路地裏の名店【16】
随所に味わいのサプライズがいっぱい!大手門の隠れた名フレンチ
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最終更新日
ライター諫山力
カメラマン諫山力
地下鉄大濠公園駅から徒歩約3分。アパートやマンションが集まる細路地で、グリーンに彩られたファサードが思わず目を引く「Galinette」。
味のある魚の骨のイラストと、ひらがなで「がりねっと」と手掘りされた木の看板が目印です。この日はお客の9割が注文するというコースを目当てにお邪魔しました。
店内はカウンターとテーブルの中間のような大きなカウンター11席をメインに、5〜6名を対象とした個室を用意。席数は多くはないため訪問前に予約するのがベターです。
コースはアミューズ、前菜1品、生パスタ、肉料理からなる「おまかせ4品コース」(5,600円)、前菜が1品増える「おまかせ5品コース」(6,900円)の2コースが基本。メインの肉料理が不要な場合は「おまかせ4品コース(メインなし)」(4,500円)を選ぶこともできますが、ほとんどの人がメインディッシュ付きのコースをセレクトするそうです。
アラカルトの注文も可能なのですが、価格を見ても分かるように断然コースがコスパ抜群! さらにオーナーシェフの山口義紀さんは「私一人で調理もサービスも行っているため、アラカルトだとどうしても提供までにお時間をいただいてしまうんです。それもあり、ご予約いただいた際にコースをおすすめさせていただいています」と話します。
山口さんは大学では建築を専攻しましたが、会社勤めは向いていないと飲食の世界に飛び込んだ、現場叩き上げの料理人です。最初は志賀島のイタリアンレストランで調理の基礎を学び、その後、同店のシェフのすすめもありフランスに渡航。およそ5年弱にわたり、フランスの星付きのレストランを渡り歩き、料理の腕を磨いたそうです。その後、東京のフレンチレストラン、ワインバーなどを経て、2019年7月に「Galinette」を開業。「私はもともと佐世保市出身で、福岡は土地勘がなかったのですが、大手門の静かな雰囲気、一人で無理なくやれそうなちょうどいい大きさの物件との出合いもあり、ここで開業することに決めました」と山口さんは話します。
この日いただいたのは「おまかせ4品コース」。まず供されたアミューズはフォアグラを巻いた近江産鴨の胸肉を低温調理した一品。鴨肉のしっとりとした口当たり、濃厚なフォアグラはもちろん美味しいのですが、スパイスをほどよく効かせた紫キャベツのマリネが良いアクセントに。添えてあるキンカンのマーマレードも自家製で、鴨肉と一緒に食べると味わいがガラリと変わります。鴨肉は表面が軽く燻されており、風味や香り、味わいの調和が素晴らしいです。
次はアラカルトのメニュー表にも書かれていた前菜「真鯛と菜の花と晩白柚のマリネ」です。菜の花はチーマ・ディ・ラーパというイタリア野菜で、苦味がそこまで強くなく、香りや風味が豊か。下茹でした葉と茎、ピューレも一緒に味わいます。真鯛と晩白柚はイタリアの魚醤「コラトゥーラ」でマリネしており、生ハム原木の骨から取ったコンソメジュレとともに奥行きのある旨味を演出。食べ進めていると期せずして晩白柚の爽やかでフレッシュさが口いっぱいに広がり、思わず「お!」と驚かされました。
「Galinette」の料理は随所にこういった驚きがあるのが大きな魅力だと感じます。山口さんは「いわゆるトラディショナルなフランス料理は、結婚式やホテルなどで味わったことがあるという人が多いと思います。街場のフレンチレストランがそういった伝統的な料理だけで勝負するのはなかなか難しい。そういった考えから思わず驚くような味や香りの仕掛けを意識しながらレシピを考案しています」と話してくれました。
カウンターキッチンで調理していた山口さんがおもむろに店の隅に置かれた調理器具で作業を始めました。これは「トルッキオ」と呼ばれる手動のパスタマシンで、イタリア・ヴェネト州の伝統的なパスタ「ビゴリ」を作る専用の道具です。生地を機械に入れ、ハンドルを回すと下から麺が出てきました。まさに作りたての生パスタですね。
この日いただいた生パスタは「カチョ・エ・ペペ」。アマトリチャーナ、カルボナーラと並んでローマの三大パスタに数えられる一品です。カチョはチーズ、ぺぺはコショウを指すように、オリーブオイル、すりおろしたパルミジャーノ・レッジャーノで和えたパスタに黒コショウをかけるだけというシンプルなメニューですが、「Galinette」では糸島豚を使った自家製ロースハムを上に敷き詰めて贅沢なスタイルになっています。
チーズの濃厚な旨味をまとった生パスタはモッチモチの食感で、弾力もしっかり。ロースハムのしっとり感、程よい塩気、噛むほどに染み出してくる旨味も感動必至です。コースの料理内容は月替りですが、「カチョ・エ・ペペ」は要望があればほぼ提供できるメニューだそうですよ。
メインの肉料理は「糸島豚ロースと牧草牛フィレのロースト」(写真は2人分)です。提供直前、カットする際に肉汁が染み出てくるよう絶妙な具合に火を入れる山口シェフの技術の高さはもちろんですが、こちらの料理で特に注目すべきは、添えられたソースや調味料。クミンやカカオマスなどを調合したシーソルト、牛スネの骨から取ったフォンドボーにグリーンペッパーを効かせたソース、クセになる辛さと、つぶつぶ感が際立つ自家製マスタードを用意し、味変しながら味わえるのが魅力となっています。しかもどれも工夫が凝らされてあり、こちらも調味料を変えるごとに驚きがいっぱい! 最後まで飽きずにいただくことができました。
店奥にはワインセラーもありました。価格や生産国、味わいの特徴から客が好みで選べるスタイルで、「料理もワインも、コスパ重視」と山口さんが話すように、1本4,000、5,000円台のものがほとんど。山口さんがテイスティングし、料理に合う、美味しいと感じた銘柄を取り揃えているそうです。ぜひ至極の料理と一緒に厳選されたワインも楽しんでみてください。
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店舗名
Galinette(ガリネット)(店舗写真)
ジャンル
- フランス料理
住所
福岡市中央区大手門3-12-13 石川ビル1階
電話番号
092-737-1545(土・日曜のランチは予約制)
営業時間
12:00〜OS13:00(土・日曜のみ)/18:00〜OS21:30
定休日
月曜
席数
- カウンター11席
個室
5〜6名
メニュー
おまかせ4品コース(メインなし)4,500円、おまかせ4品コース5,600円、おまかせ5品コース6,900円、土日限定5品ランチコース(予約制)3,600円、土日限定6品コース(予約制)4,500円
喫煙について
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- ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
- ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
- ※OSはオーダーストップの略です。
- ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
- ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
- ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。
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