この冬、蕎麦屋で鴨鍋を楽しみたい!【2】

人気ぶりは蕎麦以上? 吟味を尽くした素材のうまさに圧倒

公開日

ライター葉山巧

カメラマン葉山巧

いまとみ

高砂

蕎喰(そばぐい)いまとみ

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昨今“蕎麦屋激戦区”になりつつある高砂エリアで、2003年の創業以来、根強い支持を集め続ける「蕎喰(そばぐい)いまとみ」。40代のとき異業種から転身し、独学で技術を磨いた職人・今富愼介さんが営む人気店です。その実力は、宮崎県椎葉村の生産者が「うちの“焼畑蕎麦”を使いませんか」と持ちかけた逸話からも窺えます。この希少な最高級素材で打つ「十割荒挽きぐるみ」(1,500円)を、いつでも気軽に注文できる──。蕎麦マニアなら、それがいかに価値ある贅沢かお分かりでしょう。

いまとみ

メニューを見ると、アテと酒が充実しており“蕎麦屋呑み”も楽しそう。けれども今日の本命は、食べれば誰もが惚れ込むと評判の「鴨鍋」です(1人前5,300円。前菜・せいろ付き。当日午前中までに要予約)。「電話で『ここ鴨鍋屋さんですよね?』と聞かれることも多くって」と笑う今富さん。店の主役である蕎麦と並び立ち、時には霞ませさえもする、今回はそんな名物鍋のご紹介です。

胸躍る時間は、前菜の3種盛りから始まります。この日は自家製豆腐の味噌漬け、わさびと蕎麦つゆで食す大和芋のすり下ろし、サーモンの麹漬け。とりわけ定番でもある豆腐の味噌漬けは、クセになりそうなねっとり感と、もろみに3ヵ月漬けて引きだす旨みが印象的です。小品ながらもひと手間かけた、好ましい酒の友でした。

そして、ついに噂の鴨とご対面(写真は2人前)。皿に咲く大輪の花は、フランス原産のバルバリー種という上質な鴨で、身の柔らかい雌だけを東北から取り寄せるそうです。「鴨にも色々ありますが、これが一番うちの蕎麦つゆに合うもので」と今富さん。「脂の多い合鴨に比べ、脂が少なく粒子も細やか。鍋全体がさっぱりするので、いつもより野菜をたくさん召し上がれると思いますよ」

いまとみ

福岡県産の京菜、久留米の明星ねぎ、大分のクレソンなど、野菜類も吟味を重ねた顔ぶれがずらり。さっそく鍋にと思いきや、スープが沸騰していません。しかし今富さんは「大丈夫」という表情。「うちの鴨はとても柔らかく、煮立った鍋ではすぐに固くなるので70℃以下に抑えています」。食材への慈しみを感じさせる説明に頷きながら、まずはきのこと芯の白いネギを鍋に投じました。

いまとみ

さらに野菜の上に鴨を並べ、「30秒以内にどうぞ」という助言を守ってすぐに一口。ふっくらミディアムレアに仕上がった、その鴨のうまさときたら! 洗練された野性味と、極上の繊維質がつむぐ弾力が、この上ない感動を味蕾に走らせます。
今まで何度も食べた鴨ですが、これは未体験にして規格外。久しぶりに「誰かを連れてきたくなる料理」でした。そこからは夢中で箸を動かすばかり。数秒だけしゃぶしゃぶしたネギやクレソンも、自然の滋養を食らうような高揚感に満ちています。

いまとみ

鍋の折り返しではソフトな舌触りのそばがきが登場し、効果的なアクセントに。3種の返しを鍋用にブレンドしたスープに浸すと、また格別の味わいでした。すっかり無言になった僕を見て、今富さんが目を細めます。「ほとんどが生食できる素材なので、あまり加熱せずに食べられます。すぐ食べ頃になるから、お酒を飲みながらだと忙しいかもしれませんね」

いまとみ

驚嘆の余韻を楽しみながら、最後はせいろに舌鼓。熊本県球磨郡水上村の粉で打つ十割蕎麦は、モチっとした歯応えと、その奥から覗く野趣が魅惑的でした。鴨・野菜・蕎麦が調和して、次元の違う満足をもたらす「いまとみ」の鴨鍋。前菜が鴨焼きに、蕎麦が鴨せいろになる豪華版「鴨祭り」(1人前7,500円)もあり、接待や大事な会食に引っ張りだこだそうです。

いまとみ

「蕎麦は大衆の食べ物ですが、鴨鍋というご馳走を出すことで“蕎麦屋はハレの場にもなるんだよ”と証明したかったんです」。そんな今富さんのこだわりは料理にとどまらず、天候に合わせて選曲するジャズ、自らいける生花など、店舗全体に及びます。「ここは私の茶室みたいなもの」という一言で、その真摯さのすべてが腑に落ちました。もてなしの真心を刻む空間あればこそ、蕎麦も鴨鍋も、類まれな輝きを放つのです。

いまとみ

店舗名

蕎喰(そばぐい)いまとみ

ジャンル

  • 蕎麦

住所

福岡市中央区高砂1-22-9

電話番号

092-526-4504鴨鍋は当日午前中までに要予約。夜はコースのみ

営業時間

11:30~OS13:00/17:30~OS19:00

定休日

月2回不定

座席

  • カウンター8席
  • テーブル16席

個室

3〜4名

メニュー

そば(温・冷)900円~、天ぷら盛り合わせ1,600円、だし巻卵900円、どぜう唐揚げ1,200円、蕎麦懐石(昼)4,200円・(夜)6,500円~

  • ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
  • ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
  • ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
  • ※OSはオーダーストップの略です。
  • ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

記事に関する諸注意

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