上野万太郎の「この人がいるからここに行く」【第15回】

週に1回以上来店する常連客が100人超えの洋風食堂

公開日

最終更新日

ライター上野万太郎

カメラマン上野万太郎

松島

洋風食堂 枝

上野万太郎

ここ十数年間、カレー店と珈琲店やカフェを中心に年間外食はのべ1,100軒以上。本業の傍ら、外食写真日記的なブログ「万太郎.net」で福岡を中心とした飲食店の人々やお客さんと関わったエピソードを発信。著書は「福岡カフェ散歩」(書肆侃侃房/2012年)、「福岡のまいにちカレー」(書肆侃侃房/2014年)。
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僕が月に数回夕食に通っている食堂がある。創業43年になる「洋風食堂 枝」だ。その名の通り、洋食専門の食堂。東区の自宅に帰る途中にあるというのも理由の一つだが、気軽に入れてリーズナブルな価格でボリューム満点なランチが美味しいからついつい寄ってしまう。 
例えば日替わりランチはおかず2種にサラダ盛り、ライスとみそ汁付き。あるいはハンバーグと白身魚のフライとか、しょうが焼きとコロッケなどの組み合わせ。これが昼も夜も食べられて800円というからありがたい。

洋風食堂枝

1979年、糟屋郡粕屋町に創業

そもそも「洋風食堂 枝」は現在の店長である今任洋介さんの両親である進さんと鈴子さんによって1979年に糟屋郡粕屋町戸原にて創業された。当時の店名は「レストラン喫茶 枝」だったそうだ。店名の由来は居抜きで入居した物件が以前「枝」という喫茶店だったらしく、店名の入ったマッチなどの備品がたくさん残っていたのでそのまま「枝」にしようとなったらしいから面白い。
当時からリーズナブルな価格でボリューミーな洋食を中心としたメニューが、常連客の心をがっちり掴んで繁盛していた。しかし、36年間営業した時に道路拡幅工事のため退去せざるを得なくなり、2015年に現在の東区松島に移転することなったそうだ。

移転後に2代目を継いだ洋介さん

移転のタイミングで洋介さんが入店し、店名を「洋風食堂 枝」に変更した。幼少の頃から両親が経営する喫茶店の中で育った洋介さんは、子供の頃から「いつの日かこの店は僕が引き継ぐことになるんだろうなぁ」と思っていたそうだ。高校卒業後に中村調理製菓専門学校に入学したのも自然なことだった。
卒業後は実家以外の店で勉強したいということもあり、洋食レストランを中心に数店舗で19年間働いた。その間、ニュージーランドに1年4カ月滞在してレストランで働いたりもした。入店して2年後、洋介さんは両親の後を継いで「洋風食堂 枝」の代表に就いた。40歳の時だった。

洋風食堂枝

40種類以上の豊富なメニュー。組み合わせは無限

基本的なメニューは「レストラン喫茶 枝」の時から変わっていないが、洋介さんの経験を生かしてハンバーグのレシピを変えたり、本格的な洋食も食べられるようにと、白身魚のソテーや牛さがりのステーキなども提供し始めた。それでもやはり人気メニューは「日替わりランチ」(800円)、「昔ながらのナポリタン」(680円)や「ハンバーグランチ」(1,000円)などだという。

洋風食堂枝
洋風食堂枝

僕のお気に入りは、「枝ランチ」(1,150円)だ。ハンバーグ、有頭エビフライ、ベーコンエッグ、ポテトサラダがワンプレートに載ってるという夢のような一皿。ここにはまるで大人のためのお子様ランチみたいなメニューがたくさんあるのだ。

洋風食堂枝

とにかくメニューの種類が多いのもここの特徴だ。スパゲッティーはナポリタンの他にもカレー、ミートソース、和風シーフードがある。さらにカツカレーやハンバーグカレーなどのカレーライス、ピラフ、トルコ風ライス、ピザ、サンドイッチ、ホットーケーキ、トーストなど数えたらメニュー数は40以上。定食系は20種類くらいあるが、ほとんどの料理がトッピングでき、組み合わせは無限レベルである。またテイクアウトにも力を入れており、僕もCOVID-19禍の時には何回もお世話になったものだ。

洋風食堂枝

以前からずっと疑問だったことだが、「洋風食堂 枝」では定食系のメニューには“ランチ”という言葉が使われている。一般的にランチとは、昼に食べるご飯のこと。しかし、この店では昼も夜もランチという言葉が使われているのだ。そもそもは「レストラン喫茶 枝」時代にモーニングサービスからランチ営業が中心だったことの名残というのもあるようだ。

「洋風食堂 枝」に変わった最初の頃、ディナーメニューというのを作って少し価格も上げた贅沢メニューも作ったらしいが、結局のところランチメニューが人気絶大のため、家族で話し合った結果、「昼も夜もランチメニューで良いんじゃないか」ということになり、現在もずっと開店から閉店まで1日中ランチ営業をしてるらしい。
逆にこれが、「オールタイムランチ」の店として、今ではセールスポイントとなっている。
当初はサラリーマンを中心とした男性客が多かったが、いまではファミリーや年配客も増えたそうだ。特に最近はSNS効果もあってか若い世代の客も増えて来たようだ。

地域の食堂として守っていく

両親もまだ元気に一緒に仕事をされているが、糟屋町時代から働いてくれてるパートさんもいる。もちろん、創業当初からずっと来店してくれる常連客もいる。とにかくここは常連客が多い店なのだ。週に複数回来店される客が数十名。週1回以上となると100名を超えるという。僕はこういう店を他に知らない。

店内にはBGMも流れているがカウンターの中にはテレビ番組が映されている。客はBGMと重なって流れているテレビの音を聴くことになる。なんともぞわぞわした空気感が逆に気軽な食事の場を演出してくれているのかもしれない。肩苦しくもなく不愛想でもない接客も含めて、とにかくすべてが自然で気軽でアットホームなのだ。僕はカウンターに座ってテレビを観ながら料理が出て来るのを待つのが好きである。たまには食器を洗ってる女性スタッフと話をしながら。

洋風食堂枝

洋介さんは、そんな「洋風食堂 枝」をこれからも守っていきたいという。「飲食業界に入って25年経ってもなおお客様の喜ぶ顔が見たいんですよね」という洋介さん。飲食店にもいろんなスタイルがあるが、スタッフも客も笑顔にあふれたアットホームで気軽にランチが楽しめるこの「枝」スタイル。きっと10年後も20年後もそれは変わらない気がする。洋介さん、これからもご両親と一緒に末永く頑張ってください。

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店舗名

洋風食堂 枝(店舗写真

ジャンル

  • 定食・食堂

住所

福岡市東区松島3-34-27

電話番号

092-260-7723

営業時間

10:30~OS20:00

定休日

日曜日

席数

  • カウンター5席
  • テーブル28席

個室

なし

メニュー

日替わりランチ800円、昔ながらのナポリタン680円、カレースパゲッティ700円、カツカレー950円、しょうが焼きランチ1,050円、枝ランチ1,150円、ハンバーグランチ1,000円

喫煙について

禁煙
  • ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
  • ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
  • ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
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  • ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

記事に関する諸注意

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