グランドメゾン presents 「ハレの日レストラン」【第18回】

懐石の名店で味わう、古き良き日本の風流

公開日

最終更新日

ライター葉山巧

カメラマン平川雄一朗

対馬小路

馳走 なかむら

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真に価値あるグルメとは、人の心まで豊かに潤すもの。それを実感するのに「馳走なかむら」ほどふさわしい店もありません。営むのは奈良の老舗料亭「菊水楼」で薫陶を受けた中村亨さん。料理はもちろん、僕らが守り継ぐべき日本文化をみやびに表現する和の職人です。

なかむら_カウンター
なかむら_個室

対馬小路にある数寄屋造りの建物がその舞台。京都の名店をいくつも手がけた職人集団の作で、木・土・石の天然素材から生まれる温もりがなんとも言えぬ癒しを与えてくれます。静かな臨場感をはらむカウンター席も、2部屋あつらえた個室も思わずじっくり見入る精巧さ。「“言葉にはできないけど何か良いよね”、と感じてもらえる空気感を大事にしています」と話すのは店主の中村さんです。

なかむら
なかむら

その雰囲気をより格別にするのが、毎月必ず変えるという四季折々の飾り付け。この日は端午の節句をモチーフにした品々が、客たちに爽やかな5月の到来を告げていました。「中村人形」三代目による登龍門の博多人形と、四代目が描いた瀧の図を組み合わせるなど粋な演出もそこかしこに見られます。文化的な知識・感性に裏打ちされた、格式とくつろぎが同居する心地よさ。それをここまで出せる店が福岡にどれほどあるでしょう。

なかむら_店主

「飾りだけでなく、料理や器も毎月変えています」と中村さん。「このような“店ぐるみ”のもてなしは、僕が『菊水楼』で学んだもの。本来は料亭の領分かもしれませんが、料亭という業界が廃れてきた今、地域に一軒くらいはこういう店があってもいいですよね」。
料理だけでなく、店全体から古き良き伝統や季節の素晴らしさを感じてほしい──。開業から6年間(北九州時代を含めれば17年)、真摯に重ねた努力はすべてそのためにあると言います。かかるコストも膨大ですが、「好きでやっていることですから」と浮かべた笑みが印象的でした。

なかむら_先付け

そんな店主の想いを、これから始まる22,000円のコースがどう伝えてくれるのか実に楽しみです。この日の先付けは、生の胡麻を煎って本葛を練り込んだ胡麻豆腐。「暑くなる時期なので」と冷たくジュレ状にした餡とともに、まろやかな甘みと香りを満喫しました。

なかむら_お椀

お椀はうすい豆のすり流しで、長崎の甘鯛と秋田のじゅん菜を浮かべたもの。グリーンピースより澄んだ豆の香りも、サラリと流れ込む液体の微粒子もすべてが快く、ほんのりと余韻が続く出汁の存在も見逃せません。
「実は今年から出汁を変えたんです」と中村さん。「きっかけは、世界一柔らかいとされる青森県・白神山地の軟水を知ったこと。これは絶対に料理が変わると確信し、現地から取り寄せて使っています」。これに合わせて昆布も羅臼から利尻に変更し、より輪郭の際立つ出汁を再構築したのだそう。

なかむら

中村流とも言えるこだわりは八寸の器にも見られます。かつて「ちまきを盛って出していた」と言われる器を模し、例年5月に使うためだけに特注したものです。料理の方も、タコの柔らか煮、水イカの辛子酢味噌、お多福豆の共和え、卵かまぼこ、フキの梅肉醤油漬けなど、(とくに左党なら)グッとくる逸品ばかり。なかでもカラスミの美味しさは出色で、3年かけて醸成した食味は至福と言うしかありません。

なかむら_炊き合わせ

こちらは艶やかな輝きを帯びた炊き合わせ。素材は軽く素揚げした長崎産伊勢海老と京都の賀茂茄子です。ここでも出汁の力は健在で、芳醇な風味がなんとも秀逸。大根おろしを加えた餡とともに、するりと胃の腑に収まりました。

なかむら_ごはん

食事の締めはトウモロコシと桜海老のご飯。両者の香りの相乗効果は凄まじく、コース終盤というのについお代わりを所望してしまいました。「5月から皮が硬くなって歯応えが増す」というトウモロコシの、シャキッと軽快な歯触りも噛む楽しさに満ちています。

なかむら_甘党1
なかむら甘味2

デザートは2皿構成。最初の水菓子(宮崎マンゴー、スイカ、佐藤錦)を盛った青い器は、なんと珍しいアンティークのバカラ! 洋食器にもこんな隠し球があるとはさすがです。
そして最後は自家製わらび餅と、アーモンドやキャラメル風味の餡を挟んだマカロン風の最中、女将さんの点てた抹茶で和やかに締め括られました。

ここで味わい、触れるものすべてに意味や物語を探したくなる「馳走 なかむら」。それを支える生真面目な仕事と情熱が、グルマンたちの厚い信頼を勝ち取った理由の一つでしょう。「消えつつある文化や習俗を、確かな形に残すことが修業先へのリスペクトだと思うのです」という中村さんの言葉が示すように。こうした志の職人と会うことこそが真の“馳走”なのかも……そんなことを感じる今日この頃です。

この記事は積水ハウス グランドメゾンの提供でお届けしました。

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店舗名

馳走 なかむら

ジャンル

  • 日本料理

住所

福岡市博多区対馬小路2-10

電話番号

092-292-7663(予約制)

営業時間

11:30~14:00(火・木・土曜のみ)/18:00~22:00

定休日

日曜、月曜(夜は隔週営業)

席数

  • カウンター7席

個室

2〜6名

メニュー

昼の懐石コース11,000円、夜の懐石コース22,000・33,000〜44,000円(おまかせの季節変動) ※サービス料5%

  • ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
  • ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
  • ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
  • ※OSはオーダーストップの略です。
  • ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

記事に関する諸注意

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