんぽんは、丼ではなく小石原焼の深皿で提供されます。厨房にオーダーを通すとき、ちゃんぽんを「一杯」ではなく「一枚」と呼んでいるのも、老舗ならではの味があります。

やや白濁したスープをレンゲで掬ってひと啜りすると何とも滋味深くコクのある味わいで、豚骨ベースながら独特の臭みなどはまったくありません。もともとはとんかつ専門店として創業した先代が、とんかつ用に仕入れる枝肉の豚骨を利用して従業員のまかない用に作ったのが始まりといいます。現在は二代目にあたる兄の時枝貴好さんと弟の修さんがそれぞれとんかつとちゃんぽんの調理を担当し、先代の味を守っています。

中太の麺はツルッとした食感で口中に収まり、コクのあるスープともよく絡みます。具材は豚肉、キャベツ、モヤシ、ニンジン、キクラゲ、カマボコ、天ぷら（練りもの）などが程よい大きさにカットされており、それぞれの味を引き立てるようなバランスが絶妙！　丼に具材が山盛りされたガッツリ系のちゃんぽんも悪くはありませんが、中年以上には胃腸に負担をかけず無理なく食べられるサイズ感がありがたいというのが本音です。スープが冷める間もなく、名店の名作ちゃんぽんをあっさり完食することができました。
メインのとんかつは、「ロースかつ定食」（1500円）、「ヒレかつ定食」（1850円）をはじめ、「かつ丼」（1000円）のほか、「串かつ」「ミンチカツ」など豊富なバリエーションが揃っています。残念ながらちゃんぽんととんかつのセットメニューはありませんが、定食のおかずはすべて単品でも注文できるので、２、３人で行ってシェアするのもいいでしょう。