町内移転して進化めざましい大手門の立ち飲みバー

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ライター弓削聞平

カメラマン弓削聞平

サークルアイキャッチ

大濠公園

酒場 サークル

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町名でいうと大手門ですが、駅でいえば地下鉄大濠公園駅の東側のあたりは、昔ながらの民家やスーパー、肉屋などが残っていながらも、ここ10年くらい実力派の飲食店が次々とオープンし、おいしいもの好きにとっては魅惑的なエリアになってきています。
そんな町に生産者を重視し、食材の力を存分に発揮させるカジュアルなフランス料理店「クロマニヨン」がオープンしたのは2011年。その後、同じ建物の前面にあたる物件が空いたので、そこでパスタ麺、調味料、加工品などオーナー夫妻が信頼できるもの、店で使っているものを販売する「サークル」もオープンしました。
「クロマニヨン」はオープンから数年はアラカルト中心で気軽に立ち寄れる業態でしたが、その後昼も夜もコースの店にしました。しかし、以前のような気軽な部分もなくしたくはなくという想いはあり、いずれ「クロマニヨン」とは違う利用の仕方ができるカジュアルな店もやりたいと思っていたそうです。
そんな折、「クロマニヨン」のワインや食材、そして料理に惚れ込んで通い詰めていたもっちーこと森本祐美さんが、トイレの「スタッフ募集中」の貼り紙をみて「ここで働きたいです」と応募してきたそうです。当時大手企業でOLをしていたこともあり、オーナーシェフの市村大輔さんも一度は止めたそうですが、ひとまずアルバイトとして「クロマニヨン」の仕事を手伝ってもらうことに。そしてやがて彼女は本格的に転職することになったのです。

この出会いにより、市村さんは彼女を中心にした立ち飲みのワインバーを始めることを決めます。
2020年の年末に物販だった「サークル」をワインバー主体にリニューアルし、多くのワインファン、ナチュールファンに支持されるようになりましたが、事情により移転しないといけなくなり、今年の3月26日に無事移転を果たしたのです。
場所は前の店と同じ筋ですが、昭和通りの反対側に100mほど行ったところ。距離でいえばわずかですが、これまで以上に住宅街の色が強く、公園もスーパーも目の前で、精肉店や鮮魚店も並ぶような下町風の立地です。

サークル店内

ぼくもさっそく出かけてみましたが、想像どおり近所の人っぽいお客さんでいっぱいです。「クロマニヨン」は予約してしっかり食事をする店なので、近所の人というよりは福岡中、あるいは県外からのお客さんも多いのですが、「サークル」はすでに町の人たちのいこいの場になっているようです。もちろん町の人といっても、住人ばかりではなく、近くで働いている人もいると思いますが、立ち飲みということ、そして間口が全面ガラス張りということ、しかもこの季節は開け放していて仕切りがない状態ですから、もはや路地の一部のような一体感すら感じます。そもそも「サークル」を作った時点で市村さんには「町にも貢献したい」という想いがあったそうなので、前の場所の時代も含め、どうやら「サークル」はいい成長をしていっているようです。

カウンターは15人くらいが飲めそうな長さで、L字ではなく丸みを帯びたJ字型だし、そこかしこに使われている自然素材のおかげもあり実に温か。そしてなんといってもスタッフたちの笑顔も外から見えますから、店の引力は相当なものです。

この店はワインを中心とした酒場ですが、1杯目はぜひ生ビールを飲んでください(1人2杯まで)。なぜなら、ここには福岡市内にはここだけ、県内で3軒にしかない、スイングカランが設置されているからです。ビール好きの人は広島にある「重富」というビールスタンドのことを聞いたことがあるのではないでしょうか。
市村さんともっちーは、この「重富」が主催する「生ビール大學」で講座を受け、スイングカランを特注で職人さんに作ってもらい、カウンターに設置しているのです。

「重富」のこと、スイングカランによる生ビールのことは以下のサイトを参照してください。
https://discoverjapan-web.com/article/11082
https://www.jbja.jp/archives/25931

もちろんぼくも1杯目は生ビールをいただきました。ちなみにこちらの生ビールはエビスです。
そのビールたるや、泡のきめ細やかさ、クリーミーさはもちろんですが、ガスを適度に飛ばし苦みを抑えることにより、すごくまろやかでスイスイ飲める感じなのです。そしてこのスイングカランのいいところは、注ぐ人の技術、意志により様々なタイプのビールを提供することができるという点です。メニューには「爽快な喉ごし(一度注ぎ)」「クリーミーな泡(二度注ぎ)」「泡だけ!?(ミルコ)」の3種が書かれています。一瞬目を疑い、「泡だけってなんなん」って思いましたが、これ、ビールの本場チェコではよく知られている飲み方だそうで一度試してみる価値はあります。もちろん通常のサーバーで泡だけ注いだものとはまったく違って、きめ細やかで繊細な泡がこれなりの美味しさを堪能できるんです。
なんにしろ、「ビールはちょっと苦手」という人も、ここの生ビールはぜひ一度飲んでみてください。

生ビール
生ビール泡

ワインはヴァンナチュール、つまり自然派のものです。フランスなど海外のものもあれば、日本のものもいろいろと揃っています。店の奥にセラーがあるのですが、1000本以上はあるのでボトルで飲む人は価格帯や好みを伝えていくつか出してもらえばいいし、グラスワインも泡・白・赤合わせて常時5〜7種類くらい準備されているので、こちらも好みを伝えて出してもらうとよいでしょう。概ね店の業態に合った安価でガブガブ飲めるものが多いようです。

サークルメニュー

そして前の場所と大きく変わったのは料理の充実ぶりです。立ち飲みのワインバーですが、市村さんは「やっぱりワインは料理と一緒に楽しんでほしい」という気持ちを強くもっているので、「クロマニヨン」同様、信頼できて、思想を共有できる生産者のものを厳選して、チーズや野菜の軽いアテからオムレツやグラタンなど少ししっかりしたものまで15種類くらいはあります。もちろん酒場という業態に合わせてポーションも小さめだし、フォーク1本で食べられるようなライトなものばかりです。

サークル豆ペースト
サークルオムレツ

ぼくがまずいただいたのは「黒豆のフムス」(600円)。黒豆をペーストにしたものでワインとの相性が抜群です。横には力強い人参や赤タマネギのグリルなども添えられていて、これらにフムスをつけて食べるのもいい感じでした。
そして次は「マッシュルームのオムレツ」(1000円)をいただきました。こちら、卵は「チェルニア」もぞっこんの「ゆむたファーム」のもので、マッシュルームは大牟田産。びっくりしたのはオムレツの中にはソテーしたマッシュルームが、さらに上にはフレッシュなマッシュルームを生でこれでもかというくらいのっけてることです。それに合わせて出していただいた「ドメーヌ・ポンコツ」(山梨)のオレンジワインがめちゃくちゃ合います。

ポンコツワイン

そして最後にはデザートとしておすすめの「プロフィトロール」(600円)をオーダーしました。これはシュー生地の間に、玉名牧場のグラスフェッド牛による牛乳、三瀬の小野寺夫妻による「旅をする木」の平飼いの卵を使ったアイスクリームをはさみ、上から太田哲雄さんが輸入するカカオによるチョコレートをトロ〜とかけるというもの。
なんでしょうか、このハーモニー、そして完成度。卵の味も濃いのですが、そこに軽やかなシュー生地とフルーティな味わいのチョコレートが合わさって……。いや、マジで立ち飲みで出てくるデザートじゃないですよ、これ。

サークルデザート

住宅街にさりげなくある立ち飲みワインバーですが、ビール、ワイン、フードと想像を軽々超えてくるスペック。そして立ち飲みってやっぱりスタッフの人柄が店の空気を左右すると思うのですが、店長のもっちーをはじめ、勉強熱心でフレンドリーなスタッフたちのおかげで楽しくなっちゃって、「じゃ、今度はあれお願い」といつの間にか時間を忘れてしまいます。ただ、ぼくはそれ相応の年齢で(お酒が強くないというのもありますが)立ち飲みに長時間いられる足腰はもっていないので、ほどよくお会計と相成りました。こんな店がある町がうらやましい。いや、ぼくんちの近くもいい店はたくさんありますけどね。まぁ、誰しもないものねだりってことですか。

サークルスタッフ

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店舗名

酒場 サークル

ジャンル

  • ワインダイニング・ワインバー
  • 立ち飲み

住所

福岡市中央区大手門3-2-19

電話番号

092-231-8402

営業時間

15:00〜21:00(フードOS20:00)

定休日

木曜

席数

  • スタンディング15名くらい

個室

なし

メニュー

生ビール750円、グラスワイン650円〜、おまかせ3種盛り600円、マッシュルームのサラダ600円、黒豆のフムス600円、季節のオムレツ1000円、リバーワイルドのジャンボンブラン600円、プロフィトロール600円、放牧チーズいろいろ(吉田牧場と玉名牧場)1000円

  • ※この記事は公開時点の情報ですので、その後変更になっている場合があります。
  • ※「税別」という記載がない限り、文中の価格は税込です。
  • ※掲載している料理は取材時のもので、季節や仕入れにより変更になる場合があります。
  • ※OSはオーダーストップの略です。
  • ※定休日の記載は、年末年始、お盆、祝日、連休などイレギュラーなものについては記載していません。定休日が祝日と重なる場合は変更になる場合があります。
  • ※編集部の都合により撮影時にマスクをはずしていただいたり、アクリル板をはずしていただいて撮影している場合があります。
  • ※掲載しているメニュー内容、営業時間や定休日等はコロナ禍ではない通常営業時のものですので、おでかけの際にはSNSや電話でご確認ください。

記事に関する諸注意

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