グランドメゾン presents 「ハレの日レストラン」【第12回】

古き良き伝統・文化を語り継ぐ、二つ星日本料理店の矜持

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最終更新日

ライター葉山巧

カメラマン平川雄一朗

古川

住吉

御料理 古川

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ただの食事の場ではない、もっと深い価値が日本料理店にはある──。「御料理 古川」を訪ねるたび、そんなことを感じます。開業わずか1年でミシュラン二つ星を獲得し、一躍福岡グルメの最前線に躍り出た実力店。その歩みを支えるのは、日本に息づく伝統・文化や、そこに関わる人々への敬意です。

古川

四方をマンションが囲む一画に、この夜も「古川」の看板は温かく灯っていました。キャナルシティ博多も近い場所ですが、どこか孤島めいた静けさは“非日常への入口”を強く想起させます。

古川

しかし中へ入ると一転、気さくな雰囲気と、店主・古川誠さんの笑顔にホッとします。古川さんは大阪の名店「味吉兆」で修業し、「味吉兆 ぶんぶ庵」では料理長を務めた熟練職人。2018年に故郷の福岡で開業すると、料理を通して「日本の“良きもの”を伝えること」をテーマに掲げました。「それは先に述べた伝統・文化であり、優れた食材や器などの工芸品であり、それらを届けて下さる生産者・卸業者・作家さんたちの努力です」。

古川
古川

艶やかな大川組子、博多織、掛け軸など、随所を飾る品々にもその想いはうかがえます。玄関には月々の行事にちなむ装飾が置かれ、2月のこの日は節分用の虎豆が。演出センスが良いせいか、どれも小粋なオブジェのようです。

古川

さて、ここからはお待ちかねの食事の時間。料理は月替わりで、今宵頼んだのは16,500円コース(10品前後)です。1品目の突き出しは、なんと1930年代のバカラに盛ったぬた和え。加布里産のハマグリや赤貝の程よい塩気が、橙の酸味と爽やかに調和しています。

古川

続いてはタラの白子のみぞれ餡に、金時人参と柚子のあられを浮かべた椀もの。葛仕立てでトロリとした出汁の、香り高さと舌触りは実に風雅でした。唇に心地よい器は雪月花と呼ばれる輪島漆器です。

古川

お造りは旬の氷見寒ブリ。大トロ並みの脂を蓄えた身は絶品で、凛とした刺激の辛味大根とも相性抜群です。隣のアオリイカは3日間寝かせた福岡産で、より甘みの引き立つ塩麹でいただきました。

古川

そしてこれが、「古川」のシンボルとも言える八寸です(写真は3人前)。この日は(左から)黒毛和牛のしぐれ煮、いなり寿司、みかん味醂でコクを出した玉子焼き、甘めに炊いた空豆、骨まで食べられるイワシ、フキノトウの赤味噌田楽、クレソンとあまおうの白和え。一つひとつの味が揺るぎなくも繊細で、旬素材の多彩な香りも印象的でした。

あえてシンボルと呼んだのは、古川さんが特に多くの“ストーリー”を八寸に盛りこむから。例えばいなり寿司は「田畑を実らせるため、神様と伏見稲荷に降りたキツネの大好物」だし、イワシや一緒に添えたヒイラギは「節分の鬼が昔から嫌うもの」であり、そこから「京都ではこの2つを一緒に結び、玄関に鬼除けとして飾るんですよ」というトリビアにも発展します。そう、これぞ古川さんの「伝えたい」を凝縮したメイン料理なのです。

古川
古川

炊き合わせは、京都・聖護院大根と福岡産のフキ、下関のほうれん草に、なにわ伝統野菜の板持海老芋。それぞれ異なる手法で味を入れ、素材ごとの微妙な味の差を楽しむという専門店ならではの贅沢が堪能できる逸品です。
羽釜の熱々炊き込みご飯を平らげたら、最後はお手製のデザートへ。ブランデー香る4種の柑橘のゼリーと、ほろ苦さが快いキャラメルアイス。さらに椿餅と店主が自ら点てたお抹茶で、心まで潤う食事は穏やかに終了しました。

古川

正統派の懐石をベースに「福岡だから表現できる料理」を目指したいと言う古川さん。なおも己の料理を磨く一方、今後も客に「伝えること」を続けたいと熱く語ります。
「いろんな要素が集まる日本料理店だからできることですし、僕らの仕事の意味もそこにあると思うのです」。賑やかな食卓を囲み、初めて知る日本の麗しい慣習に驚いたり、素晴らしさを改めて噛み締めたり……。それらを体験するのに、これほど楽しい“学び舎”もないかもしれません。

古川

そして最後に「接待や記念日でのご利用も嬉しいけれど」と古川さんがにっこり。「お子様連れの団らんを見るのが一番幸せですね」。個室を設けた最大の理由も「未就学児を同伴しやすいように」との配慮でした。もちろんそこには、“良きもの”を未来へ繋ぐ世代に育ってほしいとの願いもあるはずです。この小さな一石が、きっと豊かな日々の基礎になる。それを信じて日本料理と向き合う「古川」を、誰が愛さずにいられるでしょう?

この記事は積水ハウス グランドメゾンの提供でお届けしました。

店舗名

御料理 古川

ジャンル

  • 日本料理

住所

福岡市博多区住吉3-9-2 URBAN3-1F

電話番号

092-409-6113完全予約制

営業時間

12:00〜OS14:30/18:00~OS22:30

定休日

月曜

席数

  • カウンター6席
  • テーブル8席

個室

2〜10名

メニュー

昼6,600円・11,000円・16,500円、夜11,000円・16,500円 ※4月より夜は16,500円のみ

  • ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
  • ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
  • ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
  • ※OSはオーダーストップの略です。
  • ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

記事に関する諸注意

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