40歳からのやんわり無化調【1】
謳わない美学。それが「佐渡友」流の無化調ラーメン。
福岡市・東区
麺や 佐渡友
山田 祐一郎
1978年福岡県生まれ。2003年よりライター業に携わり、2012年8月に「KIJI (キジ)」を設立し、フリーランスとして独立。同時に、日本で唯一(※本人調べ)のヌードルライターという肩書きで本格的に執筆活動を開始する。飲食関連の専門誌、情報誌、ウェブマガジンなどの原稿執筆を手掛ける。毎日新聞で連載中の麺コラム「つるつる道をゆく」をはじめ、連載歴多数。著書に「うどんのはなし 福岡」「ヌードルライター 秘蔵の一杯 福岡」。「1日1麺」をモットーに、美味しい麺との出会いを求め、近年では国内のみならず海外(台湾、タイ、イタリア)にも足を運んでいる。日々食した麺の記録はWEBマガジン「その一杯が食べたくて。」に掲載中。2019年9月から父の代から続く宗像市にある製麺所を受け継ぎ、現在は「山田製麺」の代表も務める。http://ii-kiji.com/
自分が自分らしくいられなければ、
ずっと続けていくことはできない。
ぼくが年を重ねると、これまで感じてきた「おいしさ」も一緒に年をとる。そんな風に自分のおいしさの変化を自覚してきたのは、40代に入ってからだ。
昔あんなに好きだった料理が一度に多くは食べられない。その頻度も高くなくていい。
それはもう、ある意味、仕方のないことだ。こういう今の自分と付き合い続けていくほかない。
ライフワークとしてきた麺の探求にも変化が生じた。あれだけ喜び勇んでやっていた麺の連食はぐんと減ったし、新店をむやみやたらと追わない。
替玉、大盛りのオーダーも稀だ。前向きな言葉で表現するなら、一杯、一杯、丁寧に食べるようになったということだろうか。
そんなわけで、麺を食べようという時、これまで以上に店を吟味している。そのセレクトにおいて、一つの指標になっているのが「無化調」。いわゆるうま味調味料を使っていない麺類だ。
もちろん、ぼくは完全なる“無化調原理主義者”ではないので、それしか食べないというわけではない。だけど、やっぱり自然と惹かれている。その足跡を、これからこのコラムに残していこうと思っている。
ちなみに、無化調麺を追い求めていこうと考えてはいるが、厳格にはやらない。例えば醤油。醤油にアミノ酸が入っていようとも、お店さんがそれぞれに思う「無化調」を表現していれば、ぼくとしてはそこは気にしないというスタンスだ。
ぼくの興味、情熱は、完全なる「無化調麺」の収集には向かっていない。これからも楽しく、おいしく麺を食べ続けていきたいから、今の自分に合う「無化調麺」が気になるし、そういうお店を見つけた喜びを、同じ感覚の人と分かち合いたい。店主さんたちが「無化調」に至った経緯、料理における考え方、総じてアティチュードが重要。だから、本コラムのタイトルも「“やんわり”無化調」としている。
前置きが長くなってしまったが、改めまして、コラム「40歳からのやんわり無化調」一発目。どこを紹介しようか、思い切り悩んで、悩んで、選んだのが、福岡市東区に店を構える「麺や 佐渡友(さどとも)」だ。
「佐渡友」の好きなところは、店主・佐渡友良二さんが提供したいと願っている理想の一杯と、ぼくから見た実際に提供されているラーメンに、少しのズレもない点だ。思いと表現の完全なる一致。
佐渡友さんは元々、福岡にある豚骨ラーメン店でラーメンづくりを学んでいた。そしてその経験をもとに、今度は醤油スープの中華そば店で修業。最終的な修業先のラーメンが土台となり、2016年にこの「佐渡友」を開業した。
佐渡友さんの頭にあったのが「体に良いラーメン」。「自分の子供に毎日でも食べてほしい。胸を張って食べさせたい。そんなラーメンを作っていこうと決めました」。自身の子供に向けた思いは、もちろん同じように「佐渡友」の暖簾をくぐる人々へも向けられる。ひたすらに、まっすぐな思い。商売だから、効率的だから、そんな嘘や妥協が一切ない。
スープに力を入れれば、自ずと麺への思いが膨らむというもの。店では開業以来、自家製麺を貫く。スープの仕込みも、麺の仕込みも、基本的には佐渡友さん一人でまかなう。そうなると体力的にも、時間的にも負担が大きいが、これを負担と思わないのが、佐渡友さんだ。
以前、著書でインタビューした際、「家族との時間もかけがえのないもの。もちろん、暮らしの土台を支えるのは仕事ですから、どちらも大切です。ただ、一つ言えるのは、自分が自分らしくいられなければ、家庭も、そして商売も、ずっと続けていくことはできない」というような話をしてくれた。
単純な負担ではなく、佐渡友さんは日々、徳のようなものを積み上げ続けているのだと思う。負を担ぐのではなく、富(ふ)を担いている。
そういえば、この「佐渡友」では、大々的に「無化調」であることを謳っていない。記憶が間違っていなければ、壁に掛けてあるポスターに記された文章に一説の中に、ちらっと「無化学調味料」という一言があるだけ。
ぼくはそのスタンスにも惹かれている。なんというか、押し付けがましさがなく、さりげなく、日々のラーメンにやさしさを添え続けているところに“親からの愛”と同じような温かさを感じる。
「そうなんですよ、特に目立つようには謳ってないですね。無化調ではあるんですが、それは自分自身のこだわりなだけで、お客さんに無理強いすることでもありませんから。普通にラーメンをおいしく食べ、また来たいなと自然に選んでもらえるような、そんな店でありたいんです」
醤油ラーメン以外にも、シーズン毎にスポットで提供される「酸辣湯麺」「カレーラーメン」にもファンが多い。定期的に恋しくなる東区の名店だ。
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店舗名
麺や 佐渡友(店舗写真)
ジャンル
- ラーメン
住所
福岡県福岡市東区三苫6−13−38
電話番号
営業時間
11:00~OS14:45 ※売り切れ次第終了
定休日
月曜、ほか不定休あり
席数
- カウンター2席
- テーブル12席
- 小上がり8席
個室
なし
メニュー
醤油らー麺750円、醤油らー麺こってり!850円、醤油らー麺魚介ガツン!!880円、麺大盛り(麺1.5倍)160円、かしわおにぎり150円、チャーシュー丼500円
喫煙について
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- ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
- ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
- ※OSはオーダーストップの略です。
- ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
- ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
- ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。
記事に関する諸注意
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