「もつ鍋」は、福岡グルメの代表格として知られる存在。仕事柄、県外から訪れる知人や友人におすすめの店を聞かれることがあります。そんなとき、必ずといっていいほど名前を挙げるのが「もつ幸」です。今回は、この店の歴史と魅力を改めて紐解いていきます。


1978年、東区舞松原で創業した「もつ幸」。当時は辛味噌ダレを使った「ホルモン鍋」と、鶏ガラベースのスープでもつを炊く「水炊き風もつ鍋」の二本立てでした。「もつをもっとあっさり食べてほしい」との思いから、ニンニクを使わず、酢醤油で味わうという独自のスタイルを生み出します。脂の重さを抑え、もつの旨味を引き出すその食べ方は、当時の福岡では珍しいスタイルでした。
1982年に博多区下川端町へ移転し、博多部の常連客を中心に親しまれるようになります。その後、博多リバレインの再開発を機に、現在の綱場町へ。老朽化のため2018年に3階建てのビルへ建て替えました。建て替えの間は、博多祇園山笠の寄合所として使われていた建物を仮店舗に営業を継続。地域とのつながりを保ちながら、変わらず暖簾を守り続けてきた歴史が、この場所に息づいています。

現在、店を率いるのは二代目の松尾一豪(かずひで)さん。幼いころから店が遊び場のようだったと話します。大学卒業後に両親の跡を継ぎ、今も店の味を守り続けています。「父と母が守ってきた味を変えず、できるだけ安定させることを意識しています。スープの配合は同じでも、出汁の出方は季節で微妙に違う。火加減や仕上げを毎日確認しています」と松尾さん。鶏ガラを香味野菜とともにじっくり煮出し、澄んだスープの味わいを保つために、日々の調整は欠かしません。

もつはすべて国産牛。小腸、センマイ、赤センマイ、ハツの四種類を毎日仕入れ、鮮度の高い状態で提供しています。臭みのない味わいは、ホルモンが苦手な人にも好評です。酢醤油で味わうという独自のスタイルは、創業時から続くこの店の特徴でもあります。


屋号に“もつ鍋専門”と掲げていますが、一品料理も実に多彩です。この日は「博多ひとくち焼ギョーザ」と「もつ味噌鉄板」を注文。
香ばしく焼き上げた「博多ひとくち焼ギョーザ」は、皮の軽やかさと肉汁のバランスが心地よく、ビールとの相性も抜群。
「もつみそ鉄板」は、創業当時の「ホルモン鍋」の辛味噌ダレを受け継いだもので、国産もつとキャベツを鉄板で炒め、甘辛い味噌の香りが食欲を誘います。「もつ鍋」を待つ間に注文する人も多く、長く通う常連にとっては欠かせない一皿です。

そのほかにも「自家製ポテトサラダ」や「熊本馬刺し」など、酒の肴にぴったりの料理が並びます。手描きのイラスト入りメニューは見ているだけでも楽しく、料理を待つ時間にも温かみを感じます。
近年はおひとり様向けのハーフメニューも登場し、枝豆や焼餃子、ちゃんぽん麺などを少しずつ楽しむ人も増えました。カウンターでは、ひとり鍋を囲む常連客がゆったりと時間を過ごしています。英語メニューも整備され、海外からの来店客にも分かりやすい内容になっています。

主役の「もつ鍋」は、キャベツとニラをたっぷりとのせ、鶏ガラベースのスープで炊き上げます。煮立った頃にスタッフが鍋を混ぜ、上にのせた餃子の皮がとろりと溶けた瞬間が食べ頃。火加減や混ぜ方は各テーブルのスタッフが担当するため、初めて訪れる人でも安心です。
あっさりとした酢醤油との相性もよく、もつの脂がスープに溶け出して一体感を生み出します。ニンニクを使わないため、翌日の予定を気にせず楽しめるのも嬉しいところ。餃子の皮をのせるスタイルは、「もつ幸」出身の店など一部で受け継がれ、今では福岡のもつ鍋文化の一角を担っています。


鍋の〆には、ちゃんぽん麺。スープを煮詰め、最後にたっぷりの白ごまを加えるのが「もつ幸」流です。もつと野菜の旨味を吸い込んだ麺に、香ばしいごまの風味が重なり、多くの常連がこの味を楽しみに訪れます。追加具材も豊富で、豆腐や野菜、豚バラなどを加え、好みの味に仕上げることもできます。


2階には座敷とテーブル席があり、全席禁煙となる土曜・祝日のみ未成年者の入店可能。平日は未成年者の入店はできないのでご注意ください。
落ち着いた雰囲気のなかで、もつ鍋の香りや会話をゆっくりと楽しめる空間。開店前から行列ができることも多く、オープンと同時に活気に包まれる店内には、仕事帰りの常連、観光客、家族連れと、さまざまな顔ぶれが集います。
「派手なことはせず、日々の積み重ねを大切にしています」と松尾さん。綱場町の一角で、今日も静かに湯気を立てる「もつ鍋」。その中には、受け継がれた味と日々の努力、そして博多の食文化への誇りが詰まっています。
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店舗名
もつ鍋専門 もつ幸(店舗写真)
ジャンル
- 鍋
- もつ鍋
住所
福岡県福岡市博多区綱場町7−14
電話番号
092-291-5046予約は大人3名以上
営業時間
17:30〜最終入店22:00(土曜・祝日は17:00〜最終入店21:30)
定休日
日曜(祝日の場合は営業、翌月曜休)
個室
なし
メニュー
もつ鍋1人前1400円、白もつ鍋1人前1900円、豚バラ鍋1人前1300円、ちゃんぽん麺1玉350円、すもつ550円、自家製ポテトサラダ500円、博多ひとくち焼ギョーザ(10個)550円、にら玉とじ500円、明太子ソースオムレツ750円、もつみそ鉄板1050円
喫煙について
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