路地裏の名店【10】

シェフの想いと素材の力ほとばしる!昼夜各1組限定、とっておきの隠れ家へ

公開日

最終更新日

ライター森絵里花

カメラマン森絵里花

南区桧原 アグリキュルチュール

桧原

Agriculture(アグリキュルチュール)

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2021年の秋、私はインスタグラムで開業準備中の気になるレストランを見つけました。そこには、生産者の元へ足を運ぶシェフの姿や生き生きとした食材、素敵な器に盛り付けられた料理の数々がアップされており、私の心が色めき立ったのは言うまでもありません。
その後、ランチとディナーに伺い「ここは“とっておき”だ」と確信。お店が2年目を迎えた今、満を持してご紹介したいと思います。

南区桧原 アグリキュルチュール 外観

南区の閑静な住宅街に、ひっそりと佇むレストランの名は「Agriculture」「アグリキュルチュール」とはフランス語で「農業」を指す言葉です。「農」は生産者、「業」には自身の仕事(料理)という意味も込め、「生産者と料理人の垣根を超えて農業に目を向け、未来に繋がる料理を……」との思いで名付けたそうです。

「Agriculture」では、「世界三大珍味」と呼ばれるような高級食材を使いません。九州の自然栽培や固定種在来種、無農薬野菜をはじめとした元気いっぱいの素材を主役にコースを組み立てます。

さぁ、早速中へ入りましょう。ヒノキの扉を開くと、4人がけのテーブル席とまるでスタジオのようにおしゃれなオープンキッチンが目に飛び込みます。元はガレージだったという建物を、店舗設計や家具製作を手掛ける「具具工房」や友人の職人と共にフルリノベーションしたそうで、細部にまでこだわりがキラリ。吹き抜けとなった天井、漆喰の壁や木の風合いが生きた空間は、実に居心地が良いです。

南区桧原 アグリキュルチュール シェフ

オープンキッチンでイキイキと腕を振るうのは、オーナーシェフの小島智典さん。“料理の鉄人”でもその名を轟かせた「KOJIMATEI」の小島孔典シェフを父にもち、父の姿に憧れてこの世界に飛び込みました。父の元や日本料理店で下積みし、浄水通の「フランス料理KOJIMA」では15年に渡りシェフとして活躍。しかし、段々と“自分の料理を作りたい”との思いが高まっていったと話します。

「大きな転機は約6年前です。当時の僕には健康的な食事という概念はあまりなく、体重も増え体調を崩し、薬に頼る日々が続いていました。そんな僕を心配した妻が“普段の食事から見直してみよう”と言ってくれたんです。そこで、改めて食材について勉強することに……。やがて『この野菜や肉は、どんな人がどんな風に育てているのだろう?』と自分の目で確かめてみたくなり、そこから生産者の方々を訪ねるようになりました」

南区桧原 アグリキュルチュール 食材

「そうして真摯な作り手の方々に出会い、“農法、土壌によって食材の味は変わる”ということを知り、感銘を受けたんです。食材を見直すことで体調も良くなったことから、『身体の中から喜びを感じる料理』という自分の目指す道が決まりました。コースでお出しする食材、調味料、器をはじめとしたテーブルウエアに至るまで、思いを込めて作られたものばかりなので、一つひとつ楽しんでいただけると嬉しいです」。

そう笑顔で話す小島シェフの目の前には、野菜や果物、米、調味料がズラリと並んでおり、これがどんな料理に変わるのかワクワクが止まりません。

南区桧原 アグリキュルチュール ディナー

現在はランチ、ディナーともに各1組限定(各4名以上は要相談)で、2日前までの予約制となっています。コースの所要時間は2時間半から3時間ほどで、ゆったりと食事を楽しめますよ。今回は約11品が登場する「ディナーコース」(16,500円)をいただきました。

最初に供されたのは、サクッと弾ける食感と香味がたまらないアミューズです。
「成清海苔店」(柳川市)謹製の優等海苔に、無肥料・無農薬で育った「かえるすたいる」(鹿児島)の緑米を重ね、上には「なかむら耕作所」(熊本)の新生姜で作ったピクルスと長崎産のヤリイカが。緑米は50度洗いして「玉名牧場」(熊本)の仔牛のボーンブロス(出汁)で炊き、薄く伸ばして焼いて、提供前に「堀内製油」(熊本)のなたね油で揚げて……と、見えないところまで何とも手が込んでいます。

南区桧原 アグリキュルチュール 料理

続いては、車海老と帆立を使ったオードブルを。サッと湯通しして甘味を引き出した車海老とホタテの美味しさもさることながら、主役となるのはその上。在来種の野菜を育てる“種採り農家”「岩崎農園」(長崎)の「黒田五寸人参」で作るムースと「玉名牧場」の仔牛のコンソメジュレです。青草や干し草を食べ、“通年放牧”で育った「玉名牧場」の仔牛のコンソメは、ピュアでくどさは皆無。舌の上でするりと溶け、豊かな旨味の余韻がムースの甘味と合わさり、魚介を引き立てます。

南区桧原 アグリキュルチュール 料理
南区桧原 アグリキュルチュール 料理

その後、長崎のヤイトガツオを使った一皿や、「黒岩牧場」(宮崎)の「黒岩土鶏」を使った料理が供され、「マルマメン工房」(鹿児島)オリジナルの平麺を使った一品(写真)も登場しました。麺の上には、揚げた黒田五寸人参の葉と「岩下椎茸」(大分)の特大原木椎茸が鎮座。全粒粉の香りが広がる麺には、「岩下椎茸」(大分)の干椎茸を刻んで作った旨味たっぷりなクリーム仕立てのソースが絡めてあります。原木椎茸は生の状態からコンフィにしているそうですが、これがもう肉厚ジューシーで香り爆発! とても美味でした。

「マルマメン工房」は、農薬・化学肥料を一切使わず大豆や麦を栽培する農家なのですが、その全粒粉を使った小島シェフお手製のリュスティックも実に香り豊かです。

南区桧原 アグリキュルチュール 肉料理

しっとり火入れされた魚料理に続く肉料理は、イギリス・ウェールズで放牧されている最高級ラム「ウェルシュラム」のロースト。雑味のない上品な旨味にうっとり……ですが、共に主役を張る「日本ほうれん草」の美味しさにも驚きました。このほうれん草は、「池松自然農園」(福岡)にて無農薬・無化学肥料で栽培されているそうで、根っこまで食べられるのは健康な証。甘く、香り良く、とにかく味が濃くて、オーガニックのディションマスタードを効かせたクラシカルなソースに負けることなく光っていました。

最後は、旬の果物と「ノガミファーム」(福岡)のレモンバームを使ったデザート、自家製の茶菓子、自然栽培コーヒーまたは八女の無農薬紅茶でフィニッシュ。
ちなみに、コースに用いる器は沖縄の作陶家・紺野乃芙子さんに作ってもらったものだそうです。風合いがたまらなく素敵で、細部まで心ときめくひと時でした。

南区桧原 アグリキュルチュール テイクアウト

また、店内の一角では自家製のラー油やグラノーラに加え、「なかむら耕作所」や「マルマメン工房」といった縁のある生産者さんの商品も販売していますよ。

単に素材を押し出すのではなく、コンソメや重奏感のあるソース、食材の火入れといった確かなフランス料理の技で食材の味や香りを一層高めている小島シェフの料理。満腹になっても食後感は軽やかで、何より「カラダが喜んでる!」を実感できるはず。大切な人との食事や、自分を労りたい時に訪れたい一軒です。

*2022年内はコース営業終了。2023年1月は、1月10日よりコース予約可能

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店舗名

Agriculture(アグリキュルチュール)

ジャンル

  • フランス料理

住所

福岡市南区桧原1-28-14

電話番号

非公開 ※InstagramのDMまたはメールにて2日前までに要予約

営業時間

11:00〜14:30/17:30〜21:30(最終入店18:30)

定休日

日祝日、その他不定あり

席数

  • テーブル6席

個室

なし

メニュー

ランチコース11,300円(ノードリンクの場合、お冷代1人300円)、ディナーコース16,500円〜(要ワンドリンクオーダー)、お子様プレート(3歳〜小学生低学年向け)3,600円 ※コースのサービス料10%

  • ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
  • ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
  • ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
  • ※OSはオーダーストップの略です。
  • ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

記事に関する諸注意

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