グランドメゾン presents 「ハレの日レストラン」【第5回】

技と心に磨かれた「綺麗」を感じる、平尾の懐石料理店

公開日

最終更新日

ライター葉山巧

カメラマン平川雄一朗

一本木石橋

平尾

一本木 石橋

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一本木 石橋」を象徴する言葉を聞かれたら、僕は「綺麗」と答えます。料理や店構えもそうですが、何よりも店主・石橋康孝さんの料理に対する姿勢が「綺麗」なのです。2018年の開店以来、予約が難しくなる一方の懐石料理店。数奇屋造りの一軒家はこの日も満席でした。
玄関をくぐると、カウンターの向こうで石橋さんがお出迎え。常に紳士的なその接客には温かな洗練があり、こちらも賓客として礼節を返したくなります。義務や緊張からでなく、客が「自然とそう振る舞える」のも名店の条件かもしれません。

一本木石橋

今宵の食事はカウンターですが、2階の個室もおすすめ。嘉麻市の職人集団「久衛(ひさもり)組」が手がけた、趣ある空間でゆったり食事が楽しめます。

一本木石橋

注文したのは15,000円のおまかせで、石橋さんが「シュッ、シュッ」と一心に削る節の音が開幕の合図です。日本料理の「型」を汲むその所作は実に端正。そこから漂う静かな高揚を、間近で感じられるのはカウンター席だけの特権です。
枕崎産の荒節・枯れ節・メジマグロ節の3種を使い分け、料理に合わせた出汁を引くのがこの店の流儀。「私は本物の食材に触れる喜びと、出来たてを味わう幸せを大事にしています」と石橋さん。「毎回直前に節を削るのもこれが理由なのです」
そんな生真面目な店主の理念は、京都の「高台寺 和久傳(わくでん)」、東京の寿司店「海味(うみ)」、伊勢の「懐石かみむら」など錚々たる修行先で磨かれました。そこから連なる技と心は、はたしてどんな愉悦を結ぶのでしょう。

一本木石橋

先付は、北海道産バフンウニの銀杏醤油がけ。旬真っ只中の銀杏とウニの絡み合う香りは絶品で、とろける舌触りも文句なく、一品目から引き込まれてしまいました。外の気温を考慮して、ほどよい熱々で供する配慮もさすがです。

一本木石橋

続いては、石橋さんがコースのメインに位置づけるお椀。「懐石の命は出汁ですから」と明言するだけに、全霊を傾けた渾身の一杯です。この日の具材である対馬産エボダイとナスのオランダ煮のコクを計算し、枯れ節7:荒節2:鮪節1で仕立てた、淡くさっぱりした味わい。なのに出汁のうま味は味蕾の奥まで沁み入って、“日本に生まれた喜び”で包みこんでくれました。

一本木石橋

琵琶湖産の子持ち鮎には二度驚かされました。みっしり詰まった卵の量と、それがハラリとほどける舌触りが素晴らしいのです。「これほど卵の多い鮎は本当に貴重。京都時代から仲の良い川魚屋さんが卸してくださったんです」。これも常に生産者への感謝を忘れず、地道に縁をつむいできた誠意の賜物。他店も羨む高級食材が、いくつも「石橋」に集まる理由が少し見えた気がしました。

一本木石橋

楽しみにしていた(春巻ならぬ)秋巻も登場。秋の味覚を詰め込んだ季節限定の名物です。パリッとした衣を噛むと、ハモと松茸の芳香がフワッと散開。その後に続く、陶酔にも似た余韻がなんともたまりません。旬の至福、ここに極まれり!

一本木石橋

そして常連たちを虜にする寿司も、やっぱり磐石のうまさでした。コースで必ず3貫出る寿司は、前述の修行店「海味」譲り。赤酢と米酢を合わせたシャリは懐石を邪魔せぬ柔らかな味です。このコハダも酸味は抑えめで、かつ感涙ものの弾力が引き出されていました。なんという完成度…‥。これはいつか、噂に聞く寿司メインのコースも試す必要がありそうですね(貸切の場合のみ。18,000円~)。

一本木石橋

終盤に近づき、2~3種類を小盛りで提供する飯物の出番。とくにイクラの卵とじ丼は僕のお気に入りで、甘くジューシーな出汁のおかげで満腹寸前の胃にもスルリと収まります。が、もはやこれ飲物のカテゴリーでは?(笑)
その後のデザートを経て、全9品のコースは優雅に完結。伝統を正しく守り、粋な独創性も散りばめる品々は、ひたすら純度の高い満足だけを残してくれました。

一本木石橋

「私の料理は引き算なので、SNS映えはしないのですが」と石橋さんが微笑みます。「今後もお客様を楽しませるための努力は惜しみません。苦しいコロナ禍の昨今でも、皆様と元気を分かち合えるような店を作るために。それができたら、私はこの仕事を一生頑張れると思うんです」
若々しい情熱を瞳に宿し、真っ直ぐそう言い切る石橋さん。お会いするたび、その純粋さ、謙虚さ、愛情に深く打たれます。きっと僕は、そんなところに「石橋」の「綺麗」を見るのでしょう。

この記事は積水ハウス グランドメゾンの提供でお届けしました。

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店舗名

一本木 石橋(店舗写真

ジャンル

  • 日本料理

住所

福岡市中央区平尾1-9-13

電話番号

092-534-7560

営業時間

12:00~OS13:30/18:00~OS20:00

定休日

不定

席数

  • カウンター6席

個室

2〜8名

メニュー

昼のおまかせ6,000円〜、夜のおまかせ15,000円・20,000円

喫煙について

禁煙
  • ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
  • ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
  • ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
  • ※OSはオーダーストップの略です。
  • ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

記事に関する諸注意

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