福岡の食を支える中村学園卒業生のお店【12】

住宅街の一軒家イタリアンと西中洲の名フレンチ。情熱溢れるシェフの店へ

公開日

ライター森絵里花

カメラマン森絵里花

笹丘/西中洲

La Lucanda(ラ ルカンダ)/L’eau Blanche(ローブランシュ)

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今回ご紹介のお店
La Lucanda(笹丘)
L’eau Blanche(西中洲)

福岡の食を支える
「中村調理製菓専門学校」の卒業生

2024年に創立70周年を迎えた、“食の中村”こと「学校法人中村学園」。1954(昭和29)年に「福岡高等栄養学校」を開校したのがそのはじまりで、多くの料理人や食産業に携わる人材を輩出していることで有名です。

中村調理製菓専門学校

UMAGAでは70周年を記念し、卒業生が営む店や活躍する店をご紹介しています。連載最後となる今回は、「中村学園」の姉妹法人「学校法人中村専修学園」が運営する「中村調理製菓専門学校」の卒業生をフィーチャー。イタリアンとフレンチの人気店を訪ねます。

イタリア郷土の味を楽しめる
とっておきの一軒「ラ ルカンダ」

最初に訪れたのは福岡市動植物園にも程近い、笹丘の住宅街に佇む「La Lucanda」。愛されて14年目を迎える一軒家イタリアンです。

木の温もりを感じる店内には心地よい陽の光が差し込み、夜はしっとり落ち着いた雰囲気に。奥には4〜6名で利用できる個室も用意されていました。

店を営むのは「中村調理製菓専門学校」出身のオーナーシェフ・藤本慶輔さん。藤本シェフのご実家は、創業1982年の名イタリアン「カサーレ」(西新)で、現在2代目シェフを務める兄の慎一さんも「中村調理製菓専門学校」の卒業生です。元々料理人の道は考えていなかったという藤本シェフですが、高校卒業後にカナダへ留学したことがきっかけになったと話します。

「留学先では僕の部屋に人が集まる度によく料理を作っていました。国籍もバラバラな友人たちが、僕の素人料理をすごく喜んで食べてくれて、それが本当に嬉しくて、楽しくて。そこから料理の道に進みたいと思い、父と兄の勧めもあって「中村調理製菓専門学校」へ入学しました。“中村調理”は、レジェンドシェフから現役バリバリの料理人まで、外部から招く特別講師の授業も充実しているのも魅力。帝国ホテルの故村上信夫料理長の授業を受けられたことも忘れられません」と藤本シェフ。

卒業後は、父・和則さんと兄・慎一さんの修業店・老舗「キャンティ」の元料理長がシェフを務めていた「イル カバロ ビアンコ」(共に東京)へ。2年半ほどみっちりと現場の仕事を学んだ後、さらに東京の有名店を経て、24歳でイタリアへ渡りました。

最初にフィレンツェの三つ星へ入り、ロンバルディアの一つ星でも修業。しかし、藤本シェフが最も心惹かれたのは、高級店とはまた違う、シンプルながらも奥深いイタリアの郷土料理でした。

「ピエモンテのお店では8時間ひたすらアニョロッティ(※)を作り続けていましたね(笑)。日本人がいない環境で本場の仕事や文化を学びたいという思いが強く、最後に行き着いたのがロンバルディアにあった『ラ ルカンダ』でした。“日本人は雇ったことがない”というシェフを押し切り店に入り、セコンド(スーシェフ)のポジションを任せてもらえることに。前菜、パスタ、メイン料理と広く経験を積めたのが大きな力となりました」。

※アニョロッティ・ダル・プリン=ピエモンテ地方を代表する伝統的な詰め物パスタ

帰国後は静岡の「マンジャペッシェ」や東京「アルポンテ」などでも研鑽し、30歳で帰福。ロンバルディアの「ラ ルカンダ」は、「ラ ブラセリア」という肉屋兼レストランにリニューアルしたことから、店名を譲り受け、2011年に自身の店「La Lucanda」をオープンしました。

「La Lucanda」で味わえるのは、そんな藤本シェフが作るピエモンテやロンバルディアを主体にしたイタリアの地方料理です。名物は自家製の手打ちパスタで、常時8種類ほどが揃います。手打ちパスタが選べるランチコースは「A 2,530円」「B 3,850円」という良心価格で、ディナータイムはアラカルトとコース(7,700円〜・要前日予約)を用意。今回はアラカルトでおすすめの逸品をいただきました。

まずは、卵黄とセモリーナ粉を練り上げたピエモンテの伝統的なパスタ「手切りタヤリン/鶏せせりのブッロ・エ・パルミジャーノチーズソース 黒トリュフ」(4,180円)をオーダーしました。このタヤリンは修業時代に、イタリアのおばあちゃんから習った思い出の一品だそう。機械切りするお店も多いなか、藤本シェフは昔ながらの手法にこだわりすべて手切り。それも極細に切り出しているので、ソースがしっかりと絡むのも特徴です。

ピエモンテは白トリュフの名産地であり、「La Lucanda」でも季節ごとのトリュフを提供。秋から初冬には白トリュフ、夏にはサマートリュフ、この季節には黒トリュフが登場します。ソースの中にも表面にもたっぷりのトリュフが削り込まれ、なんとも贅沢! プチッとアトランダムに弾けるパスタの食感、トリュフの芳醇な香りがたまりません。

また、ピエモンテでは馬肉もよく使われるそうで、こちらは、久留米「木稲(このみ)畜産生肉店」厳選の「馬ホホ肉のペポーゾ じゃが芋のグラタン」(3,630円)。馬ホホ肉をバローロワインでマリネし、黒胡椒と共に煮込んだ一品で、くどさのない旨味、程よい弾力、深みのあるソースも格別です。

メニューにはこの他、糸島をはじめとした農家や産地直送の旬食材を活かした料理や、イタリアを中心としたワインが勢揃い。福岡で本格的な郷土料理を心置きなく味わいたい、そんな時に迷わず訪れたい一軒です。

素材とシェフの感性光る!
西中洲の人気フレンチ「ローブランシュ」

続いての目的地は、福岡屈指の美食エリアとして知られる西中洲。那珂川に建つビルの2階にあり、中洲の夜景を見渡せるフレンチレストラン「L’eau Blanche」を訪れました。

店舗より提供

フランス語で“白い水”を表す店名の通り、腕を振るうのは「中村調理製菓専門学校」卒業の白水鉄平シェフ。土・和紙・木など異なる素材の「白=素の色」を重ね合わせた空間は、料理を引き立てる白い器を表現しているそう。洗練された雰囲気のなか、白水シェフの世界観をじっくりと味わうことができます。

物心ついた頃から料理が好きで、小学校の文集に書く将来の夢も決まって料理人。子供の頃は母に、高校生になると彼女にお弁当を作って持って行くなど、昔から料理で人を喜ばせることが大好きだったという白水シェフ。専門学校時代や修業時代についてこう話します。

『中村調理製菓専門学校』のことを知ったのは、高校の担任の先生の“料理人を目指すならまず調理学校へ入ってはどうか”というアドバイスがきっかけです。九州トップクラスの実績や設備が整っているし、ここなら料理をきちんと学べて、一流レストランへも入りやすいんじゃないかと考え入学を決めました。とにかく“料理の世界でビックになりたい!”というのが、当時の僕の目標で。進路希望の相談をする際、それを先生に伝えたところ、“それなら日本でいちばん厳しい場所へ行ってみろ!”と『オテル・ドゥ・ミクニ』での校外実習が決まったんです。

『オテル・ドゥ・ミクニ』の三國清三シェフといえば、日本フランス料理界のカリスマであり、当時それはもう厳しいことで有名な方でした。研修はもちろん厳しかったものの、大人の真剣な世界、プロの仕事を目の当たりにして感銘を受け、“ミクニ”の世界観に魅了されました。そして“ここならきっと掴めるものがある!”と感じ、就職を決めました」

「“ミクニ”の本店に入ることができるのは約20人中2人と聞いていましたが、僕はどうしても本店で、三國シェフの元で学びたかった。何とか目立とう、気合いを伝えようという思いで頭を五厘刈りにし、最前列のど真ん中に座って入社式に挑んだところ、幸運にも三國シェフの目に留まり、その場で本店に選んでもらうことができました」と白水シェフ。後に三國シェフはとある本で、白水シェフのことを「故郷の母に別れを告げてきた特攻隊のような子だった」と綴ったエピソードも残っています。

そして「オテル・ドゥ・ミクニ」で4年目を迎える頃には、“もっと力を付けたい”と思うようになり、休日は自らいろんな店に飛び込み研修へ。研修先の一つとして「オーグドゥジュール」にお世話になったことをきっかけに店を移籍し、約1年半後にはスーシェフを務めるまでに。途中10ヶ月ほどフランス・リムーザン地方のオーベルジュでも経験を積み、28歳で「オーグードゥジュール メルヴェイユ博多」の初代料理長に就任しました。

そこから4年が経ち、より自由な表現を求めたことで独立を決意。2016年に「L’eau Blanche」が誕生します。現在コースは3種類あり、金・土曜はランチ営業も実施。今回はすべてのコースに登場する料理とデセールをピックアップしてご紹介したいと思います。

まずは白水シェフの巧みな技術が光るスペシャリテ「ブータン・ヴィオレ」。古典料理ブーダン・ノワール(豚の血のソーセージ)を滑らかなテリーヌ状にし、リンゴやビーツのコンフィチュールを合わせた革新的な一皿です。

ブーダン・ノワールならではの旨味をしっかりと感じさせながらも、味わいは実に澄んでいて、舌触り、余韻も華麗。彩りと風味に華を添えるヴィオレ(紫色)のパウダーは、秋冬だと鹿児島の紫の唐芋、春夏は筑紫野市「いしばし農園」の有機栽培シャドークイーンと使い分けているそうで、白水シェフの細やかなこだわりが感じられます。

こちらは“大地の息吹 春の訪れ”を表現したデセールです。蕗の薹を加えたリオレ(米をミルクで甘く炊いた料理)、ショコラのムース、キリッとした生姜のアイスクリームが層になっており、パール柑の果肉とコンフィチュールも名脇役。蕗の薹の優しいほろ苦さと柑橘の爽やかさが驚くほど良く合い、早春のコースを締めくくるに相応しい一品でした。

またフランスをはじめとした、ソムリエ厳選のワインも勢揃い。ワインペアリング(11,000円〜)も用意されていますよ。

「もう20年以上この世界にいますが、飽きるどころか料理を作るのが楽しくて仕方ありません。お客様はもちろん、生産者の方々、スタッフ、家族など、“半径3mにいる人は必ず笑顔にする”、その笑顔の波紋を地球の裏側にまで届けたい……! そんな気持ちを込めて、一皿一皿に向かっています」と、最後にこの日一番の笑顔を向けてくれた白水シェフ。

情熱溢れる2人のシェフ、そしてこれまでのインタビューで、料理人は人を幸せにする素晴らしい仕事だと改めて感じることができました。今回伺ったお店を含め、「中村調理製菓専門学校」の卒業生が活躍している魅力溢れる飲食店は「中村調理製菓専門学校」のホームページ内にある「エヌプラス」でも紹介されています。ぜひチェックしてみてください。

福岡はもとより、全国、世界でも活躍する“ナカムラ”卒業生。連載を振り返って、ぜひ気になるお店へ出かけてみてくださいね。そこには、とっておきの口福が待っていますから。

この記事は「学校法人中村学園」の提供でお届けしました。

店舗名

La Lucanda(ラ ルカンダ)(店舗写真

ジャンル

  • イタリア料理

住所

福岡市中央区笹丘2-3-1

電話番号

092-791-7571

営業時間

12:00〜OS13:30/18:00〜OS20:30

定休日

なし

席数

  • テーブル22席

個室

4〜6名

メニュー

ランチA2,530円、B3,850円、ディナーコース(要前日予約)7,700円、お好きなだけの豚のパテとパン(2人前1,100円)、手切りタヤリン/鶏せせりのブッロ エ パルミジャーノチーズソース 黒トリュフ4,180円※トリュフの種類により価格は変動

喫煙について

禁煙

店舗名

L’eau Blanche(ローブランシュ)(店舗写真

ジャンル

  • フランス料理

住所

福岡市中央区西中洲4-4 RIN FIRST2F

電話番号

092-752-2122 要予約

営業時間

18:00〜最終入店19:30(金・土曜はランチも営業、12:00一斉スタート)

定休日

日曜、ほか月曜不定休あり

席数

  • カウンター5席
  • テーブル16席

個室

なし

メニュー

おまかせコース16,500円・22,000円・33,000円(昼夜共通)、ワインペアリング11,000円〜 ※サービス料10%

喫煙について

禁煙
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  • ※OSはオーダーストップの略です。
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  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
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