弓削聞平の福岡飲食最前線
「KUOHKA」から商業施設飲食ゾーンが変わる!
公開日
ライター弓削聞平

弓削聞平
福岡のグルメ系エディター。グルメ雑誌「epi」「ソワニエ(現ソワニエ+)」「UMAGA」の創刊編集長。「ぐる〜り糸島」「私、この店、大好きなんです。」「福岡気軽で楽しい町の寿司屋」などを多数編集・発行。Instagram @fukuoka_umacato
中洲のすぐ横に、キャナルシティ博多が開業したのは1996年。つまり約30年前です。まだ外資のホテルも福岡にはほとんどなく、グランドハイアット福岡が国内で初めて開業したことにも驚かされました。そして地下にはそのグランドハイアット福岡のレストランフロアとして「フードライブ」という飲食ゾーンがあったのですが、その後、ホテル直営のバー「BAR FIZZ」はそのまま残り、それ以外の部分は7、8軒の飲食店で構成されるキャナルシティ博多の飲食ゾーンとなりました。

そこが今年の7月、約30年ぶりに大大大リニューアルして「KUOHKA(くおうか)」としてオープンしたのです。すでに2ヵ月近く経ちますから行ってみた人も多いと思いますが、商業施設内の飲食フロアとしてはかなり話題になってます。
まず、驚かされたのが以前の3倍近い店舗数でしょう。総面積は変わらないのに店舗数がそれだけ増えているということは1軒1軒が小さくなっているということです。これは路面店もそうですが、今はとにかく小バコが人気です。しかし、商業施設の場合は効率、収支のことなども考えるとそうそう小バコばかりというわけにはいかないものです。しかし、ここは完全に小バコに舵を切りました。そして、あえて曲がりくねった路地のような通路と店舗の境界が実にあいまいです。小バコでありながら開放的。これはまさに福岡の名物である「屋台」にも通ずるところがあります。そしてその店内のにぎわいは通路にまであふれ、それがまた「あっちもよさそうだね」「この後あっちに行ってみようよ」というように、はしご酒、あるいは次回の訪問を誘う。これまた実に福岡らしい! 実はこれに近いことは約10年前にJRJP博多ビル地下の「駅から三百歩横丁」でも行っていますが、「KUOHKA」はさらに進化しているように感じます。


そんな福岡らしい環境に点在するのは福岡、東京、パリなどから集まってきた選りすぐりの飲食店。私も10軒以上はお邪魔しましたが、一度ランチに行って気に入り、あちこちで吹聴しまくっているのが「焼うおいし川」です。焼肉スタイル、といってもフルアテンドで魚を一切れずつ焼いてくれるこれまで見たことがない業態です。いわゆる和食店の焼き魚ではなく、高級焼肉のように選び抜かれた魚介ネタを絶妙な焼き加減で提供し、それを赤酢の酢飯とともにいただくのですが、これがもう絶品なんです。秋刀魚の塩焼きなども大好きな私ですが、「焼きうお」という新たな境地に感激しました。

また、今泉にあるワインショップ「I.N.U.wines」も見逃せません。今泉の本店は酒屋ですがスタンディングで飲むこともできるというスタイルですが、こちらは買うこともできるワインバーという感じ。もちろん椅子もちゃんとあります。キャナルシティで演劇や映画を観た後にも重宝しそうです。さらにここで買ったワインを同フロアの他の店舗に持ち込んで飲むこともできるのです(持ち込み料はかかりますよ)。また、グランドハイアットやワシントンホテルといった施設内のホテルや近隣に泊まってる人は、ここでおいしいナチュラルワインワインを買って部屋でゆっくり飲むといいうのもいいですよね。
そうそう、「KUOHKA」でもう一つ商業施設として福岡唯一なのが、スナックがあるということ。ちょっとおもしろいですよね。なんでも宮古島や西麻布で店をやってるところが出店してるんだとか。しかもコンセプトを変えて2軒並べてるっていうのもおもしろい。商業施設の中の店で深夜2時までやってるっていうのもかなり珍しいですよね。スナックの存在もそうですけど、なんというか施設デザインも店舗構成もビルインというより、限りなく街の路地裏っぽい魅力あふれる施設なんです。街場のようなフロアにしたいという商業施設はこれまでも多かったのですが、いろいろな条件からしてこれまで実現できたところはほとんどなかったのではないでしょうか。


この「KUOHKA」は福岡の今後の商業施設飲食ソーンのモデルともいえる気がします。2011年に博多駅ビル「アミュプラザ博多」の「くうてん」ができたときもそんな感想をもったのですが、それまで、福岡のビルインの飲食店っていわゆる大規模なチェーン店がほとんどでした。それって無難で誰でも安心して行けるんだけど、ワクワク感に欠ける気がしていて、少しグルメが好きな人が行きたくなるような店があまりなかったんです。けれども、「くうてん」以前、「くうてん」以降でそれが少し変わった気がします。そしてそれから14年。博多駅横の今度はここ「KUOHKA」がさらに次のステップへ進んだ、これからの商業施設飲食ゾーンの礎になった気がします。わかりやすく福岡の店でいえば、「清喜」「フルヤ」「はじめの一歩」「Carbon」というように、地元の人にも人気があり、系列があるにしても数軒といった、極めて個人店に近い雰囲気の店が入っています。そのあたりの店舗構成、リーシングが実に絶妙だなぁと感じました。
その施設にショッピングなどで出かけた人が何かを食べて帰るだけでなく、その店、ゾーンに行くためにその施設に行く。そんな楽しみ方をしたくなる存在ではないでしょうか。何かを食べにでかけてそのついでにショッピングをしたり映画を観る。飲食フロアがそれくらいの吸引力を持つようになるといいですね。
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- ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
- ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
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