万太郎の喫茶と定食ノスタルジア【1】

「STEREO」が引き継いだ創業47年の昭和レトロな「喫茶コティー」の美味しいごはん

公開日

ライター上野万太郎

カメラマン上野万太郎

喫茶コティー

高砂

喫茶コティー

上野万太郎

ここ15年以上、外食写真日記的なブログ「万太郎.net」で福岡を中心とした飲食店の人々やお客さんと関わったエピソードを発信。著書は「福岡カフェ散歩」(書肆侃侃房/2012年)、「福岡のまいにちカレー」(書肆侃侃房/2014年)。
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はじめに

お久しぶりの上野万太郎です。1年ちょっと前に同じ系列のWEBマガジン『muto』(ミュート)に連載先を引っ越したんですが、今月から『UMAGA』でも連載を再スタートすることになりました。2年前に還暦を迎え最近は昭和レトロな落ち着く店に通うことが多くなったので新しい連載テーマは「万太郎の喫茶と定食ノスタルジア」です。個人的に大好きなお店を紹介していきますので、よろしくお願いします。

創業47年の「喫茶コティー」

連載1回目の取材先として選んだのは、福岡市中央区高砂にある「喫茶コティー」
「STEREO COFFEE」などを展開する児玉太樹さんが2020年4月から経営する喫茶店で実はこの店は児玉さんでオーナーが三代目となる。

もともと「喫茶コティー」は1977年に「コーヒー&スナック Cotty」として創業され、初代ママさんが9年間スナックとして営業されたのち、西中洲で料理人をされてた大嶽(おおたけ)さんが1985年にあとを継がれて「喫茶コティー」としてご夫婦で34年間喫茶店営業をされていた。

しかし5年前くらいから大嶽さんが年齢を理由に引退しようと考えてられたそうで、その時に常連客で同じビルの2階で店舗を開いているジョニーさんに相談したところ、ジョニーさんが友達である児玉さんに「ここで喫茶店をしない?」と提案されたという。

紹介された児玉さんはすぐにこの店舗を気に入ったそうだ。ジョニーさんは常連客だっただけでなく、「喫茶コティー」があるからこのビルに引っ越してきたという筋金入りの大ファンだったので、その熱意が児玉さんにも伝わったのだろう、児玉さんはこの場所で新しい店を作ることを決意した。

そして、「この店の内装もそのままに使わせてもらって良いですか? そして、『喫茶コティー』というお名前も使わせてもらって良いでしょうか?」と切り出したそうだ。

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今でも「コーヒー&スナック Cotty」時代の名残が窓にある

児玉太樹さんの経歴

さて、その児玉さんについて少し紹介しておきたい。児玉さんは福岡市出身。大学時代に大名にあった人気カフェ「STEREO」でアルバイトを始めた。
2001年、大学卒業と同時に「STEREO」に入社。最初はキッチンで料理人としてスタートし、その後はホールも担当、さらに店全体のマネージメントも任されるようになった。そして2016年には先代からの提案もあり会社を買い取り、社長として店を引き継いだそうだ。

その後2015年12月に「STEREO COFFEE」を開業、2017年にはレコードショップ「LIVING STEREO」も開業した。どの店も若者の人気スポットとなり、さらにインバウンド需要も重なり、児玉さんの事業は順風満帆に見えた。

しかし、2020年4月に「喫茶コティー」をスタートさせた頃だった。COVID-19が世界中を襲った。特に飲食店へのダメージの大きさはみなさんの記憶にまだ新しいところだと思う。その影響は児玉さんの事業にも大きくのしかかってきた。COVID-19の影響で長年続いた大名「STEREO」は苦渋の決断の末、2020年12月に閉店することになったのだ。

当時、飲食業界には苦しい話題しかなかった。その頃に児玉さんにじっくり話を伺うことがあったが、元気に前向きに力強く将来構想を語ってくれてたことを今でもハッキリと覚えている。その言葉の通り、児玉さんは攻める手を辞めなかった。2021年には博多区美野島商店街に焼きそば居酒屋「音℃」をオープン、さらにレコードショップ「LIVING STEREO」を渡辺通から薬院へ移転してレコード販売とバーの店としてリニューアルさせた。

COVID-19の制限が緩むと、水を得た魚のように音楽や町興しなどをテーマにしたイベントに積極的に出店した。それどころかイベントを企画して運営側としても定期的に活動している。さらには同業の飲食店へのコンサルタントを行うなど、児玉さんの活躍の場は大きく広がっている。

言うなれば福岡の飲食業界や文化的活動を行う次世代の担い手として重要な存在となっていることは間違いないと思う。

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児玉太樹さん

「喫茶コティー」のメニュー

話は「喫茶コティー」に戻るが、メニューは、ランチタイムとディナータイムもしっかり定食類が食べられるスタイルである。特にハンバーグとチキン南蛮は大名にあった「STEREO」からの人気メニュー。ハンバーグはフワフワと柔らかくてデミグラスソースがたっぷりで大人から子供まで大好物の仕上がり。

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「コンビプレート(ハンバーグ&チキン南蛮)」

ホロホロに柔らかいチキン南蛮はタルタルソースがたっぷりで本場宮崎名物をSTEREO流にアレンジしており大人気。とにかくどれもこれもごはんがイケる系の定食でごはん好きにはたまらないメニューがたくさんだ。

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「宮崎流チキン南蛮定食」

そして、焼き目の無い美しく黄色い玉子が分厚くて美味しい「オムカレー」や「オムライス」はSNSでも注目を集める人気メニューとなっている。僕的には「エビフライ」の追加トッピングもオススメ。

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「オムライス」にトッピングの「エビフライ」

さらに固めの「プリン」は昭和レトロっぽい懐かしい味。その他にも自家製ケーキ類も豊富。「メロンクリームソーダ」(600円)も昭和っぽくて若者にも大人気だ。とにかくどれもこれも見た目も良いが味もしっかりと美味しくて、雰囲気を店内インテリアと相まってどこか昭和っぽさを良い感じで醸し出しているのだ。

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「プリン」と「コーヒー」

他にも平日ランチ限定の昔懐かしいスタイルの「ナポリタン」など、美味しいごはんやスイーツがたくさん。日替わりランチは曜日によって6種類。ランチタイムとディナータイムではメニューや価格が少し異なるので調べて行くほうが良いかも。

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ランチメニューとディナーメニュー

COVID-19を乗り越え人気店となった「喫茶コティー」

今ではすっかり人気店となった「喫茶コティー」。前オーナー時代からのお客さんだけでなく、近くで働くビジネスマンや若いショップ店員さんなどにはランチタイムのオーダーストップが15時と遅めなのも助かるようだ。さらに、週末になるとここの料理やスイーツを目的に遠方からやって来る新しい客も増えて来ている。

ランチ時などは人気過ぎてなかなか入店できないこともあり寂しい想いもあるが、大繁盛している光景を目にする度に、COVID-19の時のあの苦しい中でも前向きに明るく頑張っていた児玉さんやスタッフさんの顔を思い出し、本当に良かったなぁと思うのである。

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「オムカレー」

最後に

最近は飲食業界に限らず、高齢により引退される事業主が第三者に会社や店を譲渡するいわゆる事業承継ということが話題になっている。今回の「喫茶コティー」の場合は事業承継ではないが、結果として昭和のままの姿と店名が残り、お店としては承継されたことになったケースだ。

ネット監視社会、ハラスメント社会、自主規制社会など言われ、何かと生きにくい今日この頃。「昭和の頃は良かったなぁ」とポロリと口から洩れることが多い僕ら昭和世代であるが、若い世代の中にもデザインとしての昭和ブームらしきものが起こっているようだ。みなさんも落ち着いた昭和の雰囲気の中で今どきのオシャレなカフェに負けない美味しいごはんとスイーツを「喫茶コティー」で楽しんでみてはいかがだろうか。

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JBL社製のスピーカーは、「STEREO」グループのアイデンティティとして各店に設置されている

店舗名

喫茶コティー(店舗写真

ジャンル

  • 定食・食堂
  • スイーツ
  • カフェ

住所

福岡市中央区高砂2-15-28 第8ダイヨシビル1F

電話番号

092-521-8560

営業時間

11:30~OS15:00、17:30~OS20:30

定休日

水曜

席数

  • カウンター6席
  • テーブル16席

メニュー

ランチメニュー オムライス1,100円、ナポリタン(平日のみ)990円、宮崎流チキン南蛮定食990円、
ディナーメニュー ハンバーグステーキデミグラスソース1,300円、オムカレー1,400円
コーヒー500円、メロンクリームソーダ600円、プリン550円

喫煙について

禁煙
  • ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
  • ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
  • ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
  • ※OSはオーダーストップの略です。
  • ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

記事に関する諸注意

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